日野ひまわりの過去①
日野と優は福田女医から説教を受け疲れ切っていた。
「藤田が狙われているのなら、側に居た二人も狙われる可能性がある。安全が確立するまで管理省で待機するように。山田と海渡にも連絡しておくから」
福田医師はそう言って藤田と一緒に部屋を出た。
残された二人は少しの間、呆然として日野が「行くぞ」と言って部屋を出ようとする。
「何処に行くんですか?」
「特殊探索班の部屋だ。そこへ行くぞ」
優は日野に説明を求める。特殊探索班とはダンジョン管理省で山田市太郎の仕事部屋と呼ばれ、学校の特殊探索科の日野達も利用する事が出来る場所だと説明を受けた。
「市太郎君の仕事部屋って……」
「管理省におけるオレ達の部屋だな。班長が山田でオレ達は班員だ。探索用の装備品も有るし、新家が持ち込んだお菓子や飲み物もある。仮眠用のベッドもあるしな」
「ダンジョン管理省に僕達が利用できる部屋があるなんて……」
「特殊探索科は一般的なダンジョンではなく特殊なダンジョンを探索するだろう。その為に管理省の担当者や探索者と会議するときに使用しているし、書類もその部屋で作成しているな」
「……僕達、特殊探索科って異常ではないですか?」
「異常だな。日本に五人しかいない特殊な異才の持ち主。そのリーダー格は異才を通り越している。山田はハッキリ言って異常という言葉も生ぬるい」
山田の異常性を伝える日野だが、
「だが、山田は恩人だ。オレやエマを助けてくれたしな……」
そう言って頭を掻き、照れた表情を優に見せない様に歩くスピードを速めた。
話辛い事だと思い優は黙り込んで、日野の後を追った。
「ここがダンジョン管理省ダンジョン探索課特殊探索班の仕事部屋だ」
ドアに『特殊探索班』と書かれている部屋に日野と優は入る。テレビドラマで視たような事務所の様に机が並んでいて、壁際に本棚がある。初めての事務所に優は興味を持った。
「あっちのドアは仮眠室でそっちのドアは装備品がある。見学は自由だが触るなよ。それからお前の机はそこだ」
日野は優の机を指差し、自分の机に座る。
「僕の机も有るんですか」
「当たり前だろう。お前も特殊探索班の一員だからな」
優は自分の机に座ってみる。新品のパソコン、筆記用具等が揃っていて学校の机よりも充実していた。
その後、優は事務所内の見学をする。本棚には『日本におけるダンジョンの種類』という本が目に付いたので読もうと思ったが、日野から触れる事を厳禁されていたので表紙を見るだけに留まる。
静かな部屋で優の足音が聞こえるだけだった。日野は机に座っているだけで喋らない。優は段々と沈黙が気まずくなり日野に話しかけた。
「あ、あの、市太郎君が恩人って……」
少しパニック状態だった優は質問した後に、不味い質問をしたと焦る。日野が喋りたくないと思った質問を聞いてしまい謝ろうとするが、
「ああ、オレ達は両親が死んで、親戚の家で生活していた所を救ってくれただけだ」
優は日野の両親が亡くなっている事を知って謝罪する。
「別に良いさ、結構昔の事だからな。親戚の家に住んだが、オレ達は虐待されていてな。歯向かったらエマに暴力が振るわれるから何も出来なかった」
日野が中学校の時に交通事故で両親が亡くなり、親戚をたらい回しにされ虐待を受けていた。日野が親戚に歯向かったら、歯向かった分以上に妹のエミが暴力を受けて傷ついた。
日野兄妹が虐待を受けていたと発覚して、最後は母親の祖父母、日野兄妹の曽祖父母の家に行く事になり、その家では優しくされ暴力を振るわれなく安心出来た。妹のエマも曽祖父母を慕ったが、日野は今までの暴力やたらい回しにされて心が擦れていたが感謝は忘れなかった。
中学校を卒業し、底辺の高校に入学してバイトしながら生活費を稼ぐ。そして曽祖父母に生活費を渡し安心して暮らせる家を守る為にバイトをした。
高校一年の終わりに友人が集団リンチされた事を知り日野は復讐を決意。集団リンチした犯人の一人から締め上げて主犯を知り、相手のバイクを許可なく借りて主犯を見つけて殴り倒した。
しかし友人が集団リンチに遭い、反撃をしなかった理由は主犯が街の資産家だった。日野はそれを知らずに主犯を締め上げた結果、主犯の父親が出てきて暴力事件により学校退学、保護者である曾祖父母達に莫大な慰謝料を請求された。
権力による暴力を受けて日野は曽祖父母に土下座して謝る。
学校退学はどうでも良いが、慰謝料は家と土地を売っても足りなかった。
妹のエマは泣いて兄を責める、日野は何も出来ずに謝るだけだったが、曾祖父母は「友人の為だろう」と言って許してくれた。
自分のせいで皆に迷惑をかけた事で主犯とその父親に、慰謝料の軽減と支払期間の延長を頼み土下座する。どれだけ馬鹿にされようとも耐えようと思った。しかし慰謝料の軽減等の条件が酷かった。
「お前達兄妹がオレの奴隷になるなら考えなくもない」
自分だけなら奴隷になっても良かったが、妹まで奴隷にされる事は許容できない。その言葉にキレしまった。
日野は主犯とその父親の周りに居るボディーガードに地面に叩きつけられた。家族を馬鹿にされ見下され、友人をリンチした理由もその彼女を奪う為に半殺しにした事を、馬鹿するように話した。
「底辺に生まれた無能無才な自分を恨め!」
唾を吐かれた。何も出来ない自分が悔しかった。そのときに来客者が、
「彼は無能無才ではない。異才だ」
山田市太郎を先頭に複数の人達が日野を庇った。
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