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十二、愛知の子

「あぁ……、覚えているよ」


 そうは言ったものの、ほんとうは心当たりなどなかったので、私はいかにも大衆小説っぽい、気障なことを言った。


「昨日、夢で逢ったよね?」


 すると白い女の子は、うなじから色っぽく湯気を立ち昇らせて、頬だけをうっすらとピンクに染めて、くすっと笑うと、言ったのだった。


「北村直樹くんだよね? 覚えてない? あたし、中学校の時、一緒のクラスだった、雪野ゆきの踊子とうこ


 そう言われたらすぐに思い出した。

 なぜだか気が合って、異性でありながらいつも遊んでいた友達がいた。

 あの頃はメガネっ子で、男みたいで、女の子だとすら思ってなかったのに……気づかないわけだ、こんな綺麗な女性に変身されていたのでは。


「トーコ!? ものすごい奇遇だな! こんな雪国で会うなんて!」


「だよね! あの街から500km以上離れてるってのに──」


「おまえ、確か──愛知に引っ越したんじゃなかった?」


「うん。そこで日本人のアイデンティティも、ほんとうの名前も忘れて、愛知県人として生きてきたの。色々と辛い目に遭ってきたわ」


「山崎豊子の『大地の子』じゃあるまいし!」


「ホホホ! 直樹くん、こんなところで会ったのも何かの縁ね。すっごい偶然!」


 確かにそうだと思った。


 運命のようなものを感じてしまった。それを信じてしまった。


 こういうのは純文学だろうか? それとも大衆小説?


 とりあえず私たちは再会を喜び、私の宿泊している部屋で、一緒に酒を飲むことにしたのだった。




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