第78話 女盗賊フィット再び
今日は暑い。
春まだ浅いと言うのに、
「茹だるような暑さ」とは
この事だろう。
セシアなんかお腹が冷えるからと
毛糸のパンツなんか履いてるから、
びっちょびちょなんじゃないかな。
歩くだけで汗が滲み出る。
「ハサン。次の街は治安が悪いので有名なステルトの街よ。スリには気を付けて」
ステルトの街は、センダー国の第三の街。
唯一ステルトの街からサシマ国への
巡航船が出ている。
なんで?
センダー国の首都センダーから出せばいいのに。
どうやら、サシマ国は鎖国をしてるようだ。
そして、ステルトの街は大きなコロッセオがある。
あの映画やゲームに出てくる武闘場である。
コロッセオの熱気は凄い事になっており、特に週末は世界中からコロッセオの試合を見に来る為、治安も悪くなるのだそうだ。
俺の後ろに下げてある巾着袋に手を伸ばす気配を感じる。
「い、痛ぇぇ!」
手を捻り上げると、それは細い女の手。
「離せ!離せよ!おっさん!」
喚く女のスリ。
「あのな。スリは俺が元いた世界では手首から削ぎ切るんだぞ」
と嘘八百言って脅す。
フードがパラリと脱げる、
赤毛の髪がフワリと風に靡く。
「あー!女盗賊フィット!」
ジンタンが声を上げる。
ハハァーン。こいつがね。
「お前か?ジンタンを誑かしたドロボー女狐は?」
俺は倶利伽羅剣を引き抜いて、手首を切る真似をする。
「それより魔獣ヒババンゴをこの場で呼ぶか?!」
魔獣ヒババンゴの悪評は、フィットも周知済み。
涙を流して震えながら命乞いする。
「すいませーん。許してください。
もうしませーん」
セシアはハサンに耳打ちする。
「ちょっと〜!シオリが可哀想でしょ!」
ごめん、ごめん。
「ところで、お前はなんで我々に付き纏うんだ?」
フィットが言うには、盗賊家業より
ジンタンやハサンに付いていけば金目の物に拝めるからだという。
あのなー。
「おい。俺達は遊びじゃないんだぜ」
「そうよ。あなた生半可な気持ちで旅したら死ぬわよ」
「僕もそう思うよ。帰りな」
三者三様フィットに話しかける。
メイはジンタンにラブなので恋敵は増えて欲しくない。
「あなたは認めない!帰って!」
と偉い剣幕である。
オモロー。ジンタンモテるー!
「じゃあ、どうするばパーティ入り認めてくれる?」
フィットは俺に直接聞いてくる。
「認めないって言ってんじゃん!」
メイは鼻息を荒くして抗議する。
こんなメイ見たことないや。
ワハハ(笑)。こりゃあ愉快。
「よし。それなら次のコロッセオの試合出てみろよ。勝てばパーティ入り認めてやるよ」
俺はフィットにコロッセオの試合参加を勧める。
「分かった!勝てば良いんだな!」
とフィット。
「ハサン様〜」
と涙ぐむメイ。
さあ!力を見せてみろフィット。
さあ、コロッセオでの
戦いです。
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