表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/93

都々、頭をよくしてあげよう(四)

「ごめんね! 映画の公開時期、もう終わっちゃってた!」


 待ち合わせのシネコンに行くなり、筒竹さんにそう言われた。

 5月で終わっていたらしい。ちなみに今はもう7月だ。


「あたしってバカなの。犬以下なの。ごめんね!」


 そう言ってペコペコ謝る彼女はほんとうにバカで、それゆえにかわいく思えた。


「じゃあ、当初の予定通り、筒竹さんの部屋に行って、一緒に呪術廻戦のコミックを読もう」


 俺が言うと、なぜか慌てたように彼女は笑い、俺に提案してきた。


「どうせここ来たんだから、何か観ていこうよ。ね? 北村くんの観たい映画、何かない?」


 上映中のポスターを右から左に眺めた。

 ひとつのポスターの上で私の目が止まった。



 ── 芸術映画の最高傑作!『フェリーニの8 1/2』、リバイバル上映中! これは動く純文学だ! ──



 これしかないと思った。







 素晴らしい映画だと思った。


 冒頭から人間が高いところから落下するイメージ映像で始まり、ストーリーは何が何だかさっぱりわからないほどに意味深長であった。

 人間がとにかくたくさん出てきて賑やかで、何が起こっているのかさっぱり理解できなかった。なるほどこれが動く純文学というやつか。真実とは意味深長なものなのだ。


 隣を見ると筒竹さんがいびきをかいてスヤスヤと眠っている。


 かわいそうに。やはりバカだから、芸術がわからないのだろう。


 その寝顔は小動物のように、とてもかわいかった。







「ごめんね、途中で寝ちゃったぁ〜!」

 ベロを出して自分の頭をこつんと叩く彼女もかわいかった。

「──で、ラストどうなったの?」


 この時、私は決めた。


 筒竹さんのために何かしてあげたい、と。そして私のできることといえば決まっていた。


 彼女に純文学を教えてあげよう。


 彼女の頭をよくしてあげるんだ。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ