第2話 英雄ハサン
私が幼い頃に見たテレビアニメ、
ヴァン・ダインの世界では、
権力闘争があって、主人公は召喚されたにも関わらず、結局敵側に寝返ったようなストーリーだった筈。
今回の召喚はどういう事なんだ?
目的はなんだ?
どうして私なんだ?
私はセシアに聞いてみる事にした。
セシア神よ。なんで私が召喚されたんですかい?
いささか変なテンションで私はセシアに問う。
鼻が長いハナナガ族のセシア神曰く
「ここは人の世と、あの世の狭間の世界。
重なり合う世界であるが、決して触れ合えぬ心の世界とも呼べる。」
つまり、どうやら本当に私は一度死んだらしい。
だから元の世界には帰れない。
元来、人の魂は天へ帰るのだが、その途中でセシアが私の魂をこの『マーラ』に召喚したのだという。
スピリチュアルの世界では、人の世界は3次元と呼んで、霊界の世界を4次元と呼び、神の世界を5次元なんて呼んでいるのを聞いたことがある。
物理学者などに言わせると全く根拠も論拠も無いらしいんだけど、私は理解できた。
このマーラという世界は心の世界なのだと。
その心の住人であるセシアが私を召喚したのは、
「話し相手」が欲しかったからだとのこと。
身勝手!なんて身勝手!
私は小学校の時に流行った『コックリさん』を思いだした。
あれは低級霊を呼び出す雑な降霊術にあたるらしいんだけど、当時休み時間の合間に私の友人がおかしくなり、担任からコックリさん停止命令が出たのだ。
あれは狐やら狸やら、コックリさん側の立場を思えば、なんて人間は身勝手なんだと思うよなーなんて考えるのと同時に現世に残してきた子供達の事を考えると、
涙が出てくるのだった。
そうか、あの子らにもう会えないんだね。
セシア神の家族は敢えて村外れに住んでおり、炭を作って村の人々に売って暮らすというのを生業にしていた。
ところが、父神であるセシアのお父さんがついにマーラでの人生を終え5次元の世界に召されたので、
寂しくてセシアは私を召喚したのだと。
普通であれば怒ったり、嘆いたりするのかもしれないが、私は全肯定の極意があったので、この状況をすんなり受け入れたのだった。
三次元=人のステージはここで終わり、新たなステージに旅立つのだと。
セシアはマーラの人々の説明をした。
まず、この土地はオーサキ村ということ。
そして、ここいら一帯はミャーギ地方と呼ぶらしい。
一面の草原と、田畑が広がる本当に空気の美味しい田舎である。
人々は全て神様であること。
そして聖戦士である私も神様なのだと。
そうか。私は神様になったのか。
うん?死ぬと、仏様になると我々日本人は考えるのだけれども、そういう理由かな?
確かに日本では死んで神様になる英傑がまあまあいるよね。
徳川家康や、菅原道真、吉田松陰などがそうだ。
ところがセシアはこう述べた。
「元々人間も神様なんですよ」と。
なるほどね。でも神であるのに、何故人はいがみ合うのかなー、分かり合えないよねーなどと考えるのと同時に
私は疑問に思った。
聖戦士という事はウォーリアーであり、つまり敵がいるということ。
話し相手で召喚したのならば、戦士でなくてもよい。
どうしてなのか?
セシアは私にまだ何か隠している。
率直にセシアに聞く。
この時にはセシアの呪術は効力を失い、私は自由に動けるようになっていた。
「実は聖戦士様にお願いがあるのです。私と共に旅に出て欲しいのです。このマーラの世界に『アヤカシ』が蔓延っています。そのアヤカシの王であるスマターを倒して欲しいのです。」
スマター?アヤカシ?
急に中2病設定が入った。
それに、普通はもっと若い人を召喚すれば良いんじゃない?なんでオジサンの私を?
セシアはこう言う。
「マーラの世界は心の世界。人の世界の鏑木凝流はもういません。あなたはハサンです。英雄ハサンとしてスマターを倒すのです」
嫌だよ!なんで。
と思ったけど、ちょっと面白い展開だなと。
私はハサン!英雄ハサン神だ!
今ここに英雄ハサン神が誕生した。
アニメ化されて
スロット台が出来たら勝ちだな。
【登場人物】
■鏑木 凝流=ハサン
主人公
■セシア
ハナナガ族の娘
【世界】
■マーラ
四次元の世界
■ミャーギ地方
長閑な田舎
■オーサキ村
ミャーギ地方の村