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プロローグ
ぎっしりとひしめく人の群れが俺の前にひざまずいていた。
俺はその人々を眼下に睥睨している。
俺の小さな身体には不釣り合いな巨大な玉座の上で。
俺の小さな頭にはグラグラと不均衡に揺れる王冠。
こんなちっぽけな俺にひざまずく色とりどりの上等な衣類をまとった男たち。あまりの非現実感に俺は眩暈すら覚えた。
だが俺は微動だにせず、玉座の上で無言で座っていた。金糸銀糸を織り込んだ豪勢なクッション付きの椅子。俺の手の下にある手摺にはごつごつとした宝石がいくつもはめ込まれている。
俺は本日即位した。
見渡す限り人の波、そしてさっき見上げた天井には豪勢な天使の絵が描かれていた。
天使はどこか不思議な笑みを浮かべて俺を見下ろしている。
その笑みに含まれているものはいったい何だろう。
今は夜のはずなのにとても明るい。今までいた牢獄とは全く違う。
灰色の無機質な石造りの牢獄。
鉄格子以外はすべてが灰色の石。鉄格子の向こうにだけ色のあるあの世界と。