特殊医療②
診察室で優は入道から治療法の説明を受けていた。
「我々、アンチマジック能力者にしか出来ない事、それは対象の魔力を消し去る事だ」
入道は優に診察室にあるホワイトボートに書きながら説明をしている。
「魔力から発生する毒や麻痺、他にも魔石や呪いといった魔力によって作り出された人間に有害な魔力。今回の場合は魔力によって作り出された鉱石の毒を消し去る」
診察室で患者である藤田源太の体を指さしながら説明する入道。
欠伸をしながら聞いている日野。
メモ帳に重要な説明をメモしている優。
「良いから早く治療を始めてくれ。私も暇じゃないんだよ。授業なら後日、診察室以外の場所でしてくれ」
藤田源太の主治医の福田女医はノートパソコンを確認しながら苛立ちながら講義を止める。
「もう少し待ってくれ、福田君。臨床授業の機会は滅多に無いのだから」
患者の許可なく臨床授業をする入道。
「優君は基礎訓練中だから習っていないが、今から教えるのは特殊探索科専用の訓練で学ぶ技術だ」
特殊探索科専用の訓練と聞いて、緊張し唾を飲み込む優は入道の言葉を待った。
「アンチマジック能力者は魔力を遮るオーラの様なモノが体を包み込んでいる。そのオーラを利用して害ある魔力を消滅させる。この場合の害ある魔力は鉱石の毒の事だ」
「なるほど……」
「アンチマジック能力者が接触する事で魔力は消え去る。先日の探索でゴーストが君に触れたら消え去っただろう。ゴースト系のモンスターは魔力で形成されているからだ」
数日前の探索で他の探索者から盾のようにされた事を思い出しながら頷く優。
「今回は魔力で作られた鉱石の毒を消し去る。そして治療法はこうやって触る」
「ハァ!?」
入道は両手で患者の首筋を絞める。患者が苦しくないように手加減しているが、傍から見ると絞殺しているように見える。
「日野君は左手首を握ってくれ。優君は日野君の様に患者の右腕を」
「へーい」
日野は患者の左手首を両手で握り締めた。優も日野の真似をして患者の右手首を両手で握り締める。
「優君、手加減だ。強く握りしめたら血の循環が悪くなる。もう少し手加減をして」
入道の言葉通り握り締める力を弱くする優は「これが治療ですか?」と入道と日野に聞いた。
「我々アンチマジック能力者が接触する事で魔石の毒を消し去っている。そして血液にも毒が含まれているので、血液の循環を利用して血脈に流れる毒を消し去っているのだ」
手首を握っているだけの優は『これが本当に治療なのか?』と不思議がる。
「接触によって毒の元になっている魔力を消し去る。これも立派な治療だよ」
入道は手加減しながら真剣に首を絞めて説明し、日野は、
「結構面倒なんだよな。握っているだけとはいえ両手が使えないから何も出来ないし……。入道先生、テレビでも観ていいか?」
「……治療中だから、日野君も真剣に」
「でも結構暇なんですよ、この作業。両手も使えないし」
「作業ではない。治療だ」
入道と日野のやり取りを聞きながら、患者担当の福田の方を見た。
福田はパソコンを見ながら言った。
「入道先生、魔力濃度が下がっている。……血に含まれている毒は消し去る事が出来るが、体内にはまだ毒が含まれている様だ」
「血液中の毒素が消し去った事で、体内中の毒素も近い内に抜けるだろう。後は中毒の治療が必要だが福田君に任せるよ」
優は入道と福田の会話を聞いて本当に治療中だと思った。しかし同時に『触っているだけで治療ってどこの民間治療法』と思った。
更に入道は説明を続ける。
「魔力を消し去る治療で一番気をつけておく事は、患者の魔力を全部消し去る事だ。人間やモンスターは魔力が無くなると気を失い、最悪の場合は死ぬ」
「そ、そうなんですか!?」
「だから治療には患者の魔力を確認しないといけない。今回は福田君が患者の魔力量を確認しているから大丈夫だ」
魔力が無くなると最悪死亡と聞いた優に、入道は安全を考慮して治療に当たるように説明した。
入道の説明を聞いていた優はふとした疑問を入道に聞く。
「あ、あの、さっき言っていたリナさんは医療系が苦手って……」
「彼女は手加減が苦手ではない、嫌いなんだ。彼女にセクハラした患者に首を絞めて気絶させた事があって」
入道の説明は事実なのだろうか? 日野は思い出し「あの時は笑えたな」と笑っている。
「病院で絞殺事件が発生するところだった。さすがに私も肝を冷やしたよ」
入道と日野の言葉が真実なのか分からないが、優はどう返事すれば良いのか分からずにいた。
誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。




