誘拐①
数日後、ニュースでとあるギルドがダンジョン報告義務違反と鉱石を違法に取引していた事が判明して、関係各所捜査のメスが入ったと伝えられた。
関係各社には日本大手の企業も含まれ大打撃を受けて株価は大暴落、会社代表から古参役員も犯罪に手を染めていた事が判明。
企業は倒産する一歩手前で、世界大手の伝風寺財閥が買収に乗り出して、企業は名前を変えるが倒産は免れる事になる。
「詳しくは説明できないが、ニュース通りだよ」
今回の件を山田から聞いた優。
「日野さんの後輩の東さんは?」
「彼は地元に戻ったよ。友人の少ない東京よりも、友人が多い地元が良いと思ったようだ」
日野に説得されて地元に戻った東に、地元で皆で遊ぶ約束をして日野は東を地元へ帰した。
「藤田さんは?」
「藤田源太患者は麻薬の後遺症が抜け切れてないが、順調に回復しているよ。藤田心太探索者は弟を助けて貰った恩を感じて管理省の探索者に就いた。今後は兄弟で管理省務めとなるよ」
藤田源太をアンチマジック能力で救ったという事で、藤田心太に「弟を助けてくれて感謝する」と礼を言われた優と日野。
優は感謝を素直に受け取ったが、日野は「おっさんの感謝なんて気持ちワリィ」と照れ隠しのように悪態を述べた。
今までの人生で一番濃厚なゴールデンウィークを過ごした優は、探索者高等学校に通う日々、いつもの日常を過ごす。
特殊探索科の皆で学校に登校し、探索者の為の授業を受け、特殊探索科専用の施設で体を鍛える。
日野ひまわりと新家リナは課外授業という名目でダンジョンの調査を行い、山田市太郎と入道護道はダンジョン管理省での用事と医療が忙しく、夕食を食べてから管理省に戻るような生活をしていた。
「体を壊すよ、山田君」
「大丈夫。まだ若いから少しくらいの無茶は平気だよ。それに鍛えているから大丈夫」
心配した優に山田は答え、皆からは「高校生ワーカーホリック」と呼ばれた。
そんな会話から一週間後。
優は帰宅中に日野ひまわりの妹である日野エマと会った。
エマは日常品の買い物から帰宅中で、優はエマの荷物を代わりに持って二人で帰宅する。
「ありがとうございます、優さん」
「このくらい良いよ。エマちゃんにはいつもご飯をご馳走になっているし」
「優さんは優しいですね。お兄ちゃんとは大違いですよ! 買い物に一緒に行ってくれないし! 時間にルーズだし! 荷物が多いと文句ばかり言って!」
両手ではなく両腕に多くの荷物の持っている優。日野が妹と一緒に買い物に行きたがらない理由が少し理解できた。エマは一度に多くの物を買うタイプだと。
荷物の重さに少し休憩をしたいと思っていた優と、少しだけ荷物も持って身軽なエマの近くに高級車が止まる。
「優さん、エマさん、ごきげんよう。お二人でお買い物ですか?」
山田市太郎の婚約者の綾乃が車の窓から顔を出した。
「綾乃さん! お久しぶりです!」
「ごきげんよう、エマさん」
学校帰りの様で制服姿の綾乃は車から出て優達に挨拶する。
去年から綾乃は市太郎に会いに特殊探索科の寮に来て皆で夕食を共にしたおり、最初の自己紹介で市太郎の婚約者と発言を聞いて寮生全員が驚愕した。その後も寮に来ては女性陣と雑談をして仲良くなっている。
「今日は家庭科の授業でチーズケーキを作ったので、皆さんにお持ちしました」
「ありがとうございます! 綾乃さん! 綾乃さんの手作りケーキ大好き!」
「一緒に行きましょう、エマさん、優さん」
そして運転手と少し会話すると、綾乃が乗っていた高級車は移動した。
チーズケーキの入った箱を持って綾乃は優達と一緒に会話しながら寮まで歩くようだ。
エマは綾乃の隣で会話しながら帰る事が出来て御機嫌だ。優しく可憐でお嬢様の綾乃をエマは好意的だ。
優は二人の後ろで会話を聞きながら「荷物が多いから車に乗せてほしかった」と心の中で思った。
そんな穏やかな帰り道で大型ワゴン車が優達の近くで止まる。何事かを思った優。
車のドアが開くと大人達が出て来て、まず優にスタンガンを当てて体を動けないようにした。
優が持っていた大量の荷物が道路に落ちる。エマが叫ぼうとしたが口を塞がれた。そしてエマの首筋に刃物を当てられた。
「静かにしろ! こいつがどうなっても知らんぞ!」
重い荷物を持って何も対応できずにいた優と、エマが人質に取っている人間を睨みつける綾乃。
優と綾乃は他の男達によって腕をロープで縛られて、口を塞がれた。
白昼堂々、優達は誘拐され、人質になったエマがいるので何も出来ずに大人達に従った。
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