伝風寺綾乃②
伝風寺家の家族会議から数日後。
山田家に客人が訪れる。伝風寺綾乃だった。
「初めまして、市太郎様の婚約者の伝風寺綾乃と申します」
綾乃は母親祖父母姉から婚約者の許可を貰った。残りは父親と兄の二人。父親ももうすく許可を出しそうだった。
息子の婚約を知らない市太郎の両親は。
「す、すまないが、市太郎は外出中で……」
「存じています、あ、これお土産です」
「あ、ありがとう」
市太郎の不在を機に外堀を埋める綾乃。そして市太郎が帰宅するときには、綾乃は市太郎の両親を説得し終わっていた。
「……市太郎。婚約おめでとう」
「可愛い婚約者ね。将来楽しみだわ!」
純粋に喜ぶ母と疲れ切った父。そしてやり遂げた感を出す綾乃。
「伝風寺財閥が市太郎様を後押しします。ダンジョン管理省・特殊探索者・特殊医療でも、全て任せてください! 妻として夫の力になりますから!」
「……まだ婚約段階だと思うが」
「言葉の綾です」
市太郎の婚約否定状況を『言葉の綾』と言って婚約者と押し切る綾乃。
……このまま進むと婚約者同士になるだろう。
山田市太郎は綾乃に会ってから、悩み続けている事があった。今日も自室で一人悩んでいた。
伝風寺綾乃がタイムリープ前に結婚した女性に瓜二つで名前も同名だった。
山田市太郎と結婚した山田綾乃。旧姓、上田綾乃。市太郎と結婚したときの年齢は十六歳。
出会いは現道優と輝美が亡くなった年に彼女と出会った。
上田綾乃は十三歳のときに、親に捨てられて性別と年齢を偽証して探索者の荷物持ちとなって路上生活をしていた。
一年後、綾乃は悪質な探索者に性別がバレて、襲われそうになるが市太郎が綾乃を救った。
その時の市太郎は親友の現道優とその婚約者の輝美を失くしていて、悪質な探索者を恨み切っていた。
探索者は処罰され、市太郎は綾乃に基本的な生活をさせて、探索者高等学校に入学させる。
綾乃は市太郎に好意を寄せ、十六歳になると綾乃は市太郎に酒を飲ませて泥酔させて襲った。そして一回の行為で子供が出来た。
十四歳年下の高校生を孕ませた市太郎は、両親から初めて説教されたと言っても良いくらいだった。
しかし綾乃は「合意の上」と言って両親や知り合いを説得する。
そして「私は合意していない」と市太郎は呟くが誰も聞いていない。
日和から「優さんと輝美さん知ったらなんて言ったかな? おめでとう? ケダモノ? 変態ロリ公務員? ちょっと友人辞めようかな? のどれだと思いますか?」
反論できない山田市太郎。ダンジョン管理省や探索者の人達から冷やかされ続けた。
市太郎三十歳、綾乃十六歳は籍を入れた。その翌年、綾乃は双子の男女を産む。
その後は分からない。市太郎はトラックに轢かれて過去に戻って来たから。
「……計算すると年齢は合っているな。でもまさかな」
伝風寺綾乃(十四歳)が死んで生まれ変わって、上田綾乃(十六歳)が市太郎(三十歳)と結婚。
まさか……と非現実的だと思うが、自身の経験も非現実的だった。
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