大いなる女装(二)
あざとい応募のしかたをするとはいえ、作品の質に妥協はしない。
過去の受賞作を色々と読んだ。もちろん諏訪に本を買ってもらってだ。
若さゆえの万能感かもしれないが、鼻で笑いながら、私は呟いた。
「フッ……。この程度なら、俺にも書ける」
タイトルは『巨根大学の狼』に決めた。
洛美原先輩をモデルにした狼のような青年が、美少女とのブンガク行為に日々励みながら、己のペニスとの対話形式で日常を紡いでいくという物語だ。
洛美原先輩の死を想いながら、逞しかったその肉体を賛美しながら、キャサリンの尻の下に敷かれた感覚を思い出しながら、毎晩家族みんなでトーコを取り囲んでブンガク行為に耽りながら、私は書いた。書き進めた。
「できた! 完成だ!」
ノートパソコンを抱き上げながら、私は歓びの声をあげた。
読者第一号としてトーコが読み終えると、親指を立てて『いいね』をし、私の自信を後押ししてくれる笑顔をくれた。
これは私の真実を描いたものだ。
洛美原先輩への愛を描いたものなのだ。
男作者では気持ち悪く思われそうなほどのものなので、性別を偽るのは正解だったと思えた。
プリンターを持っていなかったので諏訪に買ってもらい、印刷すると綴じ紐でまとめ、大判の封筒に入れて投稿した。一緒にトーコの写真を入れるのも忘れなかった。一番写りの良い、白い雪の妖精みたいに写っている写真を選んだ。
トーコがその横にトーコの字でメッセージを書いてくれた。
『私を選んでくれたらなんでもします』
──と。