表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/93

諏訪家のほうへ(三)

 直樹は大学の文芸サークルに入部することにした。

 ここならば志を同じくする純文学の強者がいると思ったのだ。


「いらっしゃーい。入会希望者? ぼくが会長の田良尾たらおです」


 名前がチャラ男に聞こえた。


 早速、ネットに投稿して見向きもされなかった処女作を見せると、田良尾は苦笑いをしながら、言った。


「こんなの全然面白くない。テンプレ展開にもっていかなきゃダメでしょ。読者はみんなそういうお約束の安心感を求めてるんだから。あと、エロを入れなきゃダメ。エロは売れる。売れないものに意味はないからね」


 直樹は口ごたえをした。


「私は真実を書きたいのです! 純文学とは嘘や幻想を破壊し、大衆を馬鹿げたファンタジーの檻より解き放ち、己の頭で物を考えられる『個』とするものであるはずです! ここは純文学を究めるための場所ではないのですか!?」


 田良尾は苦笑いで顔をいっぱいにし、言った。


「へー……、そうなんだ? そういう人なのね。それなら諏訪すわと友達になったらいいよ」


「諏訪?」


「ほら。あそこの席で今、原稿用紙に向かって猫背になってるヤツさ」


 直樹が視線で指されたほうを見ると、そこにはやたらと背の高い、ぼさぼさ髪の、目つきのイッている男が、取り憑かれたように原稿用紙に万年筆をはしらせていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ