第18話 ハサンを復活させよ
ハサンの亡骸は、オーサキ村の
共同墓地に丁重に葬られた。
聖騎士ハサンの訃報は全国へと伝わる。
『え?聖騎士死んだの?』
『まじで?何もしてないよね』
『アヤカシどうするんだよ』
当然、その民の声は領主ウェーダーと、
王都センダー国王カンデンブルグ8世にも届いた。
「聖騎士は秘密に気付かずに死んだのだな」
カンデンブルグ8世は宰相マーデリンに
顔を背けながら呟くように話す。
「気づいていないでしょう。
三鈷剣は墓地に埋められています」
マーデリンは王に諭すように囁く。
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三鈷剣。祓いと邪を斬る
愛の剣。
その剣は、首の無いハサンと共に埋められている。
すると、三鈷剣から不思議な挙動が起き始めた。
土中に埋もれている三鈷剣が緑白色に光り始める。
この奇跡には、誰も気づく者はいなかった。
そう、誰も……。
セシアはあの日から気を病んでしまい、
立ち上がれなかった。
まさか世界を救う聖騎士が死んでしまうとは。
そして魔王スマターの従者である
三騎将の一人、魔将軍ザンの強さに打ち震えていた。
「アタイは、何もできない。
またドジをふんじまっただわさ」
涙が止まらない。
もう少し、何ができたかもしれない。
しかし、立ち尽くすことしか出来なかった。
それほど魔将軍ザンの力は凄まじいモノだったのだ。
強烈な心的外傷を
セシアに与えた魔将軍ザン。
当分起き上がる事も出来ないくらいに衰弱したセシア。
やがて、うつらうつらと眠気が襲った。
どれくらい眠ってたんでしょうかね?
なんかね、声が聞こえてくるんですよ。
やだなー、怖いな、怖いなー
なんて思ってたら
「セシア、私だよ。ハサンだよ。」
夢の中で現れたハサン。
うわーー!化けてでた!
このハサンは、
この世の者では無かったんだー
と祈りながら成仏してください。
お願い致しますと祈るセシア。
「違うんだ。セシア。私は2度死んだんだけど、
マーラは魂の世界。
つまり、 死なないんだよ。」
ハサンは夢の中で話す。
「どういうこと?あなた死んだでしょ。
アタイみたもの。バーンってなったもの!」
返すセシア。
「もっと言えばマーラの世界の人は
皆死んで魂だけの存在なんだよ。
だから、アヤカシに殺されたと言うセシアのお母さんを始めとした、数多の人々はアヤカシとして生まれ変わるんだ。」
そして、ハサンはこう述べた。
『聖騎士とは呪い。成仏して、次の5次元へは行けない。マーラの螺旋と呪いを本当に打ち滅ぼさなければ。
セシア!三鈷剣を抜いてくれ。
そして唱えるのだ。
『トホカミエミタメ』を。』
トホカミエミタメ?
奇跡を起こす必殺の呪文らしい。
霊体のハサンは、
トホカミエミタメを……と言葉を遺し
姿を消した。
ハサンを復活させなければ。
セシアは三鈷剣と遺骸を掘り起こすことにした。
【登場人物】
《聖騎士》
■鏑木 凝流=ハサン
主人公
■セシア
ハナナガ族の娘
■冠城 武徳=ハデル
第二の聖騎士
■メリー
首長族の娘
《センダー国》
■カンデンブルグ8世
王都センダーの王様。
■マーデリン
センダー国宰相
■シローネ
王様の影
《カントン国》
シンセイ地方
カセイ地方
からなる国
■シンセイ地方
カントン国の一地方
《魔王軍》
■スマター
魔物であるアヤカシの王。
■魔将軍ザン
強者
【世界】
■マーラ
四次元の世界
■ミャーギ地方
長閑な田舎
■オーサキ村
ミャーギ地方の村
《アヤカシ》
魔物
■ベロンヌ
スライムのようなアヤカシ
■バットン
コウモリのようなアヤカシ
■ドテチン
イノシシのようなアヤカシ
仲間になる。
《ミャーギ地方》
■マヨールの街
ミャーギ地方の街
■ウェーダー
ミャーギ地方領主