魔力という個性
約一時間で治療を終えた優達。
「今回は短かったな」
「仮眠前に治療をしていたからね。それに三人だと早く終わって私はだいぶ楽が出来たよ」
背伸びして肩を回す日野、初めての治療で手を見ている優に入道が、
「日野君、優君、手伝ってくれてありがとう。今日は早めに帰宅できそうだよ」
この数日、病院に泊っている入道は愛妻である「真子の夕食を食べる事が出来る」と呟いた。
そして福田はパソコンを見ながら、
「まだ長期的な治療が必要だな。重症ではなくなったが、治療には少し時間がかかる様だ」
「薬を使いたいのだが、政府が認可を下ろさないからな」
「仕方があるまい。魔力を消す薬なんて治療薬ではなく毒に等しいからな。毒を持って毒を制すると言うが、そんな薬を政府が簡単に認可を下ろす訳ないだろう」
「特殊医療法に薬の使用が認可されたら、私も楽が出来るのに……」
入道の愚痴を聞いた優は「どうして認可が下りないのか?」と聞く。
「……実を言うと、アンチマジック能力に否定的な人達が居るのだよ」
「魔力至上主義の様な者達だな。魔力が無い人間を下に見ている連中だよ」
入道の説明に福田が補足する。魔力至上主義者がアンチマジック能力者である僕達を否定している事を初めて知った優。
「探索者の中にも魔力至上主義は多く『アンチマジック能力者など探索者ではない』と言ってダンジョン探索に反対する者も居たらしいな。しかしダンジョン管理省が押し通して特殊探索課を設立したときも衝突があったらしい」
福田の説明で特殊探索者が、如何に立場が悪かったかを理解した優と日野。
「今は大丈夫ですよ。国も管理省も探索者も特殊探索者の素晴らしさを知っていますから」入道が説明をする前に、診察室のドアが開く。そして入って来たのは山田市太郎だった。
管理省に戻って、優達が入道の治療を手伝っていた事をしり、ねぎらおうと思っていたが、難しい会話中だった。それでもすんなり会話に加わる山田市太郎。
市太郎が戻って来て、優は「おかえり」と言うと「ただいま」と返した。そしてまた難しい会話に戻る。
「探索者高等学校でも水面下では魔力至上主義者とやり合っていると噂で聞いているよ、山田君」
「去年までの事ですね。我が校の教師は魔力至上主義者ではありません。差別的な考えをもつ教師は全員転勤しました。ですからこれ以上生徒が魔力至上主義になる事は無いでしょう」
山田の説明を聞いていた入道は知っていた様で頷き、日野は「確かに馬鹿な教師が転勤していたな。って山田が仕組んだのか!」と驚いている。
「私に言わせれば馬鹿共が金持ちや貧乏人を差別するように、魔力というモノを差別する馬鹿共が増えただけだ。だからこれ以上馬鹿共が増えない様にしてくれ」
福田は魔力至上主義者を差別と言い捨てて、差別者を増やさない様に頼み、患者の容体を診始めた。
「……どうして魔力で差別されないといけないのでしょうか? どうして魔力量が多いのがそんなに偉いのでしょうか? それなら魔力が低いと言われた人達は差別されているのですか?」
悲しい気持ちになりながら優は大人の入道や福田に聞いた。
市太郎は優に優しく説明する。
「優君。ダンジョンが発生したときは、魔力を持った人達が差別されていた。魔力という意味不明なモノを持っているから持っていない者達から差別され続けた」
市太郎の説明を聞く優。日野も市太郎の説明を真面目に聞いていた。
「今では魔力至上主義を拡大させない様に各国が動いている。しかし長年のわだかまり等があって解決には時間がかかるようだ」
問題に時間がかかる事で暗くなるが、山田は次の説明を明るく言った。
「しかし私は解決できると思っている。魔力が多い少ないなんて、身長や体重と同じ個性だ。個性で差別するのは馬鹿げていると思わないか?」
「……そうだね、山田君。その通りだね」
「魔力なんて一昔前は無かったモノだ。今は魔力ゼロという個性を持った人間が五人いる。将来は魔力ゼロの人間が凄いと言われる可能性もあるだろう。魔力何てその程度の事だよ」
「……魔力で差別が無くなると良いね。その為にも僕も頑張らないと!」
「魔力量ゼロのアンチマジック能力者は世界にも居る。彼等が差別されない様にアンチマジック能力の世界に知らしめて、その人達の為にも私達が頑張らないといけない。優君、手伝ってくれるかい?」
「もちろん手伝うよ! 山田君!」
差別を無くす為に山田を手伝うと言った優。それを見学している大人達。
入道は「アンチマジック能力者の数が増えれば楽になる。私の休みが増えて欲しい」と愚痴る。
福田は「青春しているね。しかし山田君が青春とは、……似合わない気がする」と呟く。
日野は「……二人とも見つめ合ってホモか?」と山田と優の仲の良さに少し引いた。
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