全身の川
まるで長い雨の入り口に立つような部屋の扉
傘ひとつ広げても仕方がないから
雲の透き間、淡い光に手を伸した
深呼吸をして浮かんでゆく言の葉より
深くへしずみ、深くへもぐった
葉は真紅に染まり 欠けた形
いずれ解けてゆくだろうか
解けなくてもすり減らし
手放してゆくだけ
浮かべた言の葉より
深くへしずみ、深くへもぐった
ひとりだったはずの
泉の底には欠けた星が
いつも闇の中で光を放つ
握り締めてその光のままに溢れるままに
アブクを吐いてゆく
あの瞳の底には雲の草原があり
シロツメクサの星を結んで遊んだ
背負われて帰る揺れる夕焼け一本道
その左側から全身に流れるせせらぎに
何かが流れて
わたしは深く眠った
あのひとの首筋の匂いは陽に焼けた
落ち葉の薫がした