第90話 ブブキ
「おい!ブブキ!お前金持って来たんだろうな」
「おい!ブブキ!靴舐めろ」
「おい!ブブキ!パン買ってこい」
ドカッ!
今日も言われのない理不尽な暴力。
死にたい。
辛い。
俺の名は鏑木清方。
あまりに虐められすぎたので、
俺は死のうと思った。
アイツを道連れに。
ある日、ホームセンターで
刺し身包丁を購入した。
アイツらを殺して
俺も死ぬ。
俺は待ち伏せしていた。
刺し身包丁を忍ばせながら、
あいつを刺してやる。
死なばもろとも。
俺は学校の下駄箱に隠れる。
「おい!ブブキ!何だよ呼び出しやがって」
あいつの声だ。
もう少しであいつが来る。
リーダー格のアイツ。
目を閉じると、心臓がバクバクしてる。
俺は引き返せないどこまで来た。
☆★☆★☆★☆★☆★★☆
目を再び開くと、
見も知らない異界。
中世のヨーロッパみたいな雰囲気。
どこだ?
犬のような耳を付けた人間(?)などもいる。
甲冑や、鎧をつけたり……。
剣と魔法の世界だ!
俺は喜んだ!
アイツらがいない世界!
俺は特殊スキルや、チートスキルがあるはず!
異世界でモテまくり、ハーレムを作って英雄になるのだ。
しかし、お金が無い。
恐らく日本円は使えないだろう。
適当に近場の魔物でも倒すか。
俺は街を出た。
街道沿いを歩く。
街道沿いなら強いモンスターは出ないだろう。
ブーン……。
ん?何?!
あっ!
人間と同じ大きさの蚊が
俺を嘴のような鋭い吸血口で
無慈悲に刺した!
グサッ!!!
ま、まさか蚊。
し、しかもデカい……。
血が急激に吸われていく。
チューー・・・・・・!
吸う度に化け物の蚊の目がグリグリ動いていく……。
意識が無くなる。
ああ、俺は死ぬんだ。
クソッタレの世界。
異世界でも、俺はヒーローになれなかっ……
☆★☆★☆★☆★☆★★☆
目を閉じたら、俺は生きていた。
でも、なんか変だ。
肥満で贅肉しか無い弛んだ身体の筈なのに、力が漲る。
青白い肌は黄色っぽい身体。
学生服だったのに、毛皮?
金持ちの女の人が切るような毛皮のコートみたいなのでは無い。
イノシシ?
熊?
何らかの獣の皮を身に纏ってる。
手には棍棒だ。
しかも口に違和感がある。
視界にチラッと白い牙らしい物が見える。
いや、牙だ!
俺の牙だ!
直ぐ様近くの水辺で俺の顔を見ると……。
そこには豚顔のアヤカシ、
キングオークの姿をした姿が、
そこには映っていた。
あァァァァァァ!!
何なんだ!俺の人生は!
何時間泣いたことだろう。
俺は決めた。
キングオークとして生きることに。
生前の俺とは違う、桁違いな力。
俺は手始めに村を襲うことにした。
俺の圧倒的な力で復讐する!
女は犯し、それ以外は子供でも殺す!
俺は知らない村へ着いた。
キングオークの姿を見て、村人は皆逃げる。
「オークだ!」
「逃げろ!」
逃げ惑う人々の中に、
一人佇むババアがいた。
こいつを殺す。
俺の人間性を、良心を殺す!
その婆さんは言った。
「なんて悲しい魂なの」
振り下ろす棍棒を止めた。
この婆さん目が見えないのか。
キングオークと化したブブキ。
どうなるのか?!
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