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星が照らす行先は  作者: 健健
三章 ヴェール学園
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 休憩時間も終わり、生徒達は再び魔力練度の鍛錬を再開していた。

アルナイルも例に漏れず目を閉じ集中して鍛錬を行っていたのだが、休憩前とは少し状況が違った。

アルナイルはチラリと横目で隣の席に目を向ける。


「……」


そこには他の生徒と同じく、集中した様子のヴァイクが映る。

短時間の付き合いながら随分お喋り好きだとアルナイルは認識していた、休憩後からは一言は話さず魔力練度の鍛錬に集中していた。


先程の休憩時間中に色々と質問攻めにされ、言える範囲で正直に答えていたのだが

その際は特に問題なく会話は出来ていた。


(なにか変な事いっちゃったのかな…)


多少気にはなるが、真面目に鍛錬をしているという事なのでそれ以上深く考える事は止めにした。

そこから二回目の休憩時間まで、二人は終始無言で魔力を練り続けた。


「では予定通り、午後は訓練所にて授業を行う。引き続き参加する者は昼食後、訓練場に集合するように。以上だ」


ララが午前の授業を終わりを告げ、ぞろぞろと生徒達が教室を後にしていく。

恐らく食堂にでも行くだろうと思う、込み合う前に自分も急ごうと立ち上がろうとした時、隣から声を掛けられた。


「ねぇ、君も食堂に行くんだろ、一人?」

「はい、そうですよ」

「君さえ良ければだけど、相席してもいいかな?」

「別に構いませんよ」

「よし!じゃあ遅れない様に急ぐとしようか。この時間帯は何百人っていう生徒が食堂に集まるからね」


こうしてアルナイルは二人で食堂に向かう事になった。


___________________________________


思いのほか食堂内は混んでおらず、スムーズに昼食を受け取り空いている席に座る。

今日の昼食は牛肉がゴロゴロ入った贅沢そうなシチューとパンだったので、アルナイルはシチューは大盛りで、野菜の盛り合わせも追加した。 


「君って見かけの割に結構食べるんだね」

「見かけの割にってどういう事ですか?」

「いやいや、別に悪い意味で言ったわけじゃないよ!あまり食べそうに見えなかったからさ」

「傭兵として働いてた時はもっと食べてましたよ。ヴァイクさんも午後の授業には参加するんですよね?その量で足りてます?」

「僕はこの量でお腹一杯になるから十分なのさ」

「そうですか」


それから二人が食事をしていると、段々と食堂に生徒達が集まってくる。

どうやらララの授業が他より早めに終わったらしく、運が良かったと思う間に食堂は生徒達で溢れかえっていた。


食事中、ヴァイクは度々生徒達や導き手に声を掛けられていた。学園内でのヴァイクの立ち位置を理解すると同時に、多くの生徒が一緒に食事をしているアルナイルに驚いた様子を見せていた。

それについて、アルナイルは何となくだが予想はついていた。少し離れた席に座る女生徒達がチラチラと二人の座る席に視線を向けているのに気付いていたからだ。


「ヴァイクさんは随分と人気者なんですね」

「殆どの生徒より年上だし、先輩として色々と声を掛けて回ってた時期があってね、その賜物かな?」

「確かに学園の生徒って若い人が多いですよね。若い人達に囲まれる経験はありませんでしたので、なんだか新鮮な気持ちですね」

「そうなんだ?っていうか君が僕より年上っていうのが未だに信じられないんだけど!本当に二十二歳?」

「私は気にしませんが、あまり女性に年齢を聞くなと教わりませんでした?まぁいいですけど…嘘偽り無く二十二歳です」

「まぁまぁ、いいじゃないか。てっきり同い年か少し下だと思ったから、最初に気を使って声を掛けたんだけどお節介だったかな?」

「いえ、ありがたかったですよ。話す事も嫌いではないので」

「それは良かった!見た目は大人しそうだけど、君ってやっぱり結構話すタイプだよね?」

「無言の気まずさよりも、話して気まずくなる方を選びます」

「同感だね」

「そういえば気になってたんですけど、一回目の休憩の後から授業中に話し掛けなくなりましたが、あれはなんだったんですか?」

「あれは…休憩中に君に色々と質問しただろ?」

「はい」

「君が孤児だった事とか、魔法を学んだ経緯だとか、傭兵稼業をしていた事とかを聞いてね、色々苦労をしてきたんだなぁってさ…今は幸運にもヴェール学園で学ぶ機会を得ている君の邪魔は出来ないなと思ったんだよ」


どうやらヴァイクなりに気を使った行為だったと知り、アルナイルは彼が根っこから良い人なんだろうなと思った。


「なるほど…お気遣いして下さりありがとうございます。ですがあまり気にせず接してくれても大丈夫ですよ?過去あってこそ今の私だと思っているので、昔の事はあまり気にしてもしょうがないですからね」

「君は強いね…それなら気にせず話し掛ける事にするよ!」

「やっぱり授業中は控えて下さい、あまり導き手に注意されたくないので」

「それはそうだ、ララは特に怖いからね!午後の授業はきっと魔法が飛んでくるかもしれないよ?」

「その時は打ち返してやりますよ」

「あはははっ、それ見てみたいかも!」


そんなやり取りをしてる最中にも、アルナイルは女生徒達の視線をチクチクと背中に感じており、どうしても気になりヴァイクに聞いてみる事にした。


「ヴァイクさんは学園生活が長いと言ってましたけど、女性関係とかはどうなんですか?」

「ヴァイクでいいよ、僕の方が年下だし。それに関しては特に関係を持った女性はいないね」

「男性もですか?」

「ないね」

「食堂内の女生徒から注がれる視線の理由を確信しました」

「僕が女性と食事をしている光景なんて、皆初めて見るんじゃないかな?」

「どうして私を食事に誘ったんですか?」

「それ聞いちゃう?別に隠す事も無いからいいけどさ!」


周りの生徒が聞き耳を立てている気配を感じながら、ヴァイクは特段気にする素振りを見せる様子はない。


「君を食事に誘った理由はねぇ…」


ヴァイクの言葉をアルナイルのみならず、周りの生徒達も聞き逃さない様に思わず食事の手を止め興味津々に聞き耳を立てる。

不思議な静けさが一瞬食堂を包んだが、そんな沈黙を破る言葉はヴァイクの口から発せられてモノでは無かった。


「お待ちくださいお兄様!私は認めません!!」

「…え、誰?」

「…ごめん、これ僕の妹」


急な展開に頭の整理が追い付かず、一先ず冷め切る前食べ切ろうと、皿に残っているシチューを口に運ぶ事にしたアルナイルであった。



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