四十五、痛! セクスアリス
中島筋肉男が黒いボクサーパンツを脱ぎ捨てた。
その逞しい全裸姿に、つい洛美原先輩のことを思い出してしまう。
先輩とこういう関係になることを、正直私は夢見たこともないわけではなかった。あの逞しい腕に抱かれ、あの黒光りする胸筋に頬を埋め、人差し指で彼の滴る汗を弄りながら、先輩の名前を呼ぶ夢を、正直に告白すると私は真昼に見たことがある。
私は目を瞑り、今、目の前にいるこの男は洛美原先輩だと思い込もうとした。
しかし、違う──。どうしてもこの男と先輩のイメージが重ならない。
先輩は、こんなに暴力的に私の貞操を奪おうなどとはしない!
ボクサーパンツの中から現れたそれも、あまりにもただグロテスクで、彼の醜い精神をそのまま形取っているかのようにしか見えなかった。
「さぁ、スミス」
筋肉男が、背中から私の両腕をホールドした。
「お楽しみの時間だよ」
「や……、やめてください」
私は泣いて懇願した。
「どうか……お願いです」
ここにただひとつの収穫があるとすれば、女性の気持ちがわかったような気がしたことだ。ここに愛さえあれば、これから始まることは甘美な、夢の中のような出来事だろう。しかし、愛のないこんな行為は、ただの一方的な暴力だ。痛めつけられるだけにとどまらず、心に深い傷をこれから私は負わされるのだ。
嫌なものの尖端が、私のとても弱い部分に突きつけられるのを感じた。
「やめ……!」
「ア、ハーッ!」
恐怖するほどの高笑いとともに、私の精神は抉られ、あまりの痛みに声も止まってしまった。