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言葉が出なかった。すぐには彼の放った衝撃のセリフの意味を理解できずに固まってしまった。
何とか落ち着こうと深呼吸をする為に生き吸い込んだ。
そして・・
「うそだよ~」
「ふぅっ!っっげほっげほ!!」
「信じた?驚いた??いや傑作だねぇ、もしホントなら嫌われるどころか憎まれているし、ベナトの奴なら僕の事を殺して僕はこの場にいないだろうね」
(何なんだこの人は!)
ついていい嘘とダメな嘘の区別もつかないのかと怒っているとさらに彼は話を続けた。
「ところで・・今の話を聞いた君の表情には驚きや怒りがあった。けど僕が一番気になったのは恐怖の表情があったことなんだけど・・どう?当たってる??なにがあったのかな???いやまって、当ててみよう」
からかうようにニヤニヤしながらどんどん話を続けていく。
「君、戦争孤児かい?いやちがうなーここ数十年は戦争をしてない。それに身寄りのない子は普通教会にいく。ベナトが身寄りのない子をわざわざ引き取るとは思えないから、君の引き取りは偶然だ。身内もいないし住んでる場所の周りには誰も・・・いや待てよ、そういえばベナトが住んでる場所からそう遠くない場所に村があったな。そしてその村は十年前に盗賊に襲われて消えた。という事は・・・」
少し間をおいて答え合わせをするように
「君はその村の生き残りで偶然ベナトに助けられそのままずるずると今の関係になった。どう?当たってる??結構自信あるんだけど」
(ベナトばあちゃんがこの人を嫌いな理由がわかった気がする・・・というか確信した!!)
ボイド・ファンは会話しているだけで不快な気持ちになる人だと、アルナイルはそう確信しベナトがアルナイルに合わせたくなかった理由も理解した。
「・・・正解です」
「当たった?そう怒んないでよ謝るからさ、この通り」
そういいながら頭を下げた彼をみて、帰りたい気持ちを抑えながら謝罪を受け入れた。
それからは傭兵ギルドの説明に入った。
この国の傭兵は他の国と違って国の管理下にあるので自由に出国出来ないと言われ
「それなら兵士と変わらなくないですか」
「いや違う。この国では兵士は主に他国の脅威から国を、傭兵は魔物の脅威から島民を護ると決められている。例外もあるけどね」
「何故ですか?」
「この国は、というかこの島は魔物の襲撃が盛んだろ?それらすべてに国が対処していたら、いざ国同士の戦争になった時、相手の国と自国の魔物の両方に戦力を分けなきゃいけない。不味い事だよね?そこで魔物退治が主な内容の傭兵ギルドと国が契約したのさ、さっきのルールをね。だけど・・・」
そこで話を止めた彼は私の顔を見た。相変わらずいい笑顔だ、今はその笑顔に怒りを覚えるが。
話の続きを待つが、話し始める気配がないので我慢ならずこっちから聞いた。
「だけど何ですか?早く教えてください」
「気になる?やっぱり気になるよね?どうしよっかな~」
「それがボイドさんの仕事ですよね?早く教えてください」
「ボイドじゃなくてファンって呼んでよ。そしたら教えるよ」
「ファンさん。話の続きを教えてください」
ホントに家に帰りたい。帰ってベナトばあちゃんとご飯食べたい。
アルナイルの心からの願いはまだ叶いそうになかった。