表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/93

誰が為に純文学はある(二)

 先輩の彼女でありながら、純文学を読んだこともないという筒竹さんに、私は驚いて問いかけた。


「えっ? だって、純文学は真実を描くのですよ? 嘘と幻想で覆われる世界を爽やかに破壊してくれるものだ! なぜ、あなたは先輩の彼女でありながら、そんな純文学を読まないというのです?」


「言ったじゃない。漫画のほうが面白いからよ」


 その答えを聞くと、私は居ても立ってもいられなくなって、駆け出した。そろそろ先輩が部室で私を待っている頃だった。




「来たか、北村」


 先輩は待っていてくれた。私ごときと純文学談義をすることを楽しみにしてくれているのだ。


 窓から射し込む夕陽を全身に浴びて、今日も洛美原先輩は美しかった。この世の美を一点に集めるように、ボクサーパンツ一丁の格好で、私の前に堂々と立っていた。

 筒竹マネージャーにはこんな美しさは感じない。女性の美しさなど、まやかしだ。それは性的興味が賢者モードに入ってしまえば消え失せる、嘘か幻のようなものだと三島由紀夫著『女神』に書いてあったのを読んだことがある。それが真実なのかどうかは知らないが。


「先輩!」

 私は早速、問うた。

「先輩の彼女の筒竹さんは純文学を読まないと言っていました! 良いのですか? そんな女を彼女にしておいて?」


 先輩は答えた。

「付き合ってない」






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ