ダンジョン管理省
ダンジョン管理省に着いた一行。綾乃は市太郎に「今日はありがとうございました」と言って車に乗って別れる。
前もって市太郎は車内で電話をして担当者と話していたので、市太郎と優と日野、気絶している男性を運んでいる日野の後輩である東純一の五人はダンジョン管理省に入る。
ゴールデンウイーク中だが担当者が居るとの事で、市太郎達はホールに行くと男性と女性が待っていた。
「山田君。よく来た」
「海渡さん。急にすいません。皆、紹介する。ダンジョン管理省、ダンジョン調査課の海渡さんだ」
「海渡だ。主に国内ダンジョンの危険物調査を行っている。あとは特殊ダンジョン関係で山田君に調査を手伝ってもらっている」
男性の海渡が優と日野に握手をした。
「この男性が患者ね……。急ぎ調べるわ!」
女性が気絶している男性をストレッチャーに乗せる様に指示する。日野達は男性を乗せると自己紹介せずに移動した。
「彼女は福田医師。ダンジョン管理省所属の医学者だ。男性の事は彼女に任せよう」
市太郎が自己紹介を済ませた後、市太郎は鉱石を海渡に見せる。
「……確かにコレは追っている鉱石だ。山田君、良く見つけたな」
「偶然です。それから襲われていた東君です。詳しい調査をお願いします。あと、尾行されている可能性があるので、その対処もお願いします」
「ちょっと待て! 山田! 勝手に決めるな! 事情聴取はオレも参加する。話を聞く権利があるはずだろう! それに鉱石や麻薬の説明もまだだろう!」
日野が市太郎に怒鳴りながら説明を求めた。
「……分かった。では説明しよう。海渡さん、会議室を借りて良いですか?」
「オレも参加しよう。事情聴取なら坊主達の話をオレが聞けば良いからな」
海渡が案内した会議室のテーブルに座り、市太郎がホワイトボードの前に立ち説明をする。
「今から十数年前。魔力量増加ポーションが他国で開発された事は知っているだろう」
「知らん」
「……日野君、座学時間を増やそうか。魔力量増加ポーションとは文字通り、魔力量を増やすポーションだ。魔力量は十五歳まで成長すると言われている。それ以上の年齢からは魔力量は増えないとされている。それは知っているだろう」
魔力量は十五歳まで成長するので、各国が魔力量を調べるのは十五歳とされている事を小学校で習った事を優は思い出した。
「しかし、その魔力量増加ポーションは副作用があったのだ。依存性が高く麻薬の様なポーションで魔力量の増加も少しだけだ。各国は欠陥品として規制して、鉱石が取れるダンジョンを封印して消滅させた」
ダンジョンを形成するコアがあり、そのコアを破壊するとダンジョンは消滅する。
初めて聞く知識に優は真剣に説明を聞いた。日野は「ふーん」程度で出されたお茶を飲む。
「その後、副作用の無い一時的に魔力量が少しだけ増加するポーションが開発されたが、今回の件には関係ない。大事なのはこの鉱石は世界で禁止されているモノで、それを原料にした麻薬には欠陥ポーションが作り出せるという事だよ」
「市太郎君。じゃあ、鉱石が密輸されたという事なの?」
「いや、同じ鉱石が取れるダンジョンが日本に出現したのだ。管理省も把握していない、違法ダンジョンだろう」
違法ダンジョン。新しくダンジョンが発見されたら、ダンジョン管理省に報告する義務があるが、報告をしないでダンジョン内の鉱石等を密売して儲ける業者がいる。その業者は裏社会の者達で犯罪を起こした探索者、他に魔力が少ないが腕に覚えのある一般人も多数いるらしい。
そのような者達が集まって、新しく出来たダンジョンを管理省に報告しないで探索する。
「ダンジョン関係の税金は高いからな。隠したくなる理由は分かる。しかしその税金は正しく使用されているが、儲かる為に脱税しているのが現状だな」
海渡の言葉を日野は「馬鹿馬鹿しいな」と言い捨て、優は税金関係の話が分からないので、聞き流す程度たった。
「ダンジョン内の鉱物等を密輸する。今回の鉱石が麻薬に使われている代物だから、探索者と裏社会の人間が絡んでいる様だな。海渡さん、警察にも連絡した方が良いのだろうか?」
「……上司に報告してから警察と協力する事になるだろうな。探索者が絡んでいる可能性もあるから、管理省の探索者監視課と協力してもらわないといけないな」
探索者監視課とは罪を犯した探索者達を監視、裏社会にいる探索者を取り締まる課で探索者でも強者揃いの集まりである。
「とりあえずだ、東君。どういう経緯で襲われたのか、君の事を詳しく教えてくれ」
海渡の質問に答える日野の後輩である東。二人の会話に誰も口を挟まずに見守った。
東はバイトが続かずに金に困っていた所に、一人の男が話しかけてきて「良いバイトある」と言って紹介された事。
探索者ギルド『蛇使いの笛』の荷物運びの仕事だった事。
ギルド蛇使いの笛から預かった荷物をギルドメンバーに届けるだけの簡単な仕事で、東は配達を何回か繰り返して、東は中身を気になり聞いてみる。
「そしたら『ダンジョンで取れた鉄鉱石だよ。これを鉄に変えて売る』と言われてそれを信じていたんだけど、日野先輩に『騙されている!』って言われて……」
「当たり前だろう。そんな怪しい荷物運び。普通ならおかしいと思わないのか?」
日野が呆れる様に言った。市太郎も海渡も同感して頷いている。
「そして今日の配達分を渡し終わり帰ろうとしたら日野先輩と会って、さっきの人が「荷物寄越せ!」って言いながら襲い掛かって来て」
「オレが探していた東を見つけて事情を聞いていたら、さっきの男に襲われそうだったから救ったんだよ。そしたら山田達が来たんだ。オレは全く悪くないだろう」
東の説明が終わり、日野の追加で説明する。
「東君は襲った男性に心当たりは?」
「ありません。初めて会いました」
海渡は東に質問をした。「荷物はだれから受け取っていた?」「ギルドメンバーの担当者からです」「荷物の中身は知っていた?」「知りませんでした」「荷物の大きさは?」「ニ十センチ四方くらいの箱です」「仕事を頼んだ者の名前は?」「ギルド蛇使いの笛、内田さんという男性で、営業担当だと言っていました」「ギルドで荷物を受け取ったのか?」「公園とかで荷物を受け取って、受取人には待ち合わせの場所で渡した」等いろいろと質問しては答える。最後は、
「しかしギルド蛇使いの笛か……」
東との質問後に海渡が考える様に黙る。優はどうしたのか聞こうとする前に、市太郎が言った。
「ギルド蛇使いの笛。裏社会と繋がりがある少し厄介なギルドだ。ダンジョン管理省の探索者監視課も監視を付けていたはず」
探索者監視課とは探索者の犯罪抑制の為に作られた課で、探索者が犯罪行為を行った場合には捕縛又は逮捕可能な部署である。
そして市太郎の説明を聞いて、日野が頭を掻きながら言った。
「なんだ? 厄介なギルドって?」
「魔力至上主義のギルドだ。さすがにこれは日野君も知っているだろう」
魔力至上主義。これは優も知っている。というか知らない人間の方が少ないだろう。魔力を持っている人間が偉いという事だ。
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