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配信内容〔キッカケ〕

ジリリリリッ!


「あーもう、うるせぇなぁ・・・ってもうこんな時間かよぉ!?ヤバイヤバイヤバイ・・・ってあれ?」


“俺”は確か・・・校舎から飛び降り自殺した筈じゃ・・・?


っていうか、声がめちゃくちゃ高いし、なんかかっこいい感じがする。


可笑しいと思い、自分の腕をみる。


───白い。


だがそれも病的な白さではなく、健康的な白さだ。

しかも細い。軽く力を込めてみるが、力を込める前と全く太さが変わらない。


「あっーー・・・や、やっぱりいつもより高い。っていうか、なんだこれ・・・胸?」


疑問に思い、軽く声を出すが、何故かいつもより高く感じる。


それに、さっきは焦っていて気付かなかったが、自分のの胸に明らかな膨らみがある。しかもその・・・大きいのだ。


「───まさかっ!?」


自分の姿をよく見る為に、机の隅にある鏡を手に取る。


ほぅっ。


と思わず溜め息を溢してしまった。


「き、綺麗・・・」


肌は先程述べたように白い。

艶々とした長い髪も肌と同様に白で、所々黒のメッシュが入っている。

目は所謂『異瞳麗眼(ヘテロクロミア)』で右目が銀、左目が翡翠のような色をしている。


そしてその顔はまるで、あらゆる美を突き詰めたような───例えるなら美少女の前に絶世のとか、世紀ののような子供染みた言葉が当てはまる程に美しく、慈愛に溢れている。


ニカッと笑ってみる。


思わずドキンとした。


───いや、かっこ良すぎやろ。


名付けるなら姉御・・・というべきなのだろうか?笑う前の儚げな印象とは違い、とても活気のある顔。


身体はかなり・・・いや、とても発育がいい。身長も前?と同じく173センチメートルだし、女性にしては高いほうだろう。


目が覚めたら高身長グラマラス美女になってたって、これどんなラノベだよ。


・・・いや、待てよ?明らかに女性になっているってことは・・・な、ないっ!?


俺の相棒というべきアレがない・・・だと!?






「う・・・うぅ・・・・ウソダァァァァァ!!!????」


俺は軽く絶望した。

なかったのだ。


俺の長年連れ添ってきた相棒とも言うべきアレが───なかった(大事な事だから二回言った)。


「や、やっぱり完璧に女性になってる?ってヤッバイ、服がぶかぶかだよぉ。というか、今更学校に行けないよなぁ・・・」


そもそも、何故女性になっているのだろうか?

転生や、TSといった非現実的なことが、自分にも起きてしまったのだろうか?


と、現在自分に起きている理解不能な事態を必死に整理していると───刹那。


「ぐぅっ!?!?アがッッ!?」


頭に激痛が走った。

まるで、バットで無理やり頭を抉られるような、そんな感覚。そのあまりの激痛に思わず蹲る。


イタイイタイイタイ───イタイ。


何時間にも感じるほど長く続く痛みに呻いていると、この美少女の記憶?のようのものが流れ込んできた。


いや、記憶なのだろう。先程まで、まるで体の何か大切な部分が失われてしまったような感覚が失くなっている。


そしてその失われた記憶のピースがカチリと嵌まる感覚。


そうか・・・自分は───。


───全て思い出した。この少女・・・いや、“俺”は魔王だった。




名はアシュリー・ブラッドレイン。


血を啜り、人々に絶望を与え、世界を滅ぼす存在───というわけではない。


別に世界征服も目論んでいないし、なんなら僻地で平和に同族と暮らしていた。


あぁ、そうだ。


御伽噺で語られるような、世界を滅ぼすような危険な存在ではなかった。


である筈なのに、“何故か”勇者に討伐された。


まぁ理由は大体推察できるんだが。


魔王とは七つの大罪と美徳を背負う者のことを指す。かと言う俺もその例に漏れず、七つの大罪と美徳を先代の魔王から譲り受けた。


だからわかるのだ。


確かに大罪の力は強力だ。それも想像を絶するほどに。


故に人々が恐れるのも理解はできる。


だが大罪だけならともかく、美徳持ちは本来敬われることはすれ、殺されるようなことはないはずだ。


俺を殺そうとした勇者を送った“あの国”では、美徳持ちは信仰対象に入っているからだ。


それに加え俺は人間の国と協定を結んでおり、人間たちには一切干渉もしていなかったし、別に人を取って喰らうような生態もしていないため、今さら理由もなく人間を襲うわけがなかった。


それに普通なら勇者程度・・・と言ったら傲っているように感じるかもしれないが、俺はこれでも魔王。


自分で言うのもなんだが、勇者とは言え人間に討伐などされるような半端な強さはしていなかった筈だ。


それなのに、討伐された・・・いや、違うか。


俺はただ、平和に過ごしたかったんだ。ほのぼのとした生活をしたかった。


だから・・・勇者が俺の城に攻めこんだときには『失望と絶望』が俺を襲った。


何故裏切るのか?


不戦協定を結んだ筈ではないのか?


どうして?


疑問は尽きなかった。


故に・・・彼女は・・・“俺”は自殺したのだ。


約束を破った人間達に失望して。


裏切り者の人間達から暴行を受け、俺の目の前で無抵抗のまま死んでいった民達の姿が目に焼き付いて・・・離れなくて。


だからこそ俺は自ら弱体化を掛けて───自ら死んだ。


そして悲しみのまま死亡した彼女の魂は、死んだ民達と同様に輪廻の境界へと導かれ、輪廻転生を経て新しい生き物として生まれ変わる筈だった。


しかし、自殺した彼女の魂は、彼女の意思に反して生きようとした。いや、してしまった。


ただでさえ強力な彼女は、その魂すらも強固かつ強力だったのだ。彼女ですら想像がつかない程に。


輪廻転生の輪から脱出した彼女の魂は、“偶々”同時刻に死んだ俺の魂を食べて同化し、再生したのだ。


そしてその結果、一番俺の名残が強いこの部屋で復活した。


ふむふむ、だから気付かないうちに“僕”から“俺”口調になったのか。


っていうか、なかなか壮絶だ。


「というかこれは・・・今更死ねないな」


彼女だって、本当はもっと生きたかった筈だろう。


せっかく、転生したのにまた死ぬっていうのは俺には出来ない───それにこの世界では、彼女が願った生き方が出来る。


だからこれからは “自由” に “楽しく”“ほのぼの” と生きていこう。


俺はそんな決意を固め、心に誓った。

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