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次の日の朝、あまり寝付きが良く無かった割には早起きし、寝起きにしては妙にすっきり冴えている状態で、アルナイルはベナトが起きてくるのを軽い朝食を作りながら待っていた。
先にテーブルに着いて食事をしていると寝室から物音が聞こえた。
ベナトが起きてきたらしいと考えるアルナイルの予想通り、ベナトがまだ少し眠たそうなのそのそとした足取りで寝室から出て来た。
「おはようございます、ベナトばあちゃん」
「おはよう、アル。今日は随分と早起きだね」
「朝食も出来てますよ」
「そうかい。先に顔を洗ってから頂くとするかねぇ」
そういってベントは家の外の井戸に向かう。
戻ってきたベナトはアルナイルと一緒に朝食を始めた。
「アル、なにかいい事でもあったのかい」
食事をしながらベナトは、寝起きからアルナイルを見た時から思っていた事を聞いた。
「わかりますか?」
「そりゃわかるさ」
そうベナトが返事をすると、先に朝食を食べ終えたアルナイルがおもむろに両の掌に魔力を込め
だした。
それはつい最近、ベナトが教えたばかりの水と木の魔力だ。
「どうですか?二週間とちょっとかかりましたけどここまで出来るようになりましたよ!」
アルナイルはそういいながらベナトの方を向く。
すると、ベナトがとても驚いた様子でこちらを見ている事に気が付いた。
「ど、どうしたんですか?ベナトばあちゃん」
「・・・アル、あんた二週間とちょっとでホントにその練度まで魔力を練れるようになったのかい?」
「はい、そうですけど・・・」
「あきれたねぇ・・」
そんな反応が返ってくるとは想像していなかったアルナイルにベナトは説明するように言った。
「アルが今見せてくれた魔力の練度はね、見習い魔法使いが一人前と認めてもらえる練度なのさ」
「そうなんですか?」
ベナトの今の言葉と反応を照らし合わせ、アルナイルは二週間で水と木の魔法使いと胸をはって名乗れると云うことになる。
本当に?と最初は思ったが
(ベナトばあちゃんがそんな嘘をつくとは思えないしなぁ)
もしかして私って凄いのか?とアルナイルの内心を後押しするように、ベナトが
「まったくたいしたもんだよアルは。幼い頃から魔法の訓練をしている子が、15歳頃でようやく辿り着ける練度なんだよそれは。本当にたいしたもんさ」
ベナトにそこまで言われて嬉しくない訳がなくアルナイルは心のなかで舞い上がった。
「この調子でいけば残りの三つもすぐ覚えそうだねぇ」
「頑張ります!」
その後、アルナイルは残りの三つの魔力の練習をした。
最初の二つに比べると随分と時間がかかり、一年掛かった。
「アルは水と木の魔力の適性が強いみたいだねぇ」
それでも、普通の人より遥かに早い事には変わりなく、アルナイルは嬉しかった。