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星が照らす行先は  作者: 健健
三章 ヴェール学園
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 通行証の発行手続きも滞りなく進み、二人はようやく首都ハイドに足を踏み入れた。

長旅の末ようやく到着した帝国の首都の街並みを目にしたアルナイルは思わず足を止め目を奪われた。


ヴィレット帝国の首都なだけあり、地面は綺麗に舗装され街灯が立ち並んでいる。

大理石ともまた違う白磁の様な透明感のある石材が、多くの舗装材や建物に使用され街並みの美しさを形作っている。

更には百年前から降っている言われている白い花びらの様な欠片が、光を乱反射し華麗に宙を舞う。


全てが互いを際立たせ、もはや一つの芸術作品の様な光景にアルナイルだけでなく

ヒンギルまでもが感嘆の声を上げた。


「綺麗な街並みですね」

「この光景は一度見たらそうそう忘れんだろうな!」


それから二人は軽く昼食を済ませた後、ヒンギルの〈印〉を付ける為の空き家を探す事にした。

その手の店に相談してみると、幸いな事に候補がいくつか見つかった。

ヒンギルはその中でもヴェール学園に一番近い空き家を選び、店の人と一緒に下見に行き問題が無い事を確認し一括で支払い家を購入した。

外観は多少の趣を感じられるが内装はそこまで悪くなく、一人で暮らすには少し広めの家だ。


「嬢ちゃん、この家は好きに使って構わないぜ!」

「え?いいんですか?」


〈印〉を付けるだけで使わないのは勿体無いという事で、ヒンギルは買った家を自由に使用してもいいとアルナイルに言った。その為に学園から近い場所の家を買ったとも。


「丁度部屋が二つあるから片方の部屋に〈印〉を付ける。今日から数えて十日置きに此処に戻る。情報を掴んだり何か緊急事態があれば手紙なり直接なり報告してくれ!いいな?」

「はい、何時頃にこの部屋に来ますか?」

「午前と午後それぞれ十二時の二回だ」

「分かりました」

「よし!改めて確認するぞ?今回スハイル王国の地下遺跡に突然現れた〈貪欲者〉による襲撃、及び四人の騎士の殺人、これらが帝国が関与しているかどうか。これらの調査の為に嬢ちゃんはこれからヴェール学園に入学し、一年以内に帝国に優秀な魔法使いとして認められなきゃならん」

「はい」

「近年帝国は優秀者な魔法使いの確保に力を入れているらしい。理由はまだ不明だがこの機会を利用しない手はない」

「はい、最善を尽くします」


覚悟を決めた顔を見て、ヒンギルが満足そうに頷く。


「よし!それから…嬢ちゃんには言っておきたい事がある」

「なんでしょうか?」

「個人的な意見なんだがな…今回の潜入調査は何か裏がある」

「え?」


突然のヒンギルの発言にアルナイルは驚いた。


「身の危険を感じたら迷わず俺がやったネックレスを使って帰国しろ。心配はいらん、諜報員は嬢ちゃん以外にも数人、数年前から潜入している奴らが居る。問題は無いだろ」

「急に重大な事を言われましても…」

「ま、要はアレだ!調査の事は無視して思う存分学園生活を楽しんでも、俺は気にしないって事だ!」

「そんなんでいいんですかね?…あと痛いです」


そんな事を言いながらアルナイルの背中をバシッバシッっと笑いながら叩くヒンギルに、アルナイルは文句を言いつつも、随分と気持ちが軽くなったのを感じていた。

諜報活動という慣れない活動とその責任が肩どころか膝にまで圧し掛かり、このまま歩けなくなるのでは?と内心思っていたアルナイルにとって、まさに救いの言葉であったのだ。


「そんなんでいいんだよ!じゃ、俺はそろそろスハイル王国に戻るが後は嬢ちゃん一人で問題はないんだよな?」

「はい、大丈夫です。ここまでありがとうございました」

「うむ!健闘を祈ってるぜ!じゃあな、嬢ちゃん!」

「はい!」


別れの挨拶をした後、ヒンギルが自身の光魔法・〈光への帰路〉を発動した。

一瞬光に包まれたかと思えば、瞬間には既にヒンギルの姿は消えていた。

これからの帝国での生活に期待と若干の不安を膨らませながら、ヒンギルの言葉により軽くなった足取りでアルナイルはヴェール学園へと向かうのであった。



_____________________________________


ヒンギルが購入した家から十分程歩くと、アルナイルはヴェール学園に到着した。

家を出た時から視界に移っていたほど壮大で美麗な見た目をしており、学園というよりもはや城と言ったても差し支えない立派な建築物であった。


(流石はヴィレット帝国直営の学園だなぁ…)


そんな月並みな感想を抱きつつ、アルナイルは閉ざされた巨大な門の前に立つ。

門番が二人立っておりその内の一人に声を掛けた。


「すみません、ヴェール学園に入学する為に来ました。」

「…何か証明出来る物は所持しておりますか?」

「私の師が学園長宛に書いてくれた紹介状があります。こちらです」


訝しんでいる様子の門番に、アルナイルは紹介状を手渡す。


「ふむ…確認しますので少々お待ちください」

そういって門番は門を開け学園の中に入り、入れ替わりに中から別の門番の人が出てきた。


大人しく待つこと早数分、再び門が開くと先程中に入っていった門番が出て来た。


「確認が取れました。学園長が実際に合いたいと仰っておりますのでご案内致します」

「分かりました」


紹介状に不備はなかったらしくホッとしたアルナイルだったが、別の不安が生まれた。


(学園長が合って確認したい事ってなんだろう?)


学園長はベナトばあちゃんと知り合いだと聞いていたが、それが理由なのだろうかと色々と考えを巡らせていると何時の間にか目的地に到着したらしく、門番が豪華な扉の前で立ち止まった。


「学園長、お呼び致しました」

「ご苦労様です。お入りなさい」

「失礼します」


門番が扉を開き入室するよう促され、アルナイルは第一印象は大事だと思い学園長に丁寧に挨拶をする。


「お初にお目にかかります。紹介状に記載されております、ベナトばあちゃんよりヴェール学園への入学を推薦されました、アルナイルと申します」

「今ベナトの事をばあちゃんって呼びましたか?」

「…あっ!」


盛大にやらかしたと思い、弁明しようとアルナイルが口を開こうとした次の瞬間…


「…あっははははは!」


盛大に笑う学園長の姿を目にし困惑するアルナイルに構わず、笑い続ける学園長。


「散々私をババァと呼んでたベナトも、ばあちゃんと呼ばれる日が来たのね!あっはっは!」


(…この人はなんだか好きになれそうな気がするなぁ)


学園長の一面を見てそんな事を思うアルナイルであった。

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