二人の少女
またもや…遅れた…!
2023/7/6:細かい表現を修正しました。
「よしっ!、これで五匹目っと」
狩り始めて30分ぐらいたった頃、俺はゴブリンを五匹、スライムを七匹狩っていた。
「それにしても、やっぱりレベル凄い上がるなぁ」
俺の今のレベルは34。王城にいたころにも、実戦経験としてこの森に来ては魔物を狩っていた。その時も、かなりのスピードでレベルが上がっており、これを見た王国騎士の人は、「さすが勇者様方、レベルアップが異常といっても良いほどに速いですね…」と、顔を引きつらせていた。
「さてと、そろそろいい時間だし、帰るとしま…」
「いやぁぁぁあああ!?」
「…なんだ?」
帰ろうとすると、遠くから悲鳴が聞こえてきた。あの方角は…
「…ちっ、かなり深いな…俺で対処できる奴なら良いんだが」
悲鳴が聞こえてきたのは、なんと森の内側からだった。
俺は急いでその声の方向へと駆け出した。
私はミーナ、17歳の獣人奴隷だ。2年前、私は小さな村でひっそりと家族と共に暮らしていた。父は力が強く、でも、争いは好まず、植物や虫を大切にする、そんな優しい人だった。母も、朝から晩まで働き、でも私達にはつかれた様子など見せない、とても強い人だった。弟は、イタズラ好きの少し困った子だが私にいつも付いてきていた、かわいい弟だった。
村は、活気はお世辞にもあるとは言えなかったけど、皆優しく接してくれて、仲の良い村だった。
けれど、ある日突如、王国の騎士団が村にやって来て品定めをするような視線を向けた後、私達にこう言った。
「女を2人差し出せ。そうすりゃこの村は焼かないでおいてやるよ」
もちろん、私達は猛抗議した。けれども、騎士団の内の1人がいつの間にか村長の背後に立ち、首に剣を突きつけていた。その行動に私達の抗議はすぐに止んだ。
騎士団の団長は、「二日時間をやる。それまでに決めろ」といって、村を去って行った。その後村で、話し合いがなされたが、一日経っても議論は続いていた。理由はもちろん、誰を差し出すかだ。
最初は、徹底抗戦だ、と言った意見もあったのだが、騎士団のあの動きを村長が思い出させると、すぐにその意見は無くなった。そして、誰が、という議論になるのだが、当たり前だが誰も犠牲にしたくないので、会議は停滞していた。
そんなこんなで二日が立ち、ついに約束の日がきた。最後まで決まらなかったから、多分、徹底抗戦になるかも、と前日の夜、母に聞かされた。
「さぁ、誰が来る?それとも、まさかとは思うが俺たちと戦うなんて言わないよな?」
騎士団の団長は村長に脅しを掛ける。村長はその様子に少したじろいだ。しかし、毅然とした態度を取り直し村長が返答する瞬間、1人の少女が飛び出してきて、言った。
「私です、私が行きます」
その言葉に、村の皆が絶句し、頭を真っ白にした。私はその子を、親友のレイシラを見て、一瞬驚き、そして覚悟した。
「おい、後一人だったよな?誰だ!」
「ここ。私が行く」
私の言葉にまたしても皆は絶句した。そしてその間にトントン拍子に騎士団に連れて行かれた。行く寸前、私は、母の叫び声を聞いて、静かに涙した。
その後、私達はすぐに奴隷商に売られ、奴隷として調教された。
3か月後、運良くレイシラと一緒に貴族様に買われた私は、奴隷として一生懸命頑張った。機嫌を損ねたら痛めつけられるから。
そして先日、王国の近くにあるモンスターパレスと呼ばれる森に、二人一緒に連れて行かれた。少し開けた場所に突き出され警戒していると、主人から、訓練だ、と言われ、頭が真っ白になった。気づいたときには遅く、レイシラ以外誰もいなかった。レイシラもショックを受けているようで、しばらく沈黙が続いた。
しかし現実はそんなに甘くない。気づくと、ゴブリン達に囲まれていた。
「いや…いやです…来ないで下さい…」
レイシラは絶望した顔をして、伝わらない懇願をしていた。かく言う私も、足が震えて動けずにいた。そして、無意識に叫んでいた。助けて、と言う意味を込めて。
「いやぁぁぁあああ!?」
「ここか!?」
レベルが高い俺は、全力疾走すれば軽く世界記録更新ができる。なので、悲鳴が聞こえてきた場所には、すぐに着いた。すると、そこにはゴブリンに囲まれている二人の少女がいた。
「…ギリギリ間に合ったか」
俺の声に反応したのか、ゴブリン達は俺の方注視した。
ゴブリン達はゴブリンと言えどレベルが高く、もうすぐ進化しそうなレベルだった。一対一であれば瞬殺できるし、二対一でも無傷で勝てる。が、それは一体や二体の場合だ。群れとなると、決死の覚悟で挑まねばならない。
「ハッ!…上等だ…こっちが食らいつくしてやる…!」
俺の殺気がゴブリン達は俺に対し戦闘体勢になった。
そして、戦いの幕が上がる…
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