9
この国の傭兵は国との契約により魔物退治専門で他の国と違い、国に雇われて戦争に参加する事は無かった。
だけど百年前の戦争で国が戦力として、傭兵ギルドに全ての傭兵を雇いたいと申し出た。
相手が大国で倍以上の数で攻めてきたからだ。侵略戦争だった。
契約とは違う申し出だったが、傭兵ギルドと傭兵達はこれを承諾した。島国なのもあって傭兵達はこの国出身が多く、愛国心があり家族が居た。
そうして傭兵達も加わって戦争が始まった。
傭兵達が加わったとはいえ相手はこっちの倍の人数で、一時も油断できない戦争になるかと思われた。
だが、ふたを開けると戦争は三日で終わった。勝利という形でね。
相手は船で島を囲んで攻めてきたが、上陸すらさせないほど圧勝だと記録されている。
生活の為、生きる為に毎日命懸けで魔物と戦っている傭兵達は、正規の兵士より実践経験が豊富だった。あとこれが一番の理由なんだけど、魔法使いの質がこの国は他の国の平均を大きく上回っていたのさ。これはこの戦争後に発覚したんだけどね。
国は傭兵達の強さを知り、有事の際の大きな戦力を他国に流さないよう傭兵ギルドを国の管理下に置く事にしたってわけ。
「僕の説明理解できたかい?出来てないならもう一回話すけど??」
「傭兵ギルドが国の管理下に置かれる理由はわかりました。だけどそれじゃ傭兵側だけ負担が大きくないですか?魔物退治もして戦争の時にもかりだされるなんて」
「なるほどもっともな意見だね。ちょっと待ってお腹すいた」
そう言いながら服のポッケから紙に包まれたサンドイッチを取り出して食べ始めた。
(今食べなくてもいいでしょ!)
美味しそうに食べる人を見てこんな気持ちになるとは思いもしなかった。
こちらの事はお構いなしの様で、彼は食べながら話を続けた。
「確かにそれだけ聞くと傭兵達だけ不公平だ、だから国は傭兵ギルドへの援助を大きくしたんだよ」
「援助とは具体的にはどういったものなんですか?」
「最低限の衣食住の保証と治療費の負担、だけど一番大きかったの国の正規軍になれる可能性を与えられた事だね。元々傭兵ギルドは兵士になりたくてなれなかった者達が集まる場所だったからね、傭兵達は喜んだ。実際にその戦争で大半が正規軍に誘われた。こうして傭兵ギルドは一部の人達にとって希望の職になったとさ。簡単に説明したけど大丈夫?」
「はい」
「それから年に一回、傭兵ギルドに正規軍は派遣されることになった。国は兵士の鍛錬に魔物退治は良いと考えたのさ。そして国と傭兵ギルドは持ちつ持たれつの関係になったのさ」
それは今も続いているらしい。私は兵士になるつもりは無い、ベナトばあちゃんも兵士にはならなかったみたいだし。
その後は仕事内容について話を聴いた。依頼する目安として傭兵達は数字を振られ最初は五、その次は四と、ギルドから評価が上がると数字が低くなっていって、最高が1だそうだ。
(ベナトばあちゃんはどの数字だったんだろう・・・)
「ベナトの数字気になる?ギルドを抜けた時の数字は二だったよ」
私の心を読んだかのように話してくるので驚いた。
「君は思ってる事が顔に出やすいね。僕にとっては君はまさしく、顔に書いてあるって言葉がぴったりだよ」
その言葉には無言で返事をした。
からかうように話す人と好き好んで会話する人は少数で、アルナイルも例外では無かった。
「よし。今日の所は顔合わせの意味もあるし話はここまでにしとくか、君も早く帰りたがってるしね」
「そうですね、そうしてくれると助かります」
「傭兵になる意思は確かなんだよね?なら手続きはこっちで済ませておくよ、済んだら手紙を送る。まぁ大体一か月ってとこかな?傭兵について細かい部分はベナトに聴くといいよ、詳しいからね。もし困ったらここに聴きに来てもいいからね」
「解りました、今日はありがとうございました」
もうお昼も近い時間だ。
(帰ってベナトばあちゃんとお昼を食べよう、お腹すいた)
食べながら話す内容は、二人の共通の嫌い人になるだろうと安易に想像できたアルナイルだった。