表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/93

九、どっぐらまっぐら

 命からがら日本刀の男から逃げ切ると、私は荒い息を整え、呟いた。


「危なかった……。あの男、キチ◯イだ」


 自動的に規制がかかり、伏せ字にされた。


「なぜだ……。なぜ、あの男を的確に表現することばを使ってはいけないんだ? これはあの男のことを的確に表すことばなのに?」


 やはり真実は大事だと思えた。

 嘘と幻想を与えられて社会に飼い慣らされた人々を解放することこそ暇人である自分の使命であると思えた。


 しかしここへ来て、純文学とは何かがさっぱりわからなくなってしまった。

 それはあの男の言うとおり、日本独自のもので、ならば個人よりも『和』を尊重した、優雅で感傷的なものでなければならないのか? 自分が信じてやってきた『真実で大衆の目を開かせるもの』はじつは純文学ではなく、それは西洋哲学の仕事なのか?


 するとヴーん……ヴーん──という何かの音が聞こえてきた。


「狂え」

 誰かの声が聞こえてきた。

「狂気こそが純文学の真骨頂なのだ」

 それは老人の声のようだった。しかし、姿はどこにも見当たらない。


「誰だ!?」


 私の誰何の叫び声はただ竹林に空しく響いた。


 周囲から何かの歌が聞こえてくる。


 ハァ〜……チャカポコと、終わりのないような歌が聞こえてきた。


 長い、長い、歌だった。


 退屈な、退屈な、歌だった。


「やめてくれ!」

 私は思わず気が狂いそうになり、耳を塞いだ。

「なぜだ! なぜ『キ◯ガイ』はだめで、『狂う』はいいんだ!?」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 思わず笑ってしまいました笑。 読み終えたけれど多分私は狂っていない……はず。 あまり中身覚えてないですが……(´・ω・`) とりあえず当時女子中学生だった私が買うにはかなりハードルの高い表紙…
[良い点] ドグラマグラのタイトルを冠した四畳半神話体系的なファウストになって来た。。 混沌こそが純文学?!
[良い点] この章の部分は、夢野久作氏の『ドグラ・マグラ』を、彷彿とさせますが、『ドグラ・マグラ』には、キチガイと言う文字が溢れています。 この『ドグラ・マグラ』が、多分、大正時代に書かれたとすれば、…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ