44話 束の間の休息を
封印の洞窟とは暗示なだけであった。
暗示の力が、ここまでリアリティを
持って作用するのが魂の世界。
まんまと、魔将軍アスタロットの
策略に踊らされていた。
ハデルはサマンサに問う。
何故、古代語の封印呪文が使えたのか?
古代語の封印呪文とは、
聖騎士ハデルが邪神アドヴァンの欠片である
大魔司教ガリウスとの一戦で使った
対邪神用の魔法である。
まさか?!
ハデルは思った。
蹂躙され壊滅したトッポイ国の
首都エギョマの王女が行方不明だと聞いていた。
もしや?!と思った。
サマンサは、答える。
『私はトッポイ国の王女ミーシャです。
我が国は、邪神へ唯一対抗出来る
封印呪文を継承する一族です。
よって魔王軍に、攻め込まれたのです。』
ミーシャ王女は腹心ドーマと共に落ち延び、やがてドーマが亡くなった後に剣士サマンサとして生きてきたのだった。
「何はともあれ皆無事で良かった。」
ハサンは労いの言葉をかける。
心底今回の戦いは、ギリギリの勝負だった。
そうだ!シローヌは?!
あの言葉が無ければ我々は全滅していた!
シローヌを、探す。
しかし、シローヌは影も形も見えなくなっていた。
いつか、しっかりお礼を言おう。
そして魔王を邪神を倒すのだと
心に誓うハサン。
ハナカサ村に辿り着き、
久方振りの温泉に浸かり、
そして夜は泥のように眠る
ハサンたちであった。
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「疲れは直ぐに取れない。
だから、しばらく10日程休養日にしようと思う。各人先ずは体を休ませ、
しっかり休息するように」
ハサンは朝食を食べ終わると、
皆に伝える。
ハサンとハデル一行は、別ルートで
シッポリ国の首都シケコムへ、向かう方針でいたが、休養が必要と言う点が一致した。
その間に、ハデルとハサンは召喚前の日本のことや、同じカブラギ姓であると言う事実に大変驚いた。
メリーは、呪文や薬草の採取と研究に、
ジンタンは瞑想と剣技の鍛錬に、
シマジも自らの拳の修行に、
セシアはハサンとこれからの事について
各人のハナカサ村での過ごし方が始まる。
ハナカサ村は、聖騎士が二人宿泊している希有な村だと近隣の噂になった。
数百年続く聖騎士対魔王の戦い、
本当に終止符が打てるのか?
新しい時代が来るのではないのか?!
とマーラの人々の期待も弾む。
かつて聖騎士は魔王を倒した者もいた。
ところが、魔王スマターは数年後には復活するのである。
聖騎士以外にも討伐隊が組まれたが、
生きて帰ってくる者は当然いなかった。
人の力では、超えられぬ人知の力を超えた魔王軍は圧倒的な力で討伐隊を、時には歴代の聖騎士を、退けたのである。
しかし、魔王スマターはどこにいるのか?
ヒントすら掴めていない状態。
ハサンは悩む。
本当に一体どこに奴はいるのか?
そして、邪神の存在。
邪神の欠片=邪神の分霊はマーラの世界に、溶け込んで入る。
魔王を倒すとの、邪神を倒すのを並行して行わなければならない。
骨が折れる作業である。
「ハデル。お前は何か掴んでるか?
邪神や魔王の居場所は。」
ハサンはハデルに問う。
ハデルは言う。
「旧トッポイ国の首都エギョマの跡地に、何か手がかりがあると思う」
確かに。王都の城跡には何か文献などが残っているかもしれない。
先ずは予定通りではあるが、
エギョマ跡地に向かう。
そして、邪神や魔王を倒すヒントを得るのだ。
行先は決まった。
先ずはゆっくりと温泉に浸かって
色んなこと忘れようっと!
束の間の休息を楽しむ
ハサン達であった。




