続々・ナオキは死ぬことにした 〜 オマージュとパクり 〜
「小説を書いて! 書くのよ、北村直樹くん!」
「いきなり何だい!?」
「復讐するのよ! あの俗悪な審査員どもを一人ずつ殺す小説を書いて、それを実際に実行していくの!」
「それじゃ筒井康隆『大いなる助走』のまんまパクりじゃないか!」
「オマージュよ!」
「オマージュとパクりの違いって何なの!?」
「知らないわ! でも世間的にオマージュはよくてパクりはダメだってことにされてるでしょ? あらすじはほぼまんまでも、『オマージュだ』っていえば何とでもなるわ!」
「そんなもんなのか!?」
「そんなものよ! さぁ、北村直樹よ、銃を取れ!」
「僕にはそんな度胸ないし……」
「意気地なし!」
「大体、なんであれ、落選したの? あれだけやったのに……」
「禿田に電話で聞いてみたわ。『君たちは努力が足りなかった』って言われた。『あれ以来、音沙汰なしだったじゃないか』って。他の人たちは何度も挨拶に行って、何度も賄賂を贈ったって言ってたわ」
「……死にたい」
「死ぬ気になればなんでもできる!」
「……ごめん、トーコ」
直樹は泣き出してしまった。
「僕……、ここで静かに暮らしていたい。ここはとても居心地がいいんま」
「そう……」
トーコは失望の背中を彼に向けた。
「それじゃ北村直樹くん、あなたとの婚約を破棄するわ!」