表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

影騎士様の失態

「タイミング最悪すぎだ」

 

 思わずそう呟いてしまったのは徹夜で張り込み護衛を初めて一週間以上経過した、いつもと少し違う朝だった。 

 目覚まし時計のセットし忘れで遅刻寸前のティアリス王女はいつもより数本遅い列車に乗った。

 俺自身も休みなしの任務の疲労で少し不注意になっていた。

 父上から最近物騒な集団が暗躍しているから必要以上に警戒を怠らないように言われていた。

 だから、最近ではティアリス王女の住まい近くで野営していた。

 ただ、眠る時も警戒を解くことなく少しでも変化があれば起きれるように対応できるようにする。


 普段ならばこれで問題ないのだが、ここ一週間ほどティアリス王女の寝つきが悪かった。

 そのせいで俺は深い眠りにつくことができずにいた。

 


 一週間くらいなら問題ない。だが、父上の想定以上に任務が長続きしたせいで疲労が蓄積した。


 治癒ポーションで疲労は回復するが精神的な疲労はたまる。

 そのせいでいつもよりも注意が散漫になっていた。

 電車に乗っている間は大丈夫だと思ってしまい、ティアリス王女の動きだけを見ていてその周りに注意を向けていなかった。


 夜の護衛での寝不足、ちょっとした気の緩み、不運な見落とし。

 

 それらが重なり巻き込まれてしまった。


「こいつの命が欲しけりゃ黙ってその手錠をつけやがれ!」


 列車ジャックに巻き込まれてしまった。

 本当にタイミングが不運なこと。

 一本早めの電車に乗っていればこんなことにはならなかった。

 しかも何両もある中のピンポイントでティアリス王女の乗る車両を占領したのだ。

 男たちは一般乗客を装い車両に乗ってきた。

 入った瞬間結界を型の魔道具を起動して、俺とティアリスのいる車両を覆い、外部から誰も入れないようにした。


 パニックになる車両内、列車の外にいる人たちにもすぐに衛兵を通報して事態は大ごとになってしまう。


 黒い覆面で隠した男3人(声が男だった)が乗り込むとすぐに近くに立っていた学園の女子生徒を人質にして、大量の魔封じの手錠を床に投げ捨て、それをつけるように強要してきた。


 油断するとはスティッギー家の者として恥。

 これが家族にバレたら何を言われるやら。

 護衛任務は解任、学園退学することになるだろうな。

 もともと俺が学園に通っていたのは任務の一環だった。

 

 これが最後の仕事になるかもしれない。

 そう思いつつ、状況整理を始める。

 

 犯人は3人、そのうちの一人が人質に取り他二人はあたりの警戒をしている。


 正直すぐに制圧したいが、目立つのは避けたいし、ティアリス王女含め周りの被害を最小限にしたい。

 

 人質にされてる女の子なんて真っ青だ。

 列車は止まっていて、野次馬が集まり始める。

 理想順序は、人質に取られている女の子を救出、制圧しようと決める。

 犯人の男が女の子に向けてる刃物を弾いた後、無力化する。そして、近づいてきた犯人をすぐに仕留める。

 そう方針を決め、行動開始をしたのだが、直後動き始めた人物がいた。


「私はハルバトス王国第一王女ティアリス=ハルバトスです。私が人質になりますのでこの車両にいる人たちを解放してください」


 うぉい何やってんだ王女!

 ティアリス王女は立ち上がり名乗りをあげる。


「ほぉ……俺たちは運がいいなぁ。まさか王女が乗ってるとは……ぐへへ」

「いいなぁ。綺麗すぎんだろ」


 その光景に……男ども3人は下劣な視線を向けた。

 ハルバトス王国の至宝と言われるティアリス王女の人を魅力させる美貌。


 男どもの反応を見る限り、想定していなかったのだろう。

 

 誰かのために自分を犠牲にする。

 

 その勇姿は素晴らしいと思う。

 でも、俺は愚行だといえる。

 


 ティアリス王女はこの後のことを考えているのだろうか?……いや、まずは人質解放を目的にしている。

 その証拠に犯人たちを説得させるため魔封じの手錠をつけている。

 解放から先のことは考えてないな多分。


 魔法がなくなればティアリス王女はただのか弱い女、成人男性に勝るわけがない。

 おそらく俺がいなければこの後王女は男どもにいいようにされて人生が終わる。


 最後になるかもしれないこの任務に俺は最後くらいいいよなと思い、一枚のメモに一言書き、無の弾丸ノースバレットを四発放つ。

 ティアリス王女に犯人たちの視線は向いている。

 一発は人質をとっている男の刃物を弾き、残り三発で男3人の顎に一撃ずつ放ち脳を揺らす。


「な……」

「あ…あれ」

「う」


 何が起こっているか分からない3人は成すすべなく気絶した。  

 無力化できたことを確認すると俺は立ち上がり一枚のメモ帳をくしゃくしゃにしてティアリス王女のつま先に投げる。


『君の行動は自分を顧みない愚かな行為だ。自分を大切にしなさい』

「……え?」


 もう会うことはないだろうと思いながら投げたそのメモを読んでティアリス王女から困惑の声が聞こえた。


 俺の行動は愚行である、なんせ影からの護衛が護衛対象に接触するからだ。

 気づかれる可能性のある行為。


 十年近くの付き合いだし、人となりは知っているつもりだ。


 少しでも幸せを願うならばと行動、最後くらい許してほしい。

 ……さて、父上にはなんと報告するかな。そう思い、事情聴取をされないために、バレないように電車を出ようとする。


 ティアリス王女今後どうなるんだろう。

 そういえば揚げパン買えなかったけど、卒業までに買えるかな?

 

 あー、あと1ヶ月後遠足だったのにな。少し楽しみだっなのになぁ

 

 去り際そんなことを考えてしまった。

 ああ、少し大変な日常だったが、充実していた。

 失って初めて気づく、俺は学園生活を楽しんでいたのだと。

 


 少し後悔しつつ、俺は一歩一歩進む。

 もちろん魔力を纏って気配遮断をしているから気が付かれることはない。


「?!」


 だが、突然だった。

 背後から密度のある魔力の波が発生した。急な事に臨戦態勢をとる。

 すると警戒していたにもかかわらず目にも止まらぬ速さで俺の手首が掴まれた。

 一生の不覚。ここまで来ると俺は無能だな。

 

「やっと捕まえました。私の影騎士様」

「な?!」


 

 手の正体は…点ティアリス王女だった。

 その顔は獲物を逃さんとする狩人の目。

 俺はどうにか逃げようと試みるも掴まれた手首に力が入り、思わず息が詰まる。

 ティアリス王女が何故俺のことを知っているのか。知っているのは国王と王妃、王太子くらい。

 まさか国王が話した……いや、そんなはずはない。

 スティッギー家は国王の奥の手、懐刀だ。子供といえどその存在を軽々しく言うのはおかしい。

 どうにか離脱を。


「逃げようとしたら……この腕……へし折りますよ?」


 なんで普段かわいい声のはずのティアリス王女、今回は冷めたような声であった。

 しかも目がマジだ。笑みすらなく真顔。

 学園最強格の一人、そんな人物に真正面からやり合うことなんて不可能なわけで。


「あ……はい」


 状況をうまく飲み込めずただ呆然とする俺。

 わかることは一生の恥をここ1時間のうちに2回もやるなんて……いや、護衛対象に知られた時点で3つか。

 3つもやらかしてしまった。


 その後事件処理が終わるまで俺のことは終始話さなかった。

 少しでも力を入れたらハイライトが消えた瞳でギロっと睨まれる。

 


 駅近に駐屯している衛兵が来て犯人の3人は捉えられ、車両に乗っていた乗客皆事情聴取が行われて解放された。

 その事情聴取でティアリス王女は自分が対処したと言った。

 周りの意見と一致したことで、ティアリス王女は危険を顧みず人を救った英雄となった。

 後日感謝状が送られるらしい。

 ティアリス王女の行動により俺は事情聴取を受けるだけで終わった。

 

 その後、俺は腕を掴まれたまま駅近のカフェに連行されたのだった。


 

 

最後まで読んでくださりありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ