第60話 ゴッドハサン
邪神アドヴァンは元は、この世界の住人であった亜人アドヴァン。
そしてアドヴァンの身体を受肉し転生したのが、阿修羅神であること。
そして阿修羅神の一部が伝わり、
シローヌは聖騎士伝承の力を得たこと。
聖騎士も元は阿修羅神の欠片であるとハデルはサリーから聞く。
首都跡地を覆う暗雲ある瘴気は晴れ渡っていく。
邪神を打ち祓うという事は、即ち俺達聖騎士も、浄化されるという事。
即ちそれは、本当の肉体の死を意味していた。
元来、マーラの世界は魂の世界。
魂は不滅。次のステージに昇華するという意味を持つ。
当然、人間界の日本に残した家族とは、もう会えない事を意味していた。
なんじゃ!そりゃ!
いきなり召喚されて、ハデルです。
魔王を倒せ、邪神を倒せ、
最終的には元の世界に帰れると思いきや、
邪神の欠片として浄化されろ?
ふざけるな!
ハデルは怒りに震える。
召喚士のメリーも、あたふたするだけで何も出来ない。
剣士サマンサ=サマンサ王女は内心気付いていたようだった。
サリーからの言葉を頷いていた。
恐らく、母である王女から既にそれとなく聞いていたのだろう。
「兎に角、ハサンに合流しましょう」
と声をかけてくるメリー。
「お前が召喚したんだろうが!」
怒りに声まで震える。
しまった。そこまで追い込まなくても。
あちゃー、言い過ぎたな。
でも、感情が抑えきれない。
そんなバカな話あるか?
俺の人生を滅茶苦茶にしやがって。
なんでハサンは平気なんだ?
そうだ。ハサンにも家族がいたはず。
やっぱりアイツに会おう。
「ごめん。メリー」
ハデルは、言い過ぎたねとメリーに謝る。
「私こそ、ハデルの気持ちを考えずにごめんなさい」
メリーは泣きじゃくる。
やば。泣かしちゃった。
ちょっと落ち着くのを待とう。
メリーが落ち着いたので
ハサンの気を察知し、転移の魔法でハサンの所へ辿り着く。
「話があるんだ、ハサン。」
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お、ハデルだ。
どうやら、有益な情報が聞けたようだな。
「ハサン、実はな里で情報を集めたんだが……」
俺達はハデルからエレンの里で娘サリーからの話を聞き入る。
そして、あのシローヌこそ
俺達聖騎士と召喚士を呼び寄せた
邪神阿修羅の一部と聞く。
そしてシローヌから呼ばれた
俺達聖騎士も、邪神阿修羅の一部なんだと。
ハデルは詰め寄る。
「納得出来るか!
俺は家族に会いたい。
お前はどうなんだ!ハサン!」
俺は静かに諭すように皆に伝える。
「これは決まっていたこと。
そして俺は聖騎士として使命を全うすると決めた以上、人間界の事には未練は無い。それよりも、この螺旋を断ち切れるなら、
それも俺の役目だと思う。」
聖騎士が同じ時代に二人召喚されたケースは無い。
もしかしたら、今マーラの世界での大きな節目を俺達は担ってるんじゃないのか?
そう、俺は皆へと意見を伝える。
「何故お前は割り切れるんだ!
そんなシナリオ俺は認めない!」
ハデルは怒りに我を忘れて、駆け出していく。
メリーや、サマンサ、シマジもハデルを追っていく。
「すいません」
メリーは俺達にお辞儀し、ハデルの元へ走っていった。
そうだよな。あれが正に普通の感覚。
我ながら達観してるよなと思う。
ハデルこそ主人公の感覚で、俺の立ち回りは老師とか仙人とか、神様みたいな役割の考えだよね、ふと思う。
でも、これもまたハデルにも俺にも気づきや成長の機会なんだと思う。
あいつの成り行きを見守ろう。
さて、どうするか?
「魔王に会いましょう」
今まで黙っていたセシアが話す。
魔王は既に邪神の尖兵に過ぎず、
今更会ってもしょうがなくね?
しかもどこにいんの?
色々思うところもあったけど、
先ずはセシアの意見を聞いてみた。
「何故魔王スマターに会う必要がある?」
セシアは召喚の術を教えてくれたのが初代ハサンの妻スロリアからの伝承で、
セシアの一族に受け継がれたのだと言う。
魔王スマター=聖騎士マサフミは命を3つに分けた。
その内の一つが三鈷剣=倶利伽羅剣であり、後の2つはカブラギに分けられた。
だから、聖騎士として召喚される人間の姓が「カブラギ」なんだと。
だから、元の命に還る為にスマターに会う必要があるのだと。
そして魔獣ヒババンゴの元聖騎士シオリ含む全ての聖騎士が合体すれば、
邪神阿修羅=アドヴァンに勝つことができるのだとセシアは話す。
「その最後の合体魔法が『ゴッドハサン』。ゴッドハサンを唱えれば全ての聖騎士は一つになる」
それは、俺が俺で無くなる。
全てに還る技か。
事態は風雲急を告げるのであった。
次回へ続く
ついにゴッドハサンの真実が。
全ての円環の理を、螺旋を断ち切る
究極奥義がゴッドハサンです。
どう展開するかな。




