呪いのおふだで復讐を ~お前らが悪い、後悔してももう遅い~
使う機会など決してないだろうと思っていた、占い師のばあちゃんが遺していった五枚のおふだ。
「これは、あたしの力を注ぎ込んだ恐ろしい呪いのおふだだからね。どうしても許せない人間ができたときだけ、これを使って復讐するんだよ」
ばあちゃんはそう言っていた。
俺の人生でそんな恐ろしいもの、使うことないと思っていた。
そんなに人を憎むことなんて。
だからそのときは、そんなの要らないよ、なんて答えたんだった。
ごめん、ばあちゃん。
やっぱ要るわ。
俺、どうしても許せないやつらができたわ。
押し入れの奥から引っ張り出した、簡素な和紙の箱に入れられた五枚のおふだ。
シンプルなそのデザインが、かえってばあちゃんの込めた呪いの凄まじさを物語っていた。
おどろおどろしい模様も装飾も無い。そんなものに頼る必要はないからだ。
これは、本物だから。
使えば否応なくその力を信じざるを得ないから。
会社で、俺の功績を横取りし、あまつさえ卑劣なパワハラや嫌がらせを繰り返して俺を退社に追い込んだくそども四人。
このおふだでお前らに復讐してやるからな。
今から首洗って待っとけよ。
最初の一人は、同期のMだ。
俺は最初のおふだにあいつの名前を書いて、火を点けた。
じゅっという音とともに、おふだはたちまち燃え尽きた。
そして呪いは力を現した。
その日からMは、コードレスイヤホンの使い始めに必ずボリュームが最大になっているという呪いに苦しめられることになった。
次はT主任だ。
俺は二枚目のおふだに名前を書いて火を点けた。
おふだは燃え尽き、呪いの効果が顕現した。
その日からT主任は、6Pチーズを食べるとき角に必ず少しだけ銀紙が残ってしまい、それを噛んでしまうという呪いに苦しめられることになった。
まだまだ生ぬるい。次はS係長だ。
俺は三枚目のおふだに名前を書いて火を点けた。
おふだは瞬時に黒い燃えかすとなり、呪いは発現した。
その日からS係長は、小説家になろうに新作を投稿した時に必ずジャンルがエッセイにされてしまうという呪いに苦しめられることになった。ざまあみろ。
最後はK課長だ。
こいつは本当に許せない、諸悪の根源のような男だ。
俺は残った二枚のおふだ、コンビニの列に並ぶと自分の前の客が必ず公共料金を払い始める呪いと、スーパーのセルフレジを使うと必ず前の客のレシートが残っている呪い、どちらを使うかまだ迷っている。