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ダンから告げられた言葉を頭で上手く処理できず、アルナイルは暫くの間押し黙り考え込んだ。
それを見かねたファンが、ダンに対して抗議の意を示した。
「やっぱり僕は反対だね。危険な可能性のある帝国に、わざわざアルナイル君を行かせる意味が分からないよ」
自分が帝国に行く事に反対しているファンに、アルナイルは少しばかり以外だなと失礼ながら思ってしまった。
ファンの言葉を聞いたダンは、アルナイルに向かって再度聞いた。
「ファンはこう言っているがアルナイル、君自身の意見はどうだね?」
「え?あ、そうですね・・・どうして私なのかが気になります。私以外にも適当な人が居ると思うんです」
「ふむ、確かに君やファンがそう思うのも当然だろう。それについて、今から詳しく説明する」
ダンは三人をソファーに座らせ、自身もテーブル越しの向かいのソファーに座り話を始めた。
「まず今回の地下遺跡で起こった件についてだ。帝国が関係していると見てまず間違いない、しかしながら帝国側の意図したモノだと断定するのは尚早だ」
「どういう事ですか?」
「帝国の意志の元なのか、はたまた一部の人間の起こした事なのかで我が国の、帝国に対する扱いが変わってくるからだ。」
「なる程」
「後者の場合ならばそう難しい事ではない、帝国側に今回の件を報告して被った被害の請求なんなりをするだけだ。だが前者の場合だと話は違ってくる」
「貪欲獣を使ってるんだ。帝国側の意志なんだとしたら本気で国に攻撃したって事になるからね」
「その場合、我が国は帝国に対し警戒態勢を取る必要がある。最悪の場合、百年前の様に帝国と戦争状態になる可能性がある」
「確か百年前の戦争も帝国側から仕掛けられたんだったな。帝国は過去の歴史を学んでないのか?」
「あくまで可能性の話だ」
「他にも理由はあるんですか?」
「勿論ある。前々から帝国での諜報活動を行っている我が国の一人が、近年帝国が優秀な魔法使いの確保に力を注いでいるという情報を得た」
「魔法使いですか?」
「そこで私は君に目を付けた」
ダンは一息ついた後、アルナイルに顔を向けた。
「理解してもらたかね?」
「私じゃないといけないんですか?」
「詳しい事情を知っており、実力もある。我々との信頼関係もあり裏切る可能性も低い。うってつけの人材だと君を評価しての事だ」
「何があるのか分かんないんだよ?それにアルナイル君は諜報活動の素人だ、意味あるの?」
「帝国は完全な実力主義だ。アルナイルならば自然と情報が集まると、私はそう思うがな?」
「そんなの保証のない事にアルナイル君の命を掛けるって事かい?」
二人の会話に割り込んだファンは、やはり今回の件に反対の意を示した。
「アルナイルは傭兵だ、それなりの覚悟は持ち合わせている筈だ」
「傭兵の依頼と諜報活動を比べないでよ。傭兵は魔物を、兵士は人を相手にする決まりだろ?今回は明らかに兵士の役目だろ?」
「相手が人間だけならばそうだろう。しかし今回は、貪欲獣という魔物を相手を想定し行動しなければならず、必然的に傭兵ギルドにも協力して貰う事になるだろう。アルナイルがその最初の一人になるだけだ」
ファンとダンが互いの意見を言い合っている中、その原因であるアルナイルの心中は二人を他所に落ち着いていた。
「二人に意見を言い合う前に、まずは嬢ちゃんがどう思ってんのか聞くのが先じゃないのか?」
アルナイルの様子を見て、ヒンギルが二人の会話に割って入り言った。
ヒンギルの言葉に二人は会話を中断し、アルナイルの方に顔を向け言葉を待つ。。
三人の視線を感じながらも、アルナイルは自身の意見を言った。
「分かりました。ダンさんの言う通り、私は帝国へ行きます」
ダンから話を聞かされた時は多少混乱してしまったが、二人の会話を聞いている内に落ち着きを取り戻したアルナイルは、帝国に行く事を決めていた。
「アルナイル君、本当にいいのかい?」
それを聞いたファンがアルナイルに問い掛ける。
「はい、大丈夫ですよ」
「断ってもいいんだよ?」
「私としては断る理由も特にありません」
「ベナトとも暫く暮らせなくなるよ?もしかしたら二度と会えなくなるかもしれないよ?」
「ファンさんは私を何歳だと思ってるんですか?それに私は傭兵でベナトばあちゃんも元傭兵です。多少の寂しさはありますけど、それ以上の覚悟を持って私は傭兵として暮らしています。ベナトばあちゃんにもそう教わりました」
ファンは他にも一瞬何か言いたそうな表情をしたが、言わずにソレを飲み込んだ。
「嬢ちゃん、本当にいいんだな?」
「はい」
ヒンギルからも念を押されるが、ルナイルの返事は変わらない。
アルナイルの返事に頷き、ヒンギルはダンに後を託した。
「では具体的にどのようにアルナイル君を帝国に潜入させるか、説明してもよろしいかね?」
「はい」
話し合いは昼を過ぎても終わる事無く続いていった。




