五十三、混血児リーダ、神の動物園
アキさんがリーダの話をはじめた。
リーダはアメリカ人と中国人の混血児の女の子で、両親からそれはよく愛された子どもだった。
中国人の母はリーダのために折り紙を折った。クリスマスの包装紙で虎を作った。
母が息を吹き込むと神がそこに宿った。紙の虎は動き出し、神となり、ガオーと吠えた。虎はリーダのペットとなり、友達となった。
小学生になると、友達から動く犬のヌイグルミを自慢された。同じ動き、同じ声を出すことしかできないそのオモチャを見て、リーダは鼻で笑った。優越感を胸に、母の作ってくれた虎さんを見せつけた。
しかし虎さんは、動かなかった。
それはただの折り紙でしかなかったのだ。
「何よ、コレ」
友達の女の子はお腹を抱えて笑った。
「貧乏くさ! さすがはあんたのママって世界の嫌われ者のチャンコ□ね!」
それをきっかけに、リーダは母を嫌うようになった。
母の教える中国語はけっして受け入れなくなった。母の母国の話も拒絶するようになった。
遂には家を飛び出し、アメリカン・ポルノ女優としてデビューすることになるのだが、年齢を18歳と詐称した14歳だったので逮捕された。
話はそれで終わりだった。
一体アキさんがこの話で何を伝えたかったのかはさっぱりわからない。
酔っ払いのする話にはやはりとりとめがないのだ。