キャサリンの下(二)
「違わないわ。あたしは純文学警察よ。あたしが純文学だと認めないものを純文学と呼ぶのは許さない」
キャサリンは私を尻の下に敷いたまま、洛美原先輩にそう言い渡す。
洛美原先輩は上着を脱ぎ、その黒々と光る肉体美を見せつけながら、純文学警察キャサリンに反抗した。
「純文学というジャンルはそもそもないのだ! 純文学とは常に創るものなのだ! 貴様のように純文学を定義したがる者が、純文学を退屈な、気取っただけのものとしてしまうのだ!」
「『これぞ純文学!』というものは、あるわ!」
「ない! あるとするならばそれは既存の純文学を真似したものでなく、むしろ破壊するような、新しい純文学だけだ!」
「笑わせる! じゃあ、あなたはジャズのライブステージでイングヴェイ・マルムスティーンみたいなギターを弾いて皆から笑われていればいいわ!」
「君は口うるさい気取ったジャズ通とだけ会話をしていればいいさ!」
「何よ! この、イケメンマッチョ!」
「何だと? この、爆弾ボディーのハーフ美女!」
キャサリンが私の上からお尻を離し、立ち上がった。残念な気持ちが一足早い秋風のように、私の心をかすめて通った。
そして二人は罵り合いながら、顔がくっつくぐらいに近づき合うと、そのまま熱烈な口づけを交わしてから、見つめ合った。
「俺と結婚しろ、キャサリン!」
「フフ……。望むところよ」
人生、何が起きるかなんてわからないものだ。
あの、同時に6人と付き合っていた洛美原先輩が、結婚だなんて──