第11話 領主ウェーダーとアホ毛のアソ子
清々しい朝が来た。
熱は下がっていた。
セシアの献身的な介護が効いたのだ。
意識の薄れゆく中で、必死に看病してくれていたのに気付いていた。
これは正に、『アホ毛のアソ子』
と言うアニメ化もされたカナダの小説を思い出した。
親友の妹が熱を出したが、両親が留守。
アソは孤児院や、伯母さんの家で小さい子どもたちの面倒を見てきた経験があるので、11歳にして見事に親友の妹を看護してみせた。
結果、親友のお母さんバーリー婦人から絶大な信頼を寄せることができたのだ。
セシアに感謝した。
すると何故か大幅に経験値が上がった。
聖騎士は、ゲームのようにステータスが自身で見れるようになっているからだ。
なんと、今ので対毒性が上がり、
毒消しの魔法=キュアを覚えた。
そして何とレベルが5に上がったのだ。
ステータス上昇。
こりゃあいいや!
そんな事より、先が思いやられる。
オーサキ村から未だ出てないのだ。
むしろ、出てなくて助かった。
これを街と村の中間だったら死んでいた。
そして何より所持金が今回の氷袋の件で
一文無しになってしまった。
弱いアヤカシを倒して集めた魔石も村医者に全て払ってしまった。
しょうが無いから、村にもう少しいて近くのダンジョンでレベル上げとお金を貯めよう。
そんで、薬草とかポーションとか回復薬を持っていこう。
ゆく先々でこんなにピンチになってたら、魔王スマターまで、どんだけ遠いのだろう。
回復役のパーティいないか?
村にはギルドは無いらしい。
まあ、いいか。
気楽に行こう。
気長に行こう。
そんな二人の様子を見つめる影。
そう王直近の隠密=シローヌがあった。
シローヌは聖騎士恐るるに足らずと
又「キーーーン」と砂埃を巻き上げ、
城へと走っていった。
所変わり、ミャーギ地方の領主
ウェーダーは、オーサキ村長と密談をしていた。
「首尾は上々か?」と、ウェーダー。
「は、仰せのままに
聖騎士を召喚させました。」
と村長。
「噂によると、聖騎士の条件に合わず、聖騎士の能力が今ひとつ発揮できてないと聞くぞ」
ウェーダーは聖騎士召喚条件三要素の一つ、
『自己破産してること』から凝流が外れていた件を持ち出し、村長を詰める。
「は! しかし召喚はされていますが故に我々の手駒として働いてくれると存じます」
村長は冷や汗をかきながら答える。
「それならば良いがな。マヨールに着いたら顔を出すように伝えよ」
ウェーダーは村長の顔を見ずに、キビツを返して馬車へと乗り込んでいった。
一方王都センダーでは、
影よりカンデンブルグ王へ、
「領主ウェーダー謀反の疑いあり」
の情報が伝えられた。
「ウェーダーを見張るのだ。
聖騎士召喚は奴が扇動しているに違いあるまい。
怪しい行動が見られたなら直ぐに報告せよ」
御意と影は消える。
領主、王、聖騎士それぞれの思惑とは別に
共通に夜は更けていった。
ついに物語は全容を見せ始めるか?