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星が照らす行先は  作者: 健健
三章 ヴェール学園
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「やっと見つけた…」


予定表で場所を確認したとはいえ、初見の建物内で目的の教室を見つけるのは中々に一苦労だった。

教室の扉は閉ざされており室内の様子を確認する事は出来ないが、扉越しに微かに漏れる話し声が聞こえてくる。


「失礼します」


声が途切れたタイミングを見計らい、アルナイルは教室の扉を開いた。

教室内にいた数十名の生徒の視線が、教壇に立っている女性の導き手からアルナイルに一斉に注がれる。

少しばかり気恥ずかしさを感じてしまうが、意を決してアルナイルは口を開いた。


「授業を中断してしまい申し訳ありません。途中参加も出来ると聞いて来たのですが…よろしいでしょうか?」

「授業は始めたばかりだ、問題ない。だが…」


アルナイルの腰に差さっている剣をチラリと確認し、導き手は言葉を続けた。


「私は魔法関連を専門に授業を行っている、教室を間違えてはいないか?」

「いえ、魔法の授業である事は承知しておりますので問題はありません」

「…そうか、では後ろの席が空いているから座りたまえ」

「ありがとうございます」


導き手に促され、アルナイルは一番後ろの席に座る。すると横の席に座っていた男が少し抑え気味の声量で声を掛けて来た。


「初めまして、僕の名前はヴァイク。突然だけど君ってこの授業に参加するのは初めてでしょ?学園にも来たばっかりって予想してるけど当たってる?」

「初めまして、アルナイルといいます。当たってますよ、良く分かりましたね」


ヴァイクと名乗った男の顔を見て、随分と整った顔立ちをしているなとアルナイル素直に思った。年齢は恐らく同い年くらいだろうと予想した。


「僕は去年からララさんの授業には一通り参加しているからね」

「ララさん?」

「この授業の導き手の名前だよ」

「随分と可愛らしいお名前なんですね」

「性格は堅苦しいけどね」

「ふふっ、そうなんですか」

「それに魔法の授業を受けるっていうのに、腰に剣を差してるだろ?だから学園に来たばかりなのかな?って思ってさ」

「確かにそうですね」


挨拶程度に会話を交わした後、二人は大人しく授業に集中する為に前を向いた。

生徒達の視線が集中する中、導き手のララが生徒に向けて授業を開始する。


「本日の授業は午前に魔力の練度上昇訓練、午後は訓練場にて放出魔法の訓練を行う、といった内容だ。ではさっそく始めるぞ、念の為隣同士少し距離を取れ。座ったままでもいいぞ」


ララの言葉に教室中にガタガタと椅子を移動する音が響き渡る。

皆が距離をとった事を確認し、ララは再び指示を出す。


「まずは目を閉じて集中しろ、魔力は自身の内にある魔力を認識し意識するんだ」


生徒達はいわれるがまま目を閉じ、アルナイルも同様に目を瞑り集中していた。

ベナトから教わった魔力の鍛錬方法と似ており、普段の鍛錬通りに魔力を練り上げる。

アルナイル自身は慣れた行為なのだが、他の生徒が気になりうっすら目を開いて周りを確認してみる。

殆どの生徒達は上手く魔力を練れずに苦戦している様子だ。


ヴァイクはどうなのかと思い顔だけ横に向いて確認してみると、自身と同様かそれ以上に綺麗に練り上げられた魔力をヴァイクの両の掌から感じ取った。


「すごい綺麗に練り上げられてますね」

「そういう君も十分凄いよ、学園にくる前から訓練してたの?」


思わず称賛を口に出してしまったアルナイルに、ヴァイクも同様に返事をし質問する。


「学園に来る前は、母親代わりの人に魔法を師事していました。その外にも複数の魔法の師がいましたね」

「随分と恵まれた環境に居たんだね?君の出身って何処なんだい?」


出身を聞かれたアルナイルは一瞬迷ったが、ヴィレット帝国に向かう前にヒンギルから、出身を聞かれても変に誤魔化さずに正直に答えても良い、と言われていたの

思い出し素直に答える事にした。


「出身はアル・スハイル王国です」

「スハイル王国って…確か優秀な魔法使いの人材が豊富な国だったよね?いいな~いつか僕も行ってみたいよ」

「でもスハイル王国に魔法を学べる学園はありませんよ?」

「え?じゃあ君は誰に魔法を教えて貰ったんだい?」

「先程も言いましたが、母親代わりの方に教わりました」

「じゃあその人は誰に教えて貰ったんだい?」

「それは聞いた事がないので分かりません」

「そっか。じゃあ君は更に学びを得る為にこの学園に入学したって事かな?」

「大体そんな感じですね」


ヴァイクの質問は、現在のアルナイルにとって当たらずとも遠からずであった。

諜報活動しに来ました、とは流石に言える訳がなかったが、ヒンギルからの忠告もあり、魔法が好きなアルナイルはヴェール学園の生活を単純に楽しむ事に決めていた為である。


「後ろの二人!他の生徒が集中出来ないだろうが、静かにしろ」

「はーい」

「すみませんでした!」


ララに怒られてしまった二人は周りの迷惑にならない様に、再び目を閉じて魔力の練り上げに集中する事にした。


それから十数分後、ララは生徒達の手を止める様に指示した。


「魔力の練度に関しては皆、大なり小なり上達しているな。まだ上手く魔力を練れない者もまだ焦る必要はない、魔力の練度に関しては地道に積み上げていくモノであり、急激に上達するモノではないのでな」


生徒達を褒めつつ努力を促すララを見て、彼女は名前通り優しく良い教育者だとアルナイルは思う。


「そうだな…ヴァイク、アルナイル!」


急にララに名指しされた二人は、何事かと思いながら返事をする。


「お前達二人は教室内の生徒達より年上かつ、現状魔力の練度が高い。そこで幾つか質問がある」

「はーい」

「なんでしょうか?」


質問とは何だろうかと不思議に思いながら、アルナイルはララの質問に答える事にした。


「現在の二人の年齢は幾つだ?ヴァイクから答えろ」

「二十歳」

「二十二歳です」

「魔力の鍛錬を始めて何年経つ?」

「十年」

「五年です」

「…ん?」

「はい?」

「え?何ですか?」


ララとヴァイクの二人だけでなく、他の生徒も驚きの表情を見せる。


「魔力の鍛錬を始めた時期は何時頃だ?」

「十歳の時」

「十七歳です」

「…現在の魔力の練度に到達するのに掛かった時間は?」

「八年」

「一年です」

「…何だと?」

「マジで…?」

「………」


質問に答える度に教室内の空気が悪い方向に変わっていく気配を感じ、アルナイルは何も言えなくなってしまう。

ベントやヒンギル、他の魔法の師からも優秀だと言われていたアルナイルだったが、まさかここまで驚かれると反応に困ると生まれて初めて知った。


(なんだかムズムズする…気恥ずかしさというか何というか…)


「…ヴァイクを例に、何年も鍛錬を重ねる事で魔力の練度は上がっていくんだ。お前達は十代半ばでまだ若い、焦らずじっくり鍛錬を重ねる様に。では一旦休憩時間を取る、十五分後に再開するので送れるなよ。以上」

「ねぇ、さっきの話って本当なの?」

「……」


ララには質問を無かった事にされるわ、ヴァイクには疑われるわ散々でもって、アルナイルの学園の授業は幕を挙げたのであった。


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