第94話 暗躍
魔王スマターの居城
スマター城で、魔将軍が全員集められる。
「第三のカブラギが転移された。」
スマター様より、声がかかる。
「スマター様!今回の召喚者は?!第三の聖騎士と言う事ですか?」
魔将軍アスタロット様が問う。
「いや、召喚者はいない。
聖騎士でもない。其奴はアヤカシ化した。オークキングのブブキと名乗っている」
ええ?聖騎士じゃない?
どうやってマーラに召喚されたのか。
一人考え込んでいると、
スマター様は私に命じられた。
「魔将軍パサージュよ。
そなたに討伐を命じる!」
「は!聖騎士をですね。
直ちに準備にかかります!」
ヤレヤレだ。聖騎士討伐の任か、
と出立の準備に取り掛かろうとした時、
魔王は驚くべき事を告げる。
「聖騎士ではない。【オークキング】だ」
魔王スマターは、聖騎士ではなくアヤカシを討てと言われる。
その真意は?
矢張りカブラギに関係するのか?
「アヤカシを、同族を討てというのですか?!」
即座に真意を確認しようとする。
「そうだ。オークキングのブブキを始末せよ。恐らく我の最大の障害となる」
オ、オークキング如きが?
最大の障害?
確かに強いが魔王ならどうという事でも無い。
いや私でも倒せるだろう。
何故スマター様は?
「パサージュ。返事はどうした?
魔王スマター様が命じてるのですのよ」
「ワハハ。まさか自信が無いのか?
では我が代わりに兵を出すか?」
……くっ。
このアンポンタンめが。
「御意」
俺は魔王へ命令を受諾し、魔王城を転移の術で出る。
取り急ぎダークエルフの兵を出して
ブブキ村を強襲する!
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暗闇の中から現れたのは、
巨大なグリフィン!
「ぐおっ!」
倶利伽羅剣を構える俺、
杖を構えて詠唱姿勢を見せるメイ。
召喚術の詠唱姿勢を構えるセシア。
そしてジンタンが剣の鞘に手をかける。
「ハサン様であるか!
我が名はブブキ。オークキングのブブキです。」
よく見ると、グリフィンには人影が見える。
オークキングのブブキと、
二人の人間、そして幽鬼だ。
「あなたに、会ってみたかった。」
ブブキは俺に話しかけてくる。
本当に信用たる人物なのか?
しかし共の兵長とお婆さんは間違いなく人。
人間と共存するアヤカシとは。
それにお婆さんはどう考えても非戦闘員。
敵意は無さそうだ。
俺は仲間に攻撃するなと目配せする。
「ほっ」と一息、皆杖や剣を収める。
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ブブキの話はこうだった。
アヤカシの村=ブブキ村として
治外法権としてサシマ国内外で自治権を認めて欲しい、それを聖騎士ハサン経由で国王に嘆願して欲しいというものだった。
「虫が良すぎないですか?
そんな義理は、流石に我々も無いですよ」
ジンタンは咄嗟に返す。
そうだな。その通り!
いつもながらジンタンには感心する。
「実は夜襲のように、こんな時間に失礼ではあると承知でお願いしている。
それに敵は人間だけでは無いのです。」
ブブキは話を続ける。
どうやら、魔王軍もブブキ村に狙いを定めているらしいと。
斥候のバーチや、バットンが
尽く消されている。
「我が村にも子供達が沢山います。
魔王軍が参戦してくれば、子供達にも犠牲は出るでしょう。
私は民の血を流したくない!」
涙ながらに訴えるブブキ。
あれ?こいつ。日本人だ。
転移者だ。
何故か分かった。
どうして?聖騎士でもない。
召喚者もいない。
「ブブキさ、ところで『ドラゴンクエステトラ』知ってる?ファミコンのゲーム。」
俺はカマをかける。
日本人なら誰もが知ってるロールプレイングゲームの名作。
「ん?ドラゴンクエステトラ?
生憎、存じませぬが」
気のせいなのか?
いや、こいつは何か通じる。
ハデルにも感じた何かが……。
「分かった。ブブキ殿。
力になろう。」
「我々は先に転移の術で戻ります。
皆様はグリフィンで我が村に。
宿も用意致します。
今宵はゆっくり宿でお休み下さい。
温泉もありますよ」
やった〜!!温泉!
案外簡単にハサンとブブキが邂逅しちゃった。
まあいいか。




