配信内容〔初配信〕前編
【長いな・・・あとどんくらい?】
【(0゜・∀・)wktk】
【↑ホモはせっかちってはっきりわかんだね】
【ggrks】
【↑無理やろw】
【俺の予想:可愛い】
【じゃあ俺の予想はイケメンにするわ】
【女だぞ】
【かわいいおにゃのこなんだよなぁ】
【イケメン・・・美少女・・・閃いた!】
【↑通報した】
───
──
─
「ふぅ、そろそろか───」
と、オンボロのパソコンに表示された配信画面に目を配る。
現在の時刻は午後6時55分。
配信開始の予定時刻はは7時からなのだが、もうすでに人が集まってきている。
「・・・ふー、落ち着け落ち着け。焦るな、焦るなよ俺」
心を燻るような緊張の汗を拭うように、何度も深呼吸をする───が、それでもやはり拭いきれない。
以前、事前に集まったミーティングで、画面越しに話すくらい余裕だろ!と高を括っていた自分を殴り飛ばしたい。
何言ってんだよ過去の俺・・・現在の俺はめちゃくちゃ緊張してんだよ!
だが───だがしかし。
「ここで、臆したら男が廃るよなぁ!」
【初配信】
野郎共!新人とは俺のことだ!【Vtuo】
3,281人が待機中・10分前にライブ配信開始
【紅雨 輪廻】 【チャンネル登録者数】1,058人
くっ・・・嗚呼、緊張する・・・。
3,000人以上の人達がこの配信を見てくれていると思ったら余計にだ。
考えるのは簡単だが、その場面に直面すると思ったように動けないとは良く言ったものだが、実際に自分も緊張からの声の震えが止まらない。
あと、少しでも稼げるようにと不純な理由で面接を受けて、本当に受かってしまったっていう罪悪感が凄まじい。
それと、まだ初配信をしていないのにも関わらずチャンネル登録者がいるのは、恐らく箱推し勢だろうな。
自分の推しのVTuberが所属しているグループや会社ごとチャンネル登録をしてくれるっていう、俺からすれば有り難い存在だ。
まぁこれも先輩VTuber達がやってきた日頃の行いのお陰だろう・・・ってあ、あれ?
先輩達ってそんなに日頃の行い良かったっけか?勉強がてらに配信にお邪魔した時は、かなりえげつない下ネタを連呼してたんだが・・・まぁ気のせいだろう、うん。
今は目の前の配信画面に注視するべきだ。
「ふぅ・・・ようし!やってくぞぉ!」
深く深呼吸をして、気合いを込める。
パソコンに映るのはもう一人の俺だ。なんなら現実の俺をモチーフにしてるらしく、髪が銀から金へ、右目と左目が赤色と青色というかなり厨二病チック
に変更になっている以外はほぼ俺だ。
そしてこのもう一人の俺に、今から命を吹き込まなければならない。
外見を作るのが絵師なら、中身となるのは俺なのだ。
だからこそ俺は緊張しているのだが───これ以上配信を開始しなければ遅刻になりかねないので、恐る恐るミュートを解除する。
よし!気合い入れてけよ俺!
『コホン!───こ、こんばんは!このライブを見てくれている諸君。俺は・・・いや、俺こそが三期生の紅雨輪廻だ!」
【うぉぉーー!!!!】
【Ktkr】
【カッコいい系・・・だと!?】
【キターーー!!!】
【男口調・・・イイ!】
【↑とりま通報】
【なんでや!?】
【あ、ふーん?いい声じゃん(ツンデレ】
【全俺歓喜】
『ふっ、褒めても何も出ないぞ・・・まぁ、今回は自己紹介とマシュマロ解放だけだが、見てってくれよな!』
よしよし、落ち着くんだぞ俺。
まずまずの好印象だ。
だがもし焦って俺が失敗したら、次に配信するファーレスとカナリアがやりずらくなってしまう───腹を括るぞ、俺。
【俺ッ子・・・尊い・・・】
【なんやその胸部装甲は!?(驚愕】
【よろしく!!】
【俺の感情と胸が一緒になって揺れてますねぇ・・・】
【↑通報しました】
【なぁんでやぁ!?】
【↑罪の意識がないとは┐(´д`)┌】
【凄く・・・大きいです///(とある部位を見ながら】
【ふっ、成長したな(後方腕組親字面)】
『ふふっ、あぁ!よろしくな!取り敢えず活動方針としては主はゲーム実況だな。たまーに歌配信もしていくと思う。応援してくれると嬉しいぞ!』
───で、出だしは完璧だよな?そうだよな?
というか、あ、足の震えが収まらないんだが・・・頬の筋肉がピクピクしてるのどうにかならないか?ならないわ。
【よろしくな!(二回目)】
【姉御や、これが姉御やぁ!(歓喜)】
【これは伸びる(確信)】
【怒濤の()で草 (やるやん)】
【可愛カッコいいな】
【二期生のトップバッターだってのに、あんまり緊張してない・・・だと!?】
【これ以上イロモノ枠が増えても困る】
は、はぁ!?緊張しとるわアホ!
それをおくびに出さないだけじゃあっ!!
──い、いや、違う。キレテナイ。オレキレナイカラ、ウン。
クールでイケメンな俺がキレるとかあり得ないから、ウン。
・・・さっさと次へ進むか。
『それで、だな。配信タグは#姉御のひととき。イラストタグは#姉御の武勇伝に既に決めている。後はセンシティブタグとファンネームなんだが・・・決めてない☆』
決まった。
完璧に決まった。
この俺の年齢を無視した完璧なキメゼリフ。
ハハハ勝ったな!
これに抗えるのは勇者くらいだハハハ・・・はぁ。
・・・ま、まぁここは人間達に素直にアイデアを聞いておくとしよう。
前世では良い意味でも悪い意味でも俺じゃ考え付かないようなことを人間はさらっと思い付くからな。
【は?お?(威圧】
【準備が中途半端で草です】
【それは流石に竹】
【こ れ が ぶ い つ お だ】
【キッツ・・・くはなかった可愛い】
【舎弟なんてどう?】
【姉御がセンシティブだとぅ!?・・・閃いた】
【↑これには思わず警察官もニッコリ】
【流石Vtuoわかってる】
【タグセンスの欠片もなくて好き】
『お、ファンネームが#舎弟かぁ・・・ふっ、流石だ。なかなかセンスあるじゃ・・・っておい!お前ら言いたい放題だなぁ!?』
くっ、こ、これが人間の力か・・・。
たった八秒でこうも簡単にアイデアが出てくるとは・・・敗けたわ。
魔王の威厳なんてなかったんだ。
【センシティブタグ・・・拳で語り合うとかどうよ?】
【何がええんやろか】
【↑センシティブ要素欠片もなくて草】
【勿論俺らは抵抗するで?パンパンッ──拳d〔このコメントは削除されました〕】
【もう拳で語り合うでいいよ】
【大喜利始まってて草】
【↑諦めてて草】
あっ、ふーん?お前らさてはやる気ねぇな?
いいのか?お?いいのか?やめちまうぞ?・・・いや、やめないけどな?
まぁ魔王たる俺ならこれ以上に良いタグの名前出てくるけど?まぁ?こういうのは人間達との触れ合いだし?
────はぁ、何言ってんだ俺。
『・・・じゃあタグは#拳で語り合うでいいな?後悔はないな?あ”ぁ”ん”?』
おっといけない。初めて掃除中にふざける男子に注意する女の子の気持ちが分かってしまった。
だが、俺は悪くないはず。
うん、きっとそうだ。
【ヒエッ!?】
【ホントにセンシティブ要素皆無で笑う】
【アネゴコワイ】
【あ、あらまぁ・・・ ❮時逆 流那❯】
【初配信でキレ散らかすVTuberがいると聞いて】
【↑困惑してて草】
【喧嘩腰なんだよなぁ・・・】
『・・・え、な、なに!?先輩!?な、なんでいるんだ!?いや、いらっしゃるんですか!?』
ちょ、おいおい待ってくれよ!先輩が配信を見に来てくれるのは聞いてないぞ!?
先輩配信者で1期生の時逆流那先輩が配信に来るって・・・それなら来るって言って欲しかったんだが!?
いや、言えないのは分かってるけどさ?
だがやはり心の準備というものがあってだな・・・。
というか・・・あ、挨拶をしたほうがいいのか?そ、それとも・・・い、いや、ともかく、視聴者の人間達には好印象で良かった。
現在俺は初配信でセリフを忘れないために、スキルを併用しながら自己紹介をしている。
スキルの汎用さを舐めたらいけなのだ。
まぁ今みたいに台本にないことがこられたら対処できないんだが。
───取り敢えず先輩に挨拶しよう(?)
話はそれからだ。
『お、あ、あの、先輩!よ、よろしく頼む!・・・お願いします!』
【アイェェェ!?トキちゃんやん】
【めちゃくちゃに狼狽えてて草】
【教室で女子に話し掛けられた時の俺らやん】
【↑やめろ!それ以上言ったら……わかるね?】
【↑おいおい・・・涙ふけよ(ハンカチ】
【頑張って! ❮時逆 流那❯】
【どっちも可愛い(確信)】
【この会話・・・てぇてぇでごわす】
【おー力士もよう見とる】
『う、狼狽えててねーし!』
【秒速でばれる嘘】
【切り抜き素材を提供してくれるとか神か?姉御だったわ(自己完結】
【狼狽えてないもんね(満面の笑み】
【姉御とは?(イメージ崩壊)】
【ちくわ大明神】
【↑コピペやめろ】
【俺のアレもちくわ大明神だわ】
【↑は?】
【↑死刑】
【↑通報した】
【↑そのつまようじしまえよ】
『ん?ち、ちくわ大明神?ま、まぁいいか。取り敢えず今日は!俺のましゅまろを開封していくぞ。何でも聞いていいからな!』
【ん?今何でもするって】
【(言って)ないです】
【変なコメ拾うな】
【姉御結構ポンコツ説あるな】
【↑これだからホモは(歓喜】
【ホモは帰ってもろて】
【ポンコツ属性・・・だと!?】
『う、うるせぇーぞ!』
誰がポンコツだ!俺の前世の現役魔王だったときならそんなこと言った瞬間斬首だぞ!
〔姉御おはこん!からの初めまして!しょーもないかもしれないですが、どんなゲームが好きですか?〕
溢れ出る怒りを抑えつつもマシュマロへと移り、質問内容を確認する。
ふーむ成る程。
『好きなゲームかぁ・・・パッと思い付くのはモンスタースレイバーかな?』
今なお新作が出続けている名作───その名もモンスタースレイバー。
出てくるモンスターを武器で仲間と強力しながら狩り、倒したモンスターの素材で新しい武器を作る──という単純明快かつ、己のPSが光るこのゲームは、今や誰もが知る大作ゲーとなった。
【なん・・だと!?】
【こいつ・・・出来る!?】
【有名だよなぁ】
【つよつよ輪廻ちゃん】
【ふっ!余裕だぜ!(白目)】
【↑ナニがだよ】
【モンスレやってんのか!?】
【姉御流石っす!】
『知ってる人の方が多いか。うーむ・・・それじゃあ次の配信はゲーム実況にするとしようか!』
結構・・・いや、かなりの人気だからな、あのゲームは。
なにせゲームが得意じゃなかった前世の俺が楽しんでやっていたゲームだしなぁ・・・いやぁ、懐かしい。
『よーし、それじゃあ次の質問いくぞーー』
話題を一旦閉じ、さらさらっと次のマシュマロへと移り、読み上げる。
大事なのはノリとテンポと勢いって、マネージャーさんが言ってたからな。
──いや、それもどうなんだ?
〔イケボで喋ってくださいぃ!!(血涙)〕
次のマシュマロへと移り、質問内容を確認する───ってイケボ・・・だと!?
俺、出せるかなぁ?
『イ、イケボかぁ・・・うーん。ちょっと待ってな!』
一旦ミュートにしてイケボをイメージする。
あれだよな?イケボってイケメンボイスだよな?・・ってあれ?これ一応女性である俺に言うの間違いじゃないか?
送り先あってる?
【ナイスゥ!】
【姉御のイケボ期待】
【視聴者数8,000人突破おめでとう!】
【↑ちょ、ま、え?早すぎん?】
【さっきまで3,000人台だったんだろ?ヤバスギィッ!】
【まぁ姉御だし(諦観)】
【全俺歓喜なんだが?】
【イケボ・・・姉御・・・ヌッ!ふぅ・・・】
【↑ナニしてるんですかねぇ?】
【イケボ待ち(全裸待機】
【(0゜・∀・)wktk】
ナ、ナニ!?8,000人突破したのか!
───あれ?というか、イケボやるって流れやつ絶対にやらないといけなくなってないか?
いや、まぁやるがな?
『アーーッ、アーーッ、アーーーー・・・よしっ!準備できたぞ!』
イケボを意識して数十秒練習し、ミュートを解除する。
喰らうがいい!俺のこの熟成されたイケメンヴォイスを!!
『────俺何言えばいいの?』
────一人で突っ走ってしまったが故に、何のセリフを言えばいいかわからなくなってしまった。
いやもう、本当にごめん。
ここはアイデア性に乏しい俺の頭で考えるよりも、人間達に聞いた方が早いだろう。
そう思い、質問を投げ掛ける。
出来ればそんなにハードル高い奴じゃありませんように・・・。
【は?お?告白だろ?(腹パン】
【↑おいおい死んだわコイツ】
【告白に決まってるだろ?素人か?(逆ギレ】
【俺らに告白してください(ニヤァ】
【キモオタ君さぁ・・・(いいぞ!もっとやれ!)】
【好きです】
【↑お前のは求めてない】
【告白でいいじゃないすか?(ニチャア】
【好き・・・姉御・・・閃いた!】
【↑終身刑】
【↑逝ってきます!】
【お前ら全員俺と一緒に刑務所な?】
【↑一生着いていきます!アニキィ!】
『こ、告白?・・・い、言わなければよかった・・・。ま、まぁいいだろう。自信はないけど、そこまでいうんならやってやんよ!』
女に二言はない。世紀の女魔王とも呼ばれたこの俺の演技力を見せる時だな!ハハハ!
・・・いや、やっぱりやめてもいいか?
え?駄目?
くっそ・・・後で告白に決まってるだろ?とか抜かした奴は、髪の毛が少しずつ抜けていく呪いにかけていくとして・・・やっぱり恥ずかしいんだが・・・。
だがしかし、俺も魔王。
俺はやると決めたらやる女だ!
『───ず、ずっと・・・前から好き・・・でした・・・だから・・・俺と、付き合ってくれ』
・・・くっ!いっそ殺せ!
めちゃくちゃ恥ずかしいし、これを幻想体じゃなくて、リアルでやってしまったら黒歴史が確定しているだろう。
いや、てか絶対これ切り抜かれてるだろ。もう本当に殺せ・・・。
【・・・ふぅ・・・】
【素敵すぎてもう抱かれてもいい】
【・・・勿論です(血反吐】
【此方も抜かねば無作法というもの・・・】
【えっっっっっっっっっ(尊死】
【イケボ?・・・あぁ、可愛いくてカッコいい声のことだろ?(錯乱)】
【素材提供ありがとうございます(ニッコリ】
【速報:10,000人突破】
【↑お前ら全員通報しました】
【何故だぁ!?一万人突破したって書いただけダルぉ!?】
【一万人に告白した女】
【↑たまげたなぁ・・・】
これは・・・よかった・・・のか?命を張ってまで黒歴史を刻んだ甲斐があるといいんだが・・・。
───って、んん?
『なん・・・だと!?い、一万人突破!?』