第87話 夢の激闘
崩壊したアパート。
思い出のアパート。
娘が生まれた時も、誕生日、
運動会、様々なイベントを行ったアパートを破壊してしまった。
夢とは云え……。
おのれ!許さんぞ!
俺の夢に入り込んでいるアヤカシを探す!
そして赦す!
天へ送ってやる!
国道に向かって歩く。
自転車で過ぎ去る見知らぬオバちゃんが、振り返りざまに火炎を吐く。
火炎を避けて、キックで首から吹っ飛ばす!
バシューッッ!
『ワーハッハッ八……』
笑いながらオバちゃんは浄化されていく。
前方から車が過ぎていく。
身構えていると、運転席の窓からマシンガンを放つお爺さん。
空中で反転して、首から倶利伽羅剣で両断する!
ジャキーーン!!
首は路上に落ち、金の粒子となり浄化される。
車は、そのまま走り出し近所の内科兼自宅に突っ込み炎を上げる。
ウー!ウー!ウー!
カーン!カーン!
サイレン音が鳴り、消防車が複数現れる。
消防士は放水銃ではなく、マシンガンとロケット砲で、燃える内科を背景に
ダダダダ!!!!
ドゴーーッ!
ロケット砲とマシンガンを乱射する消防士。
瞬間に印を組んで、軍荼利明王に化身。
高速で動くと倶利伽羅剣で、
次々に胴から消防士を両断する。
ペニョーー!!
断末魔と共に浄化される。
『ええい!面倒だ!出よ!倶利伽羅剣龍王!!』
倶利伽羅剣から倶利伽羅龍王が出て、付近諸共、火炎を吐きながら燃やしていく。
俺の思い出の街は、俺自ら焦土と化してる。
燃えろ。俺の思い出と共に。
子供の行きつけの小児科も、
よく買い物に行くスーパーも、
お世話になってる近所の家々も
全て燃えていく……。
ゴゴゴ……
ゴゴゴ……
火炎が全て忘れさせていく。
さようなら。
『倶利伽羅龍王よ!付近にいる術者を探せ!』
頷くと倶利伽羅龍王は付近にいると思われる術者を探しに行く。
「かかった!」
どこからか声がした。
その刹那、長刀が俺の脇腹に迫る。
あ、あぶ!
一瞬で剣筋を見切り、倶利伽羅剣で剣が来た方向に払い返す!
あ!倶利伽羅竜王が離れた為に、
倶利伽羅剣は三鈷剣に戻っている。
「三鈷剣に戻るのを待っていた。
俺は魔将軍ザン様の配下、モズクだ!
三鈷剣では、俺には勝てまい。
夢の中で死ねば、お前は復活出来ない。
この夢の中に精神が囚われるのだ!」
モズクは嬉々として襲ってくる。
その白い髪が、ニヤついた表情が、
俺の琴線に土足で踏み込んだ事にも、
全てに怒りが燃える。
「赦す!お前を赦す!
俺の怒りをすべて込める!」
ソウルパワーがメラメラと燃える。
「無駄だ!お前の力は夢の世界では封じている……。ん?倶利伽羅剣?どうして?!」
三鈷剣は気付いたら、倶利伽羅剣に戻っている。そう、夢の中でも思えば直ぐに三鈷剣は倶利伽羅剣へ変わる。
倶利伽羅龍王は、三鈷剣に巻き付いており赤色に目を光らせている。
「私の怒りを甘んじて受けよ!モズク!」
怒りにより俺は倶利伽羅剣に同化する。
等身大の倶利伽羅剣へと変わり、
その剣は高速で回転する。
その回転からは稲妻が起こり、
モズクの身体に突き刺す!
ウギャー!!!
稲妻が直撃し、モズクは動けない。
『超高速!倶利伽羅スピンッッッッッ!』
超高速により光り輝く光球と化した倶利伽羅剣は、そのままモズクを突き刺し、貫通する!
ズバッ!!
「ば、バカな!夢の世界では俺は無敵なのに……。グハッ」
モズクは金の粒子となり浄化される。
☆★☆★☆★☆★☆★★☆
「ハサン!起きて!ハサン!」
セシアの声で目覚める。
既に夜は明けていた。
はっ!……。夢。
「セシア。大丈夫だよ。大丈夫……」
夢で会えたよ。子どもたちに。
気付いたら咽び泣いていた。
朝日は痛いくらい眩しかった。
セシアは事情は知らないだろう。
でもそっと俺を抱きしめてくれた。
宿屋に程近い路上で、白い髪の老人が白目を剥いて泡を拭き倒れている。
人知れず起きた激闘は幕を閉じた。
夢の激闘は書いていて面白かったー。
冒頭の現世に立ち返る一幕でした。
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