俺は地道に生きたかった。
本には何も書かれていないように思えた。
だけど次に本を開いたとき文字が記されている。
商業と書かれたそこには基本や利益率などそして、どのような商売があるのかなどということが書かれている。
雑用をして小銭をもらう。俺が思いついたのはそれだった。
とにかく俺は金がなければどうしようもないということを悟ったのだ。
物を作って売るは、俺にそういう技術を教えてくれる人などいなく、技術を生かせる場所もない。
子供の俺にできることはそれしかない。
俺はこっそりだが、それらしい商店を探した。
そして、なんだかわからないが、俺より年上の子供たちが何やら喋っているのを見つけた。
「あの、俺」
思わず俺はその子供たちに声をかけた。
「あ、やべ、草むしりしてない」
「あの、俺がしましょうか?」
俺はとっさにそう言った。
「本当か、じゃ頼むわ」
子供たちは屈託のない顔で俺の申し出を受けた。
俺は言われた範囲で雑草をむしれと言われてモクモクとむしりだした。
どれくらい経っただろう。気が付くと子供たちの一人が俺の肩を叩いた。
「これ、やるからさっさと消えろ」
小銭を渡されて俺はその場から足早に走り去った。
この小銭はどれくらいの価値があるのか俺にはわからない。だけど、少しずつでも溜めていけば。
そう思って俺はこっそり枕の下にこの小銭を隠し持っていた。
そして、俺は男のところに通い、街に出て小銭を稼ぐという生活を丸一年ぐらいしていた。
浮浪児のわりに身ぎれいな俺に頼みごとをする人間はそこそこの数いた。俺は金をごまかしたりせず、まじめに働くのでうちで働かないかと親切に言ってくる商人もいた。
そして少しずつ俺は外の様子を学んでいった。
そんな日々を過ごすうち俺は壊れた窓をくぐるたび俺の身体が大きくなっていくのを実感した。
このまま大きくなってしまったら俺はこの窓から出入りができなくなるだろう。その前に街で暮らせるようにならなければ。
働かせてくれるという商人の話に乗るべきかと俺が思案しているうち。いつもと同じ日々は唐突に終わった。
外で見るよりもっときれいな色の服を着た男達が現れ、俺の前に膝をついた。
「ルドルフ三世即位をここにことほがせていただきます」
それが俺に掛けられた言葉だった。