表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/93

大いなる女装(三)

『珍藝賞』の第一次選考の発表があった。


 結果から言うと、私の名前はどこにもなかった。


 あれほどの自信作であったのに!

 トーコもお墨付きをくれたのに!


「ごめ〜ん……。あたしの添えたメッセージがよくなかったかも」

 トーコがいきなり謝ってきた。

「考えたら一次選考は下読みのひとがやるのよね。……そこであんな写真とメッセージが添えられてたら、それだけで『ふざけるな』って落とされちゃうかも。だって下読みのひとには何のご褒美もないもんね」


 やはり汚い真似などせず、真面目に、ふつうに立ち回ったほうがよかったのか……。


 過去にこの賞からデビューして有名になった『たわや理沙』や『うさぎ凛』も、きっとふつうに応募し、ふつうに選ばれたのだ。後にデビューしてから顔見せしたら美少女であったのだが、そんな武器は使わずに、実力のみで勝負したのだ。


「次はふつうに応募するよ」


 私が言うと、トーコが恐縮したようにこうべを垂れた。そして心配そうに、言う。


「あなたなら実力で受賞できるとわたしは思うわ。……でも、あの作品に全力を出しきってしまったんでしょう? 一年後の次の賞に向かう力は残ってる?」


 正直に言うと自信がなかった。

 受賞していればその勢いに乗って次作を書くことができていたかもしれない。しかし早々に落選してしまったことで、私の気力は萎みきってしまっていた。


 電話が鳴った。


 トーコのスマホだった。表示された番号に心当たりがないのか、トーコは少し首を傾げてから、通話ボタンを押した。


「はい……。えっ? あ、そうです。北村きたむら踊子とうこはわたしです」


 トーコの名字は『雪野』である。『北村踊子』は今回の新人文学賞に応募するために設定した、()()ペンネームであった。


「えっ……? えっ!? ほんとうですか!? はい! はい! ありがとうございます!」


 ペコペコと何度も誰だかわからない相手に頭を下げ、電話を切るなりトーコが言った。


「選考委員の『禿田はげた高丸たかまる先生からの電話だった! 先生のお力で特別に最終選考まで通してくれるって!」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ