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そうして更に二年間、魔法の練習と王都での仕事の生活を続けた。そして今日、前々から考えて秘密にしていた事をベナトばあちゃんに伝える事にした。
「仕事を辞めて傭兵になる?」
「はい。店主のアンリさんにはもう伝えてあります」
そう言いながらベナトばあちゃんの様子を伺うと、あまり驚いた様子が無い事にこっちが驚いてしまった。
私の様子を見て何を思ったのか察したようで
「魔法を教えてほしいと言ってきたあたりから予感はしてたさ。まぁ、思ったよりも遅かったけどねぇ」
私の顔を見て笑いながらベナトばあちゃんは言った。私の考えはお見通しのようだ。悪い気はしない、むしろ何故か嬉しい。
「それで相談があるんです。傭兵ギルドの職員に知り合いが居れば紹介してほしいんです」
「私が元傭兵と知っての頼みかい?」
(やっぱりそうだったんだ)
前々から予想はしていたがどうやら当たっていたらしい。
「確信はなかったですけどやっぱりそうだったんですね。そもそも王都の平民や私が暮らしてた村のみんなも、魔法が使えない人が殆どでしたし」
「アルにならすぐにバレると思ってたよ」
隠しる訳じゃないんだけどねぇ・・と、ベナトばあちゃんは呟いた。
傭兵を引退した後は、それ関連の仕事を転々として今の仕事に落ち着いたと教えてくれた。
ここでアルナイルは今一番気になる質問をした。
「ベナトばあちゃんは私が仕事を辞めて傭兵になる事には反対ですか?」
この事が気がかりで、中々ベナトに言い出せなかったのだ。
「この国では傭兵なんてありふれた職業の一つだしアルは魔法も使える。それにもう二十歳だろ?とっくに成人しているし、自分の進む道を自分で決める権利もある」
(わかっちゃいるんだけどねぇ)
頭では解っているが、やはり親心的に傭兵なんて危険な仕事は選らんでほしくない。
しかし、自分も昔は母に心配されながらも傭兵の道を選んだ身だ。
そして考える。
我が子と言えるアルナイルが自分と同じ道を選んだのだ、親は子に似ると言うではないか。
そう考えたベナトは気分が良くなった。
物は考えようとはよく言ったものだ
自分が考え込んでいる間、不安そうな表情をしているアルナイルに気付き、それを取っ払うような笑顔で答えた。
(ベナトばあちゃんは反対なのかな?)
急に黙り込んだベナトにアルナイルは不安になるが、少し待つとベナトが何故か笑顔で傭兵になる事に賛成したので、少し戸惑いはしたが嬉しかった。
「それで傭兵ギルドの知り合いへの紹介だったねぇ」
「居るんですか?」
「居るには居るんだけどねぇ。一つ大きな問題があるのさ」
深刻な表情をしながらベナトが言うのでアルナイルは身構えながらも問いかけた。
「その問題とは何なんですか?」
問い掛けながら考える。
(性別の問題?年齢の問題?それとも・・・)
「・・・ギルド長」
「へ?」
「傭兵ギルドのギルド長、ボイド・ファン。私はそいつが嫌いなんだよ。アルに合わせたくないくらいにねぇ」