第10話 火星人
当時の我々世代は、土曜日は半ドンで
必ず午前中は授業だった。
時折、父親が、車でラー祖と呼ばれる
ラーメン店に連れて行ってくれるのが楽しみだった。
当時父親の自衛官時代の勤務先の関係で、
私達は八戸に住んでいた。
八戸にあるラー祖は滅茶苦茶旨くて、
まだ小6だったのに調子が良いと
ネギラーメン大を頼んでいた。
勿論ニンニクは山盛り。
「臭い、臭い、いやだ」
とニンニクを嫌う母の言葉を無視して、
アホみたいにニンニクを入れて、
鼻息を荒くしてラーメンをすすっていた。
一番下の弟が食べれないと言う。
兄ちゃんに任せろ!
食いかけで伸び切ったラーメンを、
これまた目の色を変えてススっていた。
今から35年前の話だ。
バットンの毒をくらったからだろう。
よく昔の夢を見る。
意識をところどころ無くして、また夢を見る。
セシアは焦っていた。
セシアの母親も例外なく巫女であった。
巫女の仕事はシャーマンであり、
祈祷だけでなく、ヒーリングや祓い、
毒消しなども行っていた。
しかし、セシアの母親はある日、
セシアと薬草を取りに山へ行った最中に
アヤカシに襲われ命を落とした。
小さいセシアに伝受したのは、
召喚魔法と、金縛りの魔法のみだった。
セシアの父親は代々、
炭焼きを生業にしてきたので魔法の知識は皆無。
人目を避けて村外れの、山の中腹にある
炭焼き小屋で父親と炭焼きをして暮らしていた。
ところが、アヤカシの動きが活性化した背景に
魔王スマターの復活の影ありと見た村長が、
セシアに聖騎士の召喚を内密に依頼したと言うのが
今回の、そもそもの経緯であった。
元来、魔王もアヤカシも、
この魂の世界マーラの住人ではない。
目的も不明、ただ人(神)を襲うだけの生物。
誕生して数百年経過するが、
どうして生まれてくるのかも定かではない魔性。
聖騎士ハサンは苦しんでる。
聖騎士って対毒性ないの?
聖騎士なんだから魔法とか無いの?
お互いがお互いを非難していた。
ハサンの熱は下がらない。
村医者はこう言った。
「このまま、熱が下がらずハサン様の自然治癒による解毒作用が間に合わなければ命を落とすでしょう」
村医者は【氷袋】をセシアに渡してこう言った。
「陰嚢を冷やしなさい。
陰囊を冷やせば熱は下がる。
この役目は純血の乙女の仕事だ」と。
要はキンタマーニを冷やせと言うこと。
薄れゆく、意識の中で確かに人間時代、
インフルエンザにかかった時に、
キンタマーニを冷やしまくり解熱した覚えがある……。
私は、セシアの「えーー!!」って
声を聞きながら又意識を失った。
うら若き乙女に皮被りのタマキン見られるのかと。
火星人なんだ。私。
火星人なんかで悩むなよ。
【登場人物】
■鏑木 凝流=ハサン
主人公
■セシア
ハナナガ族の娘
■カンデンブルグ8世
王様。
■シローネ
王様の影
■スマター
魔物であるアヤカシの王。
【世界】
■マーラ
四次元の世界
■ミャーギ地方
長閑な田舎
■オーサキ村
ミャーギ地方の村
■アヤカシ
魔物のこと。
■ベロンヌ
スライムのようなアヤカシ
■バットン
コウモリのようなアヤカシ
■ドテチン
イノシシのようなアヤカシ
■マヨールの街
ミャーギ地方の街