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星が照らす行先は  作者: 健健
三章 ヴェール学園
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世界最大の大陸国、ヴィレット帝国

何世紀にも渡って繁栄し続けているその歴史を辿れば、必ずと言っていいほど現れる単語が存在する。


それが帝国直営の学園、「ヴェール学園」である。


その歴史は帝国と共にあり、多くの者が口を揃えてこう言った。

ヴェール学園なくしてヴィレット帝国の繁栄はあり得なかったと。


実際に、歴史上で偉人や英雄と語られる者の多くはヴェール学園を出自であり、また、帝国での技術の発展や開発、発明等もヴェール学園から生まれたモノが殆どである。


現在もそれは変わらず、多数の優秀な人材を育成しているヴェール学園は、帝国の広大な土地を最大限に生かし、生徒が生活する為の施設を整え多くの優秀な者達を抱えている。

大人の腰ほどの子供から、白髪の目立つ者まで、年齢や性別を問わず才有る者をヴェール学園は悉く受け入れる。



現在時刻は午後五時。

多くの生徒は授業を終え、一日の残りの時間を自由に使っている。

寮に帰る者、学園内の施設を利用する者、己の自己研鑽や開発に勤しむ者。

中には実家に帰宅する者も少数いるが、殆どの生徒は学園内で生活している為、学園内は消灯時刻になるまで多くの生徒たちが活動しており賑わっている。


訓練場もその例に漏れず、授業でも使用するが日々の鍛錬として、自由時間に利用する者達が多い。


だが、今日は何時もより多くの生徒で溢れていた。

訓練場の中心には二人の女生徒が向かい合っており、その手には剣が握られている。どうやら二人の試合の観戦を目的に、生徒達が集まっている様子である。


人だかりの中心人物である二人の女生徒の内、一人はここ最近学園に入学した生徒であり、名をアルナイルという。


(どうしてこうなっちゃったんだっけ・・・?)


人だかりの原因であるだろう当の本人は、内心ではこの状況に困惑していた。


「アルナイル、先程も言ったが私は君のあの発言を許す訳にはいかない。私が勝ったら、発言を取り消し謝罪して欲しい。いいかな?」


そう言い放ち、剣を構えた女生徒はアルナイルとは対照的に昂っている様子だ。

いつの間にか導き手の一人が審判として二人の試合を見届けており、アルナイルも引くに引けなく剣を構える。


(どこで何を間違ったんだろう・・・)


審判による合図が訓練場に響き渡ったそのとき迄、アルナイルの頭の中はその事ばかりが駆け巡っているのであった。


____________________________________


 波の揺れを感じながら真上から照らす眩しい日差しに手をかざし、アルナイルはそれに思わず苛立ちを覚えずにはいられなかった。


自国を出発して早数日、海も空も荒れる事無く船旅は順調に進んでいるのだが、連日照らし続ける日差しを睨みつつ天気が良すぎるのも考え物だとアルナイルは感じていた。


しかしながら、目的地であるヴィレット帝国までの船旅を考えるのであれば文句も言えず、そも誰かに言った所で天気を変えれる筈も無く。


船旅が始まってから見飽きた地平線を横目に、船に乗ってからも欠かさず続けている魔力の鍛錬の為、目を閉じて集中するのであった。


その日の夕方、あてがわれた部屋で休憩がてら仮眠を取っていたアルナイルは、部屋のドアを叩くとともに聞こえてくる呼び声で目を覚ました。


「嬢ちゃん、今大丈夫か?少し遅くなったが夕食の準備が出来たぞ」

「分かりました、すぐ行きます」


まだ重たい瞼を擦りながらアルナイルがドアを開けると、声の主であるヒンギルが待っていた。


「なんだ嬢ちゃん、寝てたのか?」

「はい、少し仮眠を取ってました。思ったより疲れが溜まってたみたいで」

「慣れない船旅の上に最近暑くなってきたからな。バテて食欲が無くなっちまわない様に気を付けろよ?」

「分かりました」


会話をしながら移動し二人は目的の部屋に到着した。

他より少し豪華なドアを備えたその部屋は、この船の船長室だ。

ダン星騎士の顔見知りであり、ヒンギルとアルナイルの二人がヴィレット帝国へ赴く理由を知らされている数少ない信頼の置ける人物である。

船にはアルナイル達以外にも多くの人が乗船している為、話し合いや食事時等はなるべく船長室で行う様にしているのだ。


「船長、ヒンギルだ。嬢ちゃんも一緒だ」

「お待たせしました、船長さん」


ヒンギルが声を掛けながら部屋に入り、それに続いてアルナイルも部屋に入る。

部屋の中心に置かれたテーブルの上には三人分の食事が用意されており、一番奥の椅子には船長と呼ばれた筋肉隆々でスキンヘッドの男が座っていた。


「うむ、では冷めない内に頂くとしよう」

「はい」


船長の左右の椅子に二人が座り、三人は食事を始めた。

ある程度食べ終えた頃合いを見計らい、船長がアルナイルに声を掛けた。


「アルナイル、船での生活はもう慣れたかね?」

「はい、初日は大分堪えましたけど・・・もう大分慣れてきましたね」

「初日の嬢ちゃんは丸一日動けなかったからな」

「お前さんだって初めて船に乗った時、甲板から身を乗り出して海に向かって餌を撒いていたがの?」

「餌ですか?」

「やめろよ、食事中にする話じゃないだろうが」

「・・・?あっ、そういう事ですか。ヒンギルさんでも船酔いには勝てなかったんですね」

「鍛えようがないからしょうがないだろ?今はもう慣れたがな」

「三十年船に乗っても慣れない者もいる、良い事だ。ところでアルナイル、私が用意した部屋に不便していなかね?何か必要な物があれば遠慮なく言ってくれて構わん」

「今の所は問題ないです。むしろ他の人達は相部屋なのに一人部屋を用意して頂き感謝しています」

「男だらけの船なのでな、船長としての仕事を怠るつもりは無い。もし言いにくいようであれば、厨房で働いている奴に言え。君と同じ女性だ、遠慮はいらん」

「ありがとうございます」


いつの間にかお皿も空になり、船長は先がラッパ状になった天井まで続くパイプ管に向かいお皿を片付ける様指示を出す。

待っている間、ヒンギルが船長に問いかけた。


「そういえば船長、予定では後四日で帝国に到着する筈だが順調なのか?」

「うむ、ここ最近の天気も味方してな。予定では一週間だったがこのままいけばもう三日で到着するだろう」

「意外と早いんですね、もう少しかかると思っていました」


三日後にヴィレット帝国に到着したら、そこから一人で動く事になる事実に、アルナイルは少しだけ不安を覚えた。

そんな心の内を読み立ったのか、ヒンギルがアルナイルに向かって声を掛けた。


「心配すんなよ、嬢ちゃん。俺は光魔法の印を付けたらスハイル王国に帰るっが、ヴェール学園迄はちゃんとついて行ってやるからよ」

「ありがとうございます、ヒンギルさん」


ヒンギルの気遣いに感謝しつつ、三日後の為に気を引き締めよう心に決めたアルナイルを見て、ヒンギルは笑顔で頷く。暫く会話を続けているとドアがノックされた。

ヒンギルがドアを開くと先程船長が呼んだ者だったのでそのタイミングでヒンギルとアルナイルは船長室から去る事にし、アルナイルはそのまま部屋に戻りすぐに眠りに就いた。


それから三日後のお昼頃

船旅は順調に進み、甲板に出ていたアルナイルは前方の水平線に目を凝らしていた。

暫くすると水平線を遮るように広大な大地が現れた。

水面の反射なのか微かに白く見えるその光景にアルナイルは目が釘付けになった。


だんだんと距離が近づくにつれ、それが光の反射等ではない事に気が付いた。

脱色され色褪せた、されど白磁の陶器の様な透明さを見せるその光景にアルナイルは目を奪われた。


アル・スハイル王国から船で移動する事、約六日

長い船旅の末、アルナイルは世界最大の大陸国、ヴィレット帝国に到着したのだった。


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