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星が照らす行先は  作者: 健健
二章 地下遺跡
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 ヒンギルから発動条件を教わり、アルナイルが初めて光魔法を発動出来たのが二年前。光魔法を発動する事が出来たアルナイルはヒンギルから、もう教える事は無いと言われた。

困惑したアルナイルだったがヒンギル曰く、光魔法を発動させる為の手助けは出来るが、その後は本人次第と言われた。

光魔法は使い手の心を映す鏡の様なモノであり、故に他人の口出しで揺らぐ様な心の持ち主が光魔法を発動させるのは不可能。逆を言えば、光魔法を発動させる事が出来る者は、確固としたモノを心の芯に持つ者という事になる。


ヒンギルからそう聞かされたアルナイルはふと思う。

(ヒンギルさんの願いは家に帰る事・・・)


強い願いや想いを込める事が光魔法の発動条件であるとアルナイルに教えた際、ヒンギルは自身が込めた願いを例に挙げ、自身の光魔法が〈瞬間移動〉(テレポート)で家に帰れるという事も伝えていた。

その時は〈瞬間移動〉(テレポート)に驚きつつも、家に帰るという想いにアルナイルは少しだけ可笑しさを感じていた。

だがそれが、揺らがない心からのモノだと知った今なら話は変わってくる。ヒンギルがソレを心の芯にした出来事か何かがあったのだろうとアルナイルは一瞬考えたが、余計な詮索だとすぐにやめた。


 それからすぐ傭兵生活が始まったが時間を見つけ、一人で光魔法の訓練に勤しんだ。ヒンギルも、最初は一か所にしか飛べなかったが、訓練していく内に増えていったとアルナイルに助言していた。

傭兵になって最初の一年間は、ヒンギルに訓練の成果を見せたり報告したりしていたが、互いに時間が合わない事が続き、今回の依頼の件で一年振りの再開となった。

勿論、アルナイルは訓練は欠かさなかった。


アルナイルは傭兵なので幾度となく魔物と、時には人との実戦を経験してきたがその際に光魔法を使った事は一度も無かった。

ヒンギルと交わした人前では光魔法を使わないという約束もあったが、危険が迫ればアルナイルは躊躇いなく光魔法を使うつもりだった。

しかしこの二年の間にその様な事態が起きる事はなかった。


アルナイルは内心では実戦で光魔法を使いたくてたまらなかった。

ベナトから話を聞いたり、ヒンギルと約束を交わしたりしなければ、アルナイルは傭兵生活一日目で光魔法を使っていただろう。

アルナイルは光魔法の訓練をする度に、光魔法を使う機会が訪れてほしいと願っていた。


それがたった今訪れた。

アルナイルは走りながら、その先にいる貪欲獣に少なからず感謝した。

騎士を二人も殺し、負傷者を多数出した貪欲獣に対し、感謝するのは間違っていのは分かってはいるが、アルナイルは素直にそう思った。


光の魔力を錬り上げながら一瞬目を瞑って集中し、再び貪欲獣を見据え、アルナイルは魔法を唱える。

「光魔法:〈光の守護者〉(シンシーカー)


アルナイルの全身が淡い光に包まれ、それを後ろから見守っていたファンは、信じられない光景に驚きを抑えきれなかった。

アルナイルが魔法を唱え、身体が光ったかと思った次の瞬間、貪欲獣に立ち向かっていく後ろ姿が、アルナイルの他にもう二つ増えていたのだ。ソレは白い身体をしておりアルナイルと同様、淡い光に包まれているのが分かった。

「あれは・・・虎?それにもう一体は・・・」

「もう一体の方は鷲だ」


困惑している様子のファンに、ヒンギルが答える。

「嬢ちゃんの光魔法:〈光の守護者〉は、自身の魔力に命を与えて実体化させる事が出来るんだ」

「魔力に命を与えるだって!?それじゃあの二体はアルナイル君の魔力から創られたって事かい?」

「そうだ」


貪欲獣は向ってくるアルナイルに向け、再び口を開き魔力を溜めた。その行動を見たアルナイルは、しかし走る速度を緩める事無く、真っ直ぐ貪欲獣に向かっていく。

魔力を溜め終えた貪欲獣が先程と同様、アルナイルに目掛け光線を放った。

「危ない!」


ファンが思わず声を上げるがその心配をよそに、アルナイルは難なく光線を避けた。

貪欲獣は先程もこの攻撃を避けられ学習したのか、今度は光線を放つ続けるのでは連続して光線を放ってきた。だがアルナイルは速度を緩める事無く、左右に居る二体と共に光線の弾幕を搔い潜りながら貪欲獣に接近していく。

貪欲獣との距離が十メートルを切った所でアルナイルは立ち止まり、残りの二体はそのまま移動していく。

〈激炎〉(ブレイズ)!」

アルナイルを正面に残し右に鷲が、左に虎が移動したの確認し、アルナイルが魔法を放つ。アルナイルの掌から放たれる炎を避ける為、貪欲獣は後ろに跳ぼうとした。だがそれは左右の二体から放たれた魔法によって妨害された。


左右からの衝撃により身動きを封じられアルナイルの攻撃を避ける事が出来ず、貪欲獣の身体は炎に包まれ悶える。

「あれは・・・〈暴風〉?あの二体は魔法が使えるのか?」


左右の二体が貪欲獣の動きを封じている方法が、アルナイルもよく使う魔法である〈暴風〉だとファンは気付いた。

〈暴風〉で身体を左右から抑えられれば、流石の貪欲獣も身動きが出来なかった。

その状態の貪欲獣にアルナイルは〈激炎〉を放射し続ける。

いくら貪欲獣の毛皮に魔法耐性があるとはいえ、貪欲獣が生物である以上、このまま〈激炎〉を浴び続ければ〈激炎〉により生じる熱により、貪欲獣を体内から殺すだろう。アルナイルはそう考えた。


貪欲獣の身体を抑え付けている〈暴風〉がアルナイルの〈激炎〉を吹き消す事はなく、貪欲獣の全身は炎に包まれ続ける。どうにか反撃しようと貪欲獣が光線をアルナイルに放つが、それを軽く躱しながらも、アルナイルは〈激炎〉を途切れさせる事なく貪欲獣に放ち続ける。


その隙にヒンギルとファンは無事、負傷した騎士をヒンギルの光魔法で城まで飛ばし、二人はアルナイルの援護に入ろうとしたが、アルナイルから止められた。

魔力はまだまだ余力がありこのまま貪欲獣の動きを封じたまま終わらせる事が出来れば、それが一番安全だと。


二人はアルナイルの言葉に同意し、何かあった時の為、何時でも動ける位置に陣取りアルナイルを見守った。

それから数分後、貪欲獣は地面に倒れ動かなくなった。



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