配信内容〔始まり〕
ジリリリリッ!
「あーーっ!うるっさい!!」
アラームの音で飛び起きた。
俺が転生?して、数日。
勿論この間で自分の体について色々調べた。その性能を順を追って説明しよう。
まず、魔法が使えた。
魔法というのは周りにある魔力もしくは己の中にある魔力を使って発動させるのだが、この世界では魔力が少なすぎて使えない・・・筈なのだが、この体は自動で魔力が生成されてしまうのだ。
しかもとても膨大な量を、一秒にも満たない速度で。
───なるほど、これがチートってやつなのか。
転生される前はゲーマーだった俺からすれば、チートという言葉は余り好きではないのだが、これが俺の力だと考えてみると・・・なんだろう。
とても誇らしく感じてしまう。
何せ魔王の時だってそんなこんな芸当は出来なかった。
あれ?俺前世より強くなってない?明らかに強化されてるんだけど?
やっぱり俺って実は凄いんじゃなかろうか?
───まぁ、閑話休題
次は身体能力。
これは思わず笑ってしまうほどあからさまだった。五感がかなり鋭くなり、握力もその細腕からは想像できないほど軽く、林檎を握り潰せる程度になっていた。
80キロも握力があれば林檎は潰せるらしいが、軽く潰せるとなったらどれくらいなのだろうか?・・・や、やっぱり人に気軽に触れるのはやめておこう。
念のためとして、これを間違えて人に向けてしまうと大惨事になるので、体にリミッターをかけている。
これのお陰で、一般人程度の力しか出せないようになった・・・と思うんだが、まだまだ完全ではないだろう。
そして次は眼。
これはヤバかった。
右目が銀の『魔眼』、左目が翡翠の『聖霊眼』と呼ばれる特殊な眼なのだが───『体力増強』、『身体能力強化』、『鑑定』・・・等々
能力がモリモリで多すぎて使いこなせないだろ!と思わず突っ込んでしまうほど多種多様な能力が備わっていた。
しかも、そのなかでも特に危険そうなのが───『因果律操作』、『運命掌握』、『生命支配』、『不死鳥』、『星滅』、『確率操作』、『死の権化』・・・等々。
わかるだろうか?この名前だけでも伝わるヤバさが。
あまりの恐ろしさに、能力の鑑定を使うことすら躊躇ってしまう。
あれ?俺の前世ってこんなに能力あったっけ?あれ?前世軽く越えてね?あれれ?
───そういえば前世の秘書に「貴女、もう生き物じゃないナニカですね」と笑顔で言われたのを思い出す。
いや、別にそう言われるのはいい。
弱かった昔の自分よりも強くなれたという証明になるからな。
・・・でも流石にこれは、な?
やりすぎだろ。
───でもまだあるんだよなぁ。
魔眼と聖霊眼とは別の異能とかいうモノが。
恐る恐る発動させた鑑定によると、俺が背負う七つの大罪と七つの美徳の集合体であるこの異能は、発動するだけで大陸一つが軽く沈む・・・らしい。
ナンダソレ?
大陸が軽く沈む?おいおい、馬鹿にしてんのか?
───いやというか、なんでこんなに強くなってんだ!?
普通に恐ろしすぎるんだが?
これを間違えて使わないことを祈ろう。
ボウハツ、ダメ!ゼッタイ!なのだ。
まぁだから学校も行けないし、バイトにも行けない。
万が一があったら、何の罪無き人が死んでしまうからな・・・。
それに俺が失望していたのはあの世界の人間だけだ。それを全く関係のないこの世界の人間に俺の価値観を押し付けても、全く意味がないからな。
だから殺すつもりもないし、というかそもそも理由がない。
まぁ、高校に関しては正直言って、『完全記憶』と『瞬間記憶』があるので、そこは心配していない。
というか、前世で俺が保有していた『森羅万象』があるから全く問題がない。
ただ───問題はお金だ。
今まではバイトで賄っていたが、行けなくなってしまったせいで財布のお金も尽きかけている。
うぅ・・・このままじゃ何も食べれずに餓死してしまうだろう───え?お前は食べなくても生きていけるだろって?うるせぇ馬鹿!食事は大事だろうが!
コホンッ!
まぁ兎も角、現状お金が底を突きかけているのは変わりない。
母さんの貯金があるが、使うつもりはないのだ。
だから、目標としてはお金を稼げる場所を探すことなのだが・・・。
条件が難しすぎる。
最悪暴発しても大丈夫なように、人が少ない、もしくはいない。そしてなおかつ、学生の俺でも直ぐに稼げるモノ。
「あるといいんだが・・・ないよなぁ」
何処か諦め気味に働く場所はないか・・・と視線を巡らしている───と。
テーブルの上に置かれた新聞に目が入った。
そこにはデカデカと、【最近流行りのVtuberの実態に迫るッ!】と書いてある。
ピンと来た。
「───こ、これだぁッ!」
───
──
─
「・・・う、うそだろ?受かってる・・・だと?」
数少ないお金をはたいて中古のパソコンを買い、何とか応募。
一次試験には通ったようで、二次試験の面接を受けたのだが・・・正直あまり自信はなかったのだ。
だがそれがまさか───つい先程メールが来て、戦々恐々としながら開いたら合格と明記されていたのだ。
正直応募をしたのってお金を稼ぐためという結構不純な動機ではあるのだが思ったが・・・まぁ、それはいいだろう。
まずはもう本当に残り少ないお金で機材の準備をするべきだ。
だが今はそれより───
「ぃやったぁー!!」
───素直に喜びを噛み締めたい。
嘗てここまで喜んだことがあっただろうか?
そう思えるほどに、自分でも驚くくらい我を忘れて喜びを噛み締ていた。