第21話 ウェーダーとの再会
マヨールの街の領主である
ウェーダーは、カンデンブルグ8世の弟、
公爵の身分である。
元来、長男であるウェーダーが
世継ぎとされたのだが、
ウェーダーは側室の子であったのである。
先代カンデンブルグ7世と正妻の間には長らく子が生まれなかった。
ところが、高名な賢者と言われる者が王室に招かれた後に、正妻は懐妊したのである。
よって正室から産まれたカンデンブルグ8世こと、ラーロンが王位を継いだのである。
ウェーダーが7歳の頃である。
ウェーダーは純粋に弟が出来て嬉しかった。
一緒に遊んだり出来ると思っていた。
しかし、正当な世継ぎが出来た途端、段々とではあるが、周囲の大人達の反応が変わってきたのである。
ウェーダーや側室ミランに当初はご機嫌伺いするような態度を取っていた家臣や従者が、ラーロンや正室へと変わっていったのである。
そして国を上げて関心は弟のラーロンへと目が行く。
昨日まで、あんなにチヤホヤしていたのに、父上の愛も私だけだったのに。
事もあろうに、カンデンブルグ7世も、ウェーダーに対して
「そなたは兄であろう。
兄らしく振る舞いなさい」
「兄ならば、弟を支えなさい」
などと一転して厳しい口調に変わっていったのである。
「弟の癖に」
「俺が世継ぎだったのに」
歳を重ねても、この鬱屈した思いは消えない。
ウェーダーは、マヨールの街の領主となったが不服だった。
そんな矢先、ウェーダーの領地であるオーサキ村には聖騎士を召喚できるハナナガ族の娘がいると聞いたのである。
村長を介し、セシアへ聖騎士召喚を命じたのはウェーダーであった。
ウェーダーは、聖騎士を陣営につけて謀反を起こすつもりだった。
ところが、聖騎士誕生の報を聞いて間もなく、マヨールの街にたどり着く矢先に、
敵方の大幹部魔将軍ザンが単騎でハサンと勝負し片付けてしまった。
聖騎士弱すぎる。
いや、敵方の大幹部が単騎で普通くるか?
あー、私は運が悪い。
こうなったら、もう一度聖騎士召喚するしかないな。
よし、召喚士セシアを呼びつけよう。
なーんて思っていたら、
『鴨が葱を背負って来る』とはこのこと、
向こうから、わざわざ訪ねてきてくれたのだった。
しめしめ、これは『棚ぼたからぼた餅だ』
※異世界には四字熟語の同義語があるが
翻訳してます。
ウェーダーはセシアと対峙する。
ウェーダーは、応接間の奥にある
隠し部屋に通す。
本棚が魔法により空間ができた。
そこは、内密な話をする際に通す
『秘密の間』である。
「ウェーダー殿。三鈷剣の場所は分かるまいか?」
セシアは経緯をふっ飛ばして要件だけ尋ねる。
ウェーダーは唐突に何?
って顔をしてセシアに問う。
「三鈷剣とは?まず、あらましを教えなさい」
セシアは経緯を説明する。
ハサンの霊体は三鈷剣に『祝詞』を捧げれば、復活を成すと。
「あいわかった。それならば、
三鈷剣の気を辿ってみよう」
ウェーダーは過去に祈祷師アミダの元で修業したことがあった。
一時は祈祷師として生を全うしようと考えたが、国王である弟からの依頼で、
マヨールの街とミャーギ地方の領主となったのである。
ウェーダーは念じると、
三鈷剣に残るハサンの気を探った。
『どうやら、大きなサルが見える。
アヤカシ魔獣ヒババンゴの洞窟に、
霊剣:三鈷剣は置かれている!』
セシアは、たじろぐのであった。
魔獣ヒババンゴ。
村の娘を攫う凶悪な大猿だ。
アタイ一人で倒せるのか?
いや、無理だ。
捕まったら何をされるか分からない。
下手したら貞操の危機でもある。
「ウェーダー殿。ありがとうございます。後はこちらで対応します」
謝辞を述べ館を後にするセシア。
弱ったな。どうしよー。
マヨールの街を彷徨いていた時、
ギルドが目に入った。
そうだ冒険者を募ろう。