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「只今呼び出しますので、こちらで少々お待ちください」
そういわれながら応接室の様な部屋に案内された。
ベナトは渋々紹介状を書いてくれたが、一緒に行きませんか?と、誘っても頑なに首を縦には振らなかった。
最近は魔法の訓練と仕事で時間が作れなかったので、ギルドに行くついでに久しぶりにベナトとぶらぶら出掛けたいと思っていたアルナイルは少しがっかりした。
それと同時にベナトの意外な一面を見れて驚いた。
アルナイルが知るベナトは、身寄りのない自分を育ててくれた優しい人であり、ベナトが紹介してくれた職場の人達はベナトの事を悪く言う人も無く、人当たり良くて交友関係も広い印象だ。
そんなベナトにまさかこれほど嫌われる人が居るとは驚きだ。
(どんな人なんだろう・・)
ベナトがこれほどの反応をする人に一人で会いに行くのは不安でしか無かった。
再度誘ってもベナトは
「私はギルドには行かないよ。いくならアル、一人で行くんだねぇ」
と言われた。
こうしてアルナイルは一人で傭兵ギルドに行く事になった。
案内された部屋は中央にテーブルがあり、それを挟むように左右にソファーが置かれていて部屋自体の装飾は控えめだ。
取り合えず座って待つ事にした。
多少の緊張を持ちなが頭の中であれこれ考えているとドアが開いた。
「やぁ初めまして、僕はボイド・ファン。君の名前は何かな?」
ニコニコと笑顔で自己紹介しながら相手は手を差し伸べてきた。
差し伸べてきた手を握り返しながらこちらも自己紹介をする。
「初めまして、アルナイルと言います。ベナトば・・失礼、ベナトさんの紹介できました」
「へぇー、ベナトね。これまた懐かしい名前が出たもんだね。びっくりしたよ。彼女は元気かい?僕は見ての通り元気だよ」
「・・・はい、元気ですよ。今は王都で暮らしていて__「えっ?ベナト今王都にいるの??ほんとに???」
急に話を遮られてびっくりした。取り合えず質問の返答をしながら相手を観察する。
ギルド長、ボイド・ファンは背は高く腕の肉付きを見るに中々鍛えている。
髪はブロンド、顔つきは普通・・だと思う。でも笑顔も相まっていい人そうな雰囲気が漂っている。
「ベナトは僕が生きてる限り王都には来ないと思ってたけど・・・君が原因かな?ん??どうなんだい???」
「え?あっ、そうです。私が王都で一緒に暮らそうと誘って承諾してくれました」
「一緒に暮らしていると。僕の記憶じゃあベナトにはもう身内はいないんだけど、君とはどんな関係なんだい?教えてよ」
随分と自分のペースで話を進める人だな、少し苦手だ。
そう思いながらベナトと自分の関係を説明した。
「身寄りのない私を拾ってくれたのがベナトさんでした。それからベナトさんは私の第二の親であり魔法の師でもあります」
「なるほど。ベナトがそんな事してたのか、びっくりだよ。でもそうなると不思議だね、ベナトは僕の事が大嫌いだから君がここに来る事には反対したと思うんだけどどうかな?」
「反対はしませんでした。ただここには絶対に行かないと言っていました」
なるほどねぇ~、と何か考えている様子で顎に手を添えた。
ここまでずっと笑顔を崩さない彼を見て、アルナイルは何を考えているか分からない人とだなと思った。
そう思いながら一つどうしても気になる事を聞く事にした。
「あの~、質問してもいいですか?」
「ん?あぁごめんね僕ばっかり質問しちゃあって。どうぞ。いいよ何でも聞いてよ、僕の好きな食べ物?家族構成??趣味???」
「いえ違います。その・・どうしてベナトさんがボイドさんのことを嫌っているのか気になって」
「あぁ、そんなことかい。ちなみに僕の事はファンと呼んでよ、ボイドも方はなんか距離があるみたいで嫌なんだよ」
そう言いながら彼は続けた
「それで・・・なぜベナトが僕の事を嫌ってるかだったね?そんなの簡単さ」
彼は部屋に入ってきた時から変わらない笑顔で言った。
「ベナトの住んでた村を滅亡に追いやったのが僕だからさ」