第56話 神剣!倶利伽羅剣
ま、まさか!
ハサンは焦る。
三鈷剣が折られた。
代々歴代ハサンが紡いできた幾多のアヤカシを浄化してきた稀代の神剣三鈷剣が折られた。
それだけ魔将軍ダロムの剣圧が強いということか。
魔将ダロムのダークネスファイブの強さなのか。
いや、俺はまだ負けてない。
力が欲しい。
俺の力はまだまだこんなんじゃない。
やれる!
俺はやれる!
無限の力を宿れ!
俺は不動明王!
俺は宇宙!
俺は全てだ!
不動明王=ハサンの胸から夥しい光が迸る(ほとばし)!
ユラユラと立ち込めるソウルパワーは全身を覆い、やがて折れた三鈷剣も光に包まれていく。
ダロムも慌てる。
何事かと剣を構えて微動だにしない。
す、すごい。身体から湧き上がる凄い力を感じる。
それでいて、なんて清々しいのか。
満たされる。そうか。
俺は赦す!そしてお前も天に送る!
確信。悟りとも言うのか、
ハサンの決意に呼応したかのように三鈷剣は、見る見る形を変えていく。
倶利伽羅竜王が青白い炎を纏いながら剣に姿を変える。
『我は倶利伽羅剣。
今こそ我を携え邪を祓え。
全て赦せよ。お前に敵は無い。
よって無敵なのだ。』
倶利伽羅剣を手にして万倍のパワーを得る。
否、元来ハサンが持っていた力を思い出しただけ。
元々無限の力を内在してるのを思い出した。
「勝負はこれからだ!魔将軍ダロム!」
ハサンは倶利伽羅剣を片手上段で構える。
『目を閉じよハサン。邪念を捨てよ。
目を閉じれば真我に繋がる』
目を閉じるハサン。
見える。目を閉じていてもダロムを感じる。
いや、ダロムだけではない。
皆を感じる。
そうか。皆、私だったのだ!
額の神眼が開く。
『不動明王!天魔降伏ゥゥゥゥゥゥ!!!!!』
ハサンは巨大な光の龍へと姿を変えて、その光は高速よりも速く、一筋の大きな橙色の炎を帯びて一直線に魔将軍ダロムに突っ込んでいく。
「バカな!弾き返してくれるわ!
がっ?!な、何!」
ダロムは剣を構えるが、全く身体が動かない。
チリーン。極楽浄土の鐘のような音。
ダロムをハサンの天魔降伏が貫く。
光は、ダロムを背後にハサンへと姿を変えていく。
見た目は何も傷ついていないダロム。
しかし、ダロムの身体は少しずつ天に浄化されて粒子となり消えつつある。
「み、見事。ハサンよ。
我が主の魂を救え。魔王スマターは元はせ、聖騎士。お前と同じ異世界……人。
あ、あぁ。私も帰れる……。ありがとう。」
ダロムは消えていった。
魔将軍の一強を浄化した。
そして魔王スマターは元は聖騎士という衝撃の事実を知ったハサン。
主を失い、パティーンとジンタンも攻撃の手を緩める。
「ま、まさかダロム様が敗れるとは。
聖騎士共!覚えていろ!
この借りは必ず、このパティーンが晴らす!」
パティーンは影のように姿を消す。
新たな力を得たハサン。
先ずはスマターに会うこと。
そして邪神を倒すこと。
改めて思い返すハサン達であった。
次回へ続く
ついに出ました。倶利伽羅剣!
いやー。熱を帯びましたね。
一人で。




