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星が照らす行先は  作者: 健健
三章 ヴェール学園
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帝国から他国への輸出する為の商品を運ぶ仕事をしているとある行商人は、

何時もの様に馬車に乗り、港へ続く道程を進んでいた。

大量の荷物を積んでいる馬車の周りには数人の護衛が付いており、周囲を木々に囲まれた林道である為、〈生命感知〉を使用出来る者が定期的に周囲を感知をしながら警戒して移動している。


暫く進んでいると、前方を警戒していた護衛の一人がリーダーに声を掛けた。


「前方から此方に近づいて来る者達の反応があります」

「数はどれくらだ?」


リーダーは仲間の報告を聞き、向かってきている者達の人数を聞いた。


「〈生命感知〉による反応は二名です。その他には特に反応はありません」

「馬に乗っていないのか?盗賊の類ではななそうだが…念の為警戒はしておこう。距離はどれくらいだ?」

「〈生命感知〉に反応した時点では、凡そ二百メートル先でしたが今は・・・もう間もなく我々と合流する距離です」


その報告を聞いたリーダーは疑問に思った。

最初に仲間が反応を報告してから、十秒程しか経っていない筈だ。

だというのに既に我々と合流する距離にいるという。


(馬には乗っていないらしいが…どういう事だ?)


「見えてきました!」

「…!? 前方敵影、注意せよ! 」


護衛達の視点の先に映ったのは、二人の人物が此方に向かって勢いよく走ってくる光景だった。


護衛達が武器を手に取り、前方から迫ってくる怪しい二人を警戒する。

リーダーもすぐさま剣を抜きながら怪しい二人組を観察する。


(白髪のじいさんと同じく白髪の若い女、妙な組み合わせだな…女の方は腰に剣をぶら下げてはいるが二人とも武器を手にしてる様子はない…)


リーダーが警戒していると、二十メートル程前方で急に二人が立ち止まった。


(…なんだ?何やら話し合っているみたいだが…)


暫く二人の話し合いを観察していると、此方に向かって今度は先程の様に走らずに

歩いて近づいてて来た。


「すみませーん!盗賊とかではありませんからー!」


女の方が手を振りながら、少し大きめの声で申し訳なさそうに此方に声を掛けてくる。多少警戒は緩めつつ、以前注意を払ったままリーダーは返事を返す。


「我々は港へ向かう途中の商人とその護衛だ。すまないがお二人の素性をお聞きしてもよろしいか?」


リーダーの質問に男の方が答える。


「警戒させてすまねぇな!俺達は帝国の首都ハイドにあるヴェール学園に向かっている最中なんだ」

「ヴェール学園…親子でヴェール学園にって事は娘さん、学園への入学を許可されたのか?めでたい事だ」


厳つい壮年の男と、綺麗で美しい見た目の女。どちらも白髪であり男女の雰囲気も感じられず、目的地がヴェール学園な事からリーダーは二人の事を親子だと認識した。


「ん?」

「え?」


だが二人の反応を見るに、どうやら違ったらしい。


_____________________________________



「ヒンギルさん、私達って親子に見えるんですかね?」

「年齢的にはそう見えるんじゃないか?俺も嬢ちゃんも白髪だし、初見じゃ勘違いしてしまうのも理解出来るだろ?」

「どうでしょうかね?」


アルナイルとヒンギルの二人は帝国の首都ハイドに向けて再び走りながら、先程遭遇した護衛の人に言われた事について振り返っていた。


「昨日港に着いたばかりで、今日は朝から走って来たと言った時は物凄く驚いていましたね」

「もうすぐ首都ハイドに一番近い宿屋に到着するってのに、その移動手段が馬じゃなくて自分で走るだからな!そりゃ驚くだろ!」

「そうなんですか?」

「嬢ちゃん、港から首都ハイド迄どれくらいの距離があるか知ってるか?」

「さぁ…大体二百キロとかですか?」

「その通り!その距離を馬を使わずに移動するとなると、大体五日~六日程掛かるもんなんだぜ?」

「走れば良くないですか?」

「俺等は走れるが普通は走れんぞ?」

「そうなんですか?」

「訓練で剣を振れば剣を振る体力が着く、走る事も一緒だ!嬢ちゃんは昔から習慣的に走ってるだろ?」

「ほぼ毎日朝は走っていますね」

「俺も時間が取れる日は走ってる!要するに俺達は体力馬鹿って事だ!」

「褒め言葉にしてはあまり素直に受け取れないですね…」

「体力は無いより合った方が良いだろ!」


そんな会話をしながらも息切れ一つなく数時間走り続け、日が落ちる前に目的の宿屋に到着した二人は夕食後、明日の予定を立てる為の打ち合わせをする事にした。


「このまま順調に行けば、明日のお昼頃には首都ハイドに到着する予定だ」

「到着した後はすぐにヴェール学園に向かいますか?」

「空き家を探さなきゃいけないからその後だな」

「空き家ですか?」

「ああ、最悪は空き宿でもいいがな。俺の光魔法の〈印〉を付ける場所を確保しなくちゃならんからな」

「なるほど」

「嬢ちゃんは長くても一年間は帝国にいる予定だからな、空き家を買って〈印〉を付けた方が手っ取り早い」

「分かりました。その後にヴェール学園に向かいますか?」

「そうなるな。だが当初の予定通り、俺が嬢ちゃんと一緒に帝国に来たのは〈印〉を付ける為だ。それが終わったら直ぐにでも王国に帰るからな、ヴェール学園には嬢ちゃん一人で行く事になるが問題はないか?」

「元々一人で来る予定でしたから問題ないです。ここ迄一緒に来て下さっただけでも有難いです」

「良いって事よ!あとは先にコレを渡しておく、ベナトがヴェール学園の学園長宛に書いた

嬢ちゃんの推薦状だ。学園には既にベナトから話を通している筈だから、コレを持ってヴェール学園に行けば問題ないだろう」

「分かりました」

「よし!明日は嬢ちゃんの人生の節目になるかも知れないからな、今日はもう休んで英気を養っておくんだな!」

「何度目の節目か分かりませんが、私なりに頑張ります」

「木材と一緒で節だらけの方が人として深みが増すものだぜ?嬢ちゃん」

「ヒンギルさんが言うと説得力がありますね。顔から深みが滲み出てますもん」

「嬢ちゃんも後二十年もすればこうなるぞ!」

「ベナトばあちゃんみたいに、顔には出ない深みが欲しいです」

 

それから二人は各々の部屋に戻り、明日も朝早くから出発する予定なのですぐに眠りに着いた。     


翌日の朝


約五十キロの道のりを二人は休むことなく走り続け、お昼頃には帝国の首都ハイドに到着したのであった。


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